足利事件
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事件を巡る国会の対応
2011年3月8日の参議院予算委員会にて、当時の内閣総理大臣であった菅直人は民主党の有田芳生の質問に答え「同種事件を防ぐ意味からも、警察などがしっかり対応することが必要」と再捜査の必要性を認識した見解を述べた。「『時効だ』と言い逃れするのでは、住民の不安を解消できない」と主張する有田に対し、菅は「捜査には一般的なルールはあるが、冤罪事件であり、その後も類似事件が続いている」と前置きした上で、捜査側に「必要な対応」を求めた[25]。
真犯人の存在
冤罪の影で警察が発表をしていなかった「初期目撃証言の存在の事実」、「警察が前科前歴から割り出し重要参考人として指定していた数人の男たちの存在の事実」が近年の当事件に関連する報道や取材、調査により掘り起こされ明るみに出ている。中でも日本テレビの清水記者は、真犯人を特定し、捜査機関に情報を提供している事実を明らかにしている[26]。
一方、ルポライターの小林篤が2011年4月15日発行の『g2』に寄せた足利事件関係のルポには、日本テレビの清水記者が『アールテレビ局』の『アル記者』という呼称で登場。アル記者は2007年夏に小林に電話をかけてきて、足利事件に関する小林の著書を読んで冤罪の可能性が高いと思ったことを告げ、「取材協力」や「レポーターとしての参加」を頼んできたという。小林によると、レポーターは辞退したが、取材先などのデータや独自に調査していた容疑者「X」の情報をアル記者に提供。それから2人は共同取材をするようになったが、アル記者が「私は真犯人を知っている」として文藝春秋2010年10月号で真犯人追及報道をした時から袂を分かったという[27]。
監視カメラに映っていた男について、かつて足利事件を捜査していた捜査員は、行動調査していた中でも容疑性の高い『Aランク』と呼ばれていた男数人の中の一人に、犯罪の前科・前歴なども酷似した男がいると語っている[28]。
冤罪事件として
冤罪発覚の経緯としては、証拠不十分で容疑者や被告を真犯人として挙げる事や勾留が困難になったというだけではなく、真犯人の存在が明らかになった事をきっかけに冤罪が判明した。過去には氷見事件のように後に真犯人が逮捕された、あるいは松本サリン事件のように真犯人の存在が明確になった事で冤罪が判明し真犯人も検挙された事件案件があるが、当事件は後者の経緯に近い[29]
事件発生日時に、真犯人の男が目撃されていたことや、その目撃者の存在などの事実が日本テレビの調査報道で明らかにされた。真犯人の存在を示す報道は、菅家利和が求めていた「DNA再鑑定」の実施を後押しし、冤罪判明、無罪確定・釈放を実現させる上で大きな役割を果たした。
菅家利和はテレビ東京が2019年9月27日18時55分から放送した「0.1%の奇跡!逆転無罪ミステリー【実録…やってないのに逮捕】衝撃冤罪4連発」に出演し、17年の獄中生活で8,000万円の刑事補償をされたと言っていた[30]。
- ^ a b 現場検証 平成の事件簿. 株式会社 柏艪舎. (2019年3月8日). p. 18
- ^ a b 下野新聞、清水潔による事件の調査報道・キャンペーン記事等】
- ^ 宇都宮地裁平成5年7月7日判決/刑集54巻6号670頁・判例タイムズ820号177頁
- ^ 2008年1月6日 日本テレビ「ACTION」より
- ^ 「〈足利事件「支える会」代表が語る〉主婦の私がなぜ菅家さんの無実を信じ続けたのか」西巻糸子著(『婦人公論』2009年7月22日号)
- ^ 無罪確定後、テレビ局が取材したが、亀山は菅家に対し謝罪を拒否すると公言している。
- ^ “足利事件、再審決定”. 産経新聞. オリジナルの2009年6月26日時点におけるアーカイブ。 2009年6月23日閲覧。
- ^ “足利事件:再鑑定の結果「DNA不一致」…東京高裁に提出”. 毎日新聞. (2009年5月8日)[リンク切れ]
- ^ 第2章スタート ACTIONコラム(日本テレビ)2009年5月26日。その他、「北関東連続幼女誘拐・殺人事件」など。
- ^ a b “袴田さん再審判断 DNA鑑定の有効性争点”. 中日新聞. (2018年6月7日)
- ^ "足利事件、菅家さんを釈放 17年半ぶり、再審開始決定へ". 共同通信. 2009年6月4日. 2009年6月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月11日閲覧。
- ^ “「警察と検察に謝って欲しい」菅家さん、支援者への手紙で”. 読売新聞. (2009年6月4日). オリジナルの2009年6月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ “【足利事件】「捜査は妥当だった」「思い出したくない」 栃木県警元幹部ら”. 産経新聞. (2009年6月6日). オリジナルの2009年6月6日時点におけるアーカイブ。
- ^ “「足利事件」捜査の元県警幹部ブログが炎上 「謝罪しろ」コメント殺到”. ITmediaニュース. (2009年6月5日)
- ^ “栃木県警、足利事件捜査での表彰を自主返納”. 日テレNEWS24[リンク切れ]
- ^ “菅家さんに『苦痛与えた』と謝罪 検察、足利事件で初”. 中日新聞. (2009年10月5日11時25分)[リンク切れ]
- ^ 検事正が謝罪、足利事件 - YouTube TBSNewsi 2009年10月5日[リンク切れ]
- ^ “足利事件再審:裁判長「菅家さん」 被告扱い封印”. 毎日新聞. オリジナルの2009年10月21日時点におけるアーカイブ。 2009年10月21日閲覧。
- ^ “足利事件:92年1月28日の地検聴取テープ(1)”. 毎日新聞. オリジナルの2010年1月25日時点におけるアーカイブ。 2010年1月22日閲覧。
- ^ “足利再審 元検事語る(1)”. 産経新聞. オリジナルの2010年1月25日時点におけるアーカイブ。 2010年1月23日閲覧。
- ^ “足利事件:検察側が無罪論告 菅家さんに謝罪”. 毎日新聞. (2010年2月12日11時29分(最終更新 2月12日21時33分)). オリジナルの2010年4月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ “無罪でも終わらない 菅家さん故郷で語る”. 中日新聞. (2010年3月25日7時7分). オリジナルの2010年3月27日時点におけるアーカイブ。
- ^ “足利事件再審で菅家さんに無罪判決…宇都宮地裁”. 読売新聞. (2010年3月26日). オリジナルの2010年3月29日時点におけるアーカイブ。
- ^ “足利事件:菅家さん無罪 裁判長が謝罪 宇都宮地裁”. 毎日新聞. (2010年3月26日10時12分(最終更新 3月26日13時52分)). オリジナルの2010年3月28日時点におけるアーカイブ。
- ^ 下野新聞 2011年3月9日
- ^ 清水潔,文藝春秋2010年10月1日号
- ^ 2011年『g2』vol.7(講談社)掲載ルポ「真犯人のDNA」P199ー200
- ^ 参考記事 らせんの真実-冤罪・足利事件- <終章><1>「消息」 捜査中止の参考人複数 酷似する「ビデオの男」下野新聞】(外部リンク参照)
- ^ 清水潔,文藝春秋2011年1月1日号
- ^ テレビ東京・BSテレ東『0.1%の奇跡!逆転無罪ミステリー【実録…やってないのに】衝撃冤罪!4連発(テレビ東京、2019/6/10 19:00 OA)の番組情報ページ | テレビ東京・BSテレ東 7ch(公式)』 。2019年10月17日閲覧。
- ^ a b 文藝春秋2010年12月号 清水潔
- ^ 清水潔(文藝春秋2010年10月1日号
- ^ “<「足利事件」とDNA鑑定>佐藤博史弁護士に聞く”. あらたにす. (2009年5月9日). オリジナルの2009年5月9日時点におけるアーカイブ。全10頁
- ^ 「新・知ってはいけない!?」船瀬駿介 著
- ^ 【らせんの真実-冤罪・足利事件(下野新聞)】より
- ^ 文藝春秋2011年3月号 清水潔
- ^ 足利事件で無期懲役判決を受けた男性が冤罪だと訴えていた支援者らのホームページの「群馬・栃木県境の未解決幼女殺害・失踪事件地図」という項
- ^ 清水潔,2010年11月
- ^ 足利事件 真犯人は ('09.6.7)(youtube)[リンク切れ]
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