西方ギリシア文字 概要

西方ギリシア文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/16 02:50 UTC 版)

概要

ギリシア文字の分類は大きく3種類の類型に区別される。

  • アドルフ・キルヒホフ英語版の著書で大きく3種類の類型に区別し、折り込まれた地図の中で東方ギリシア文字が青、西方ギリシア文字が赤、ほぼ最初期を保った南方(クレタ)ギリシア文字が緑で塗り分けられていたため[3]、この色で呼ぶ習慣がある。

これらの区別は、帯気音 [pʰ kʰ][4] および子音結合 [ps ks] をどのように表すか、および新たな文字 ΦΧΨ の導入の有無などの点で異なる[5]。すなわち、

  • 南方(緑) - これらの帯気音は2文字 ΠH、KH (もしくは一文字 Π、K )で表記する。子音結合も2文字ΠΣ KΣで表記する。
  • 西方(赤) - Φ[pʰ]Ψ[kʰ]を表し、ΠΣで[ps]Χ[ks]を表す。
  • 東方(青) - Φ[pʰ]Χ[kʰ] を表し、


ほかに、s の音を表すのにΣ(シグマ)とϺ(サン)のどちらを使うかについても地域差があった。

消滅

西方ギリシア文字は紀元前4世紀の中頃までに消滅した。これは東方ギリシア文字がギリシア語圏のほぼすべてへ広がり標準の地位を獲得したためである[7]。ただしイタリア半島では西方ギリシア文字を受け継ぎ、その後も用いられた。

東方ギリシア文字

紀元前6世紀に、東方ギリシア文字地域にあたる小アジア(イオニア)のミレトスで、長い ē ō を表す文字 ΗΩ が考案された[8]。また、イオニア方言で使われない文字( w の音を表す文字など)が削除され、24文字からなるアルファベットが成立した。紀元前5世紀になるとこのミレトス・アルファベットがほかの地域でも使われるようになった(アッティカでは紀元前403/402年に採用した)。

一覧

フェニキア文字
南方 (緑) * *
西方 (赤)
東方 (薄い青)
(濃い青)
イオニア
現代の文字 Α Β Γ Δ Ε Ζ Η Θ Ι Κ Λ Μ Ν Ξ Ο Π Ρ Σ Τ Υ Φ Χ Ψ Ω
音価 a b g d e w zd h ē i k l m n ks o p s k r s t u ks ps ō
  • ギリシア文字の Ϝ(子音字:[w])とΥ(母音字:[u])とは区別される文字だが、元来のフェニキア文字は同一文字であり、その異形字(前者はࠅ[9])を採用することでギリシア語の音を区別した[10]

  1. ^ ΑΕΙΟを母音を表す文字とした。
  2. ^ 母音[u]へ転用可能なフェニキア文字は [w] だったが、古くは子音 [w] を表す文字もギリシア語に必要だったので、異体字を採用し区別した(子音 [w] には ࠅ ())の文字で表した。
  3. ^ Kirchhoff, Adolf (1877) [1867]. Studien zur Geschichte des griechischen Alphabets (3rd ed.). Berlin. https://archive.org/stream/studienzurgeschi00kirc#page/n179/mode/2up 
  4. ^ Θ帯気音 [tʰ] を表すことは共通した。
  5. ^ 松本(1981) p.91-93
  6. ^ 松本(1981) p.90
  7. ^ 松本(1981) p.96
  8. ^ Swiggers (1996) p.265
  9. ^ サマリア文字で用いられた。
  10. ^ 松本(1981) p.88


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