肺 無脊椎動物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/07 16:55 UTC 版)

無脊椎動物

脊椎動物以外の動物にも「肺」の名が付く呼吸器はあるが、いずれも上述の肺とは別起源の器官である。

節足動物クモガタ類の場合
蛛肺類に分類されるクモガタ類は、書肺(しょはい)という対になる呼吸器を後体の腹面に配置される[5]。その中でサソリは4対、ウデムシサソリモドキクモ下目以外のクモは2対、ヤイトムシとクモ下目のクモは1対をもつ[5]。クモ下目の中では、ユウレイグモ科など一部を除いて昆虫と相似の気管系を書肺と併用している。体サイズの小さな節足動物では、肺のような血液循環に依存した呼吸器よりも、気管系のような体組織に直接酸素を届ける呼吸器のほうが効率がよいことが知られている。書肺は、クモガタ類と同じく鋏角類の節足動物であるカブトガニ類に見られるような書鰓(しょさい)に起源する器官と考えられる[6][7]。いずれも関節肢由来の蓋板の内側に配置された、本のページのように畳んだ無数の薄板によって構成される[6][7]。ただし能動的で水中呼吸用の書鰓とは異なり、空気呼吸用の書肺は体の内側に占め込んで不可動になり、各薄板の間には、空気を取り込める隙間を支えるための小柱がたくさん生えている[6][7][8]
軟体動物腹足類の場合
カタツムリなど、陸生種を含む有肺類では、の入り口近くの外套膜の下に、空気の出入りできる腔所があり、ここで空気呼吸する。これを肺という。通常の腹足類では鰓を収納している外套腔に空気を吸い込むようになったものである。空気の出入り口は、殻の口のそば、体の側面に1つだけある。有肺類にはモノアラガイのような淡水生種やカラマツガイのような海生種も知られているが、前者は皮膚呼吸のほか時々水面上に呼吸孔を開いて肺呼吸をし、後者は二次的な鰓をもち海水から酸素を取り込む。有肺類以外の腹足類でもヤマキサゴ、ヤマタニシのような陸生種や、スクミリンゴガイのような貧酸素になりやすい淡水に生息する種にも空気呼吸するものがあり、これらも外套腔に空気を吸い込んでガス交換を行えるようになっている。

  1. ^ a b c d e f g h i j k l 佐藤・佐伯(2009)、p.87-47、第4章 呼吸、2.呼吸器系の構造と機能、5)肺lung
  2. ^ a b 佐藤・佐伯(2009)、p.86-87、第4章 呼吸、2.呼吸器系の構造と機能、4)気管tracheaと気管支bronchus
  3. ^ 佐藤・佐伯(2009)、p.83-84、第4章 呼吸、2.呼吸器系の構造と機能、2)咽頭pharynxと喉頭larynx
  4. ^ 参考文献:板沢靖男・羽生功 / 編『魚類生理学』(恒星社厚生閣、1991年平成3年))
    ISBN 4-7699-0706-0
    P.31の表よりデータを抜粋編集
  5. ^ a b Dunlop, Jason A.; Lamsdell, James C. (2017). “Segmentation and tagmosis in Chelicerata” (英語). Arthropod Structure & Development 46 (3): 395. ISSN 1467-8039. https://www.academia.edu/28212892/Segmentation_and_tagmosis_in_Chelicerata. 
  6. ^ a b c Scholtz, Gerhard; Kamenz, Carsten (2006). “The book lungs of Scorpiones and Tetrapulmonata (Chelicerata, Arachnida): evidence for homology and a single terrestrialisation event of a common arachnid ancestor”. Zoology (Jena, Germany) 109 (1): 2–13. doi:10.1016/j.zool.2005.06.003. ISSN 0944-2006. PMID 16386884. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16386884/. 
  7. ^ a b c Lamsdell, James C.; McCoy, Victoria E.; Perron-Feller, Opal A.; Hopkins, Melanie J. (2020-11-02). “Air Breathing in an Exceptionally Preserved 340-Million-Year-Old Sea Scorpion” (English). Current Biology 30 (21): 4316–4321.e2. doi:10.1016/j.cub.2020.08.034. ISSN 0960-9822. PMID 32916114. https://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(20)31188-X. 
  8. ^ Kamenz, Carsten; Dunlop, Jason A; Scholtz, Gerhard; Kerp, Hans; Hass, Hagen (2008-04-23). “Microanatomy of Early Devonian book lungs” (英語). Biology Letters 4 (2): 212–215. doi:10.1098/rsbl.2007.0597. ISSN 1744-9561. PMC PMC2429929. PMID 18198139. https://www.researchgate.net/publication/5653652_Microanatomy_of_Early_Devonian_book_lungs. 


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