確定拠出年金 運用

確定拠出年金

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/09 18:55 UTC 版)

運用

加入者は運営管理機関を通じて運用指図を行い、資産を運用する。運営管理機関の多くはインターネット上で運用指図ができるサービスを提供している。

配分指定
掛金の拠出開始前に、提示された運用方法の中からどの商品にどのような割合で掛金を振り分けるか指定する(企業型の場合、規約にあらかじめ定めておくことができる)。
配分変更
配分指定で指定した振り分けを変更する。変更時点における保有資産には影響せず、変更月以降に拠出される掛金にのみ変更が反映される。
スイッチング
現行の保有資産を売却し、別の商品を購入する。売却により当該商品における損益が確定する。

給付

老齢給付金
60歳に到達した場合(規約により65歳まで引き上げ可)、5年以上20年以下の有期年金又は終身年金、あるいは規約の定めにより一時金として、支給を請求することができ、一時金と年金の併用も可能(35条)。これは運営管理機関が裁定し(33条3項)、加入者が支給の請求をすることなく70歳に達したときは、自動的に裁定が行われる(34条)。
資格喪失年齢を以下の年齢に定めた場合、その年齢に応じて必要とされる通算加入者等期間(企業型と個人型の合算)が以下の通り異なる(33条)。なお、通算加入者等期間の算定において、60歳に達した日の前日が属する月後の期間は通算加入者等期間に算入しない。
資格喪失年齢 必要とされる通算加入者等期間
60歳以上61歳未満 10年
61歳以上62歳未満 8年
62歳以上63歳未満 6年
63歳以上64歳未満 4年
64歳以上65歳未満 2年
65歳以上 1月
受給権は、死亡時のほか、障害給付金の受給権者となったとき、個人別管理資産がなくなったときには終了する。
障害給付金
加入者(であった者)が傷病による障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月後)から70歳に達する日の前日までの間において、その傷病により所定の障害の程度に該当するに至った場合、5年以上の有期又は終身年金として運営管理機関等に支給を請求することができる(37条)。受給条件は次の通りで、いずれかが該当する者でなければならない。
  • 障害基礎年金の受給者
  • 身体障害者手帳(1級から3級までの者に限る)の交付を受けた者
  • 療育手帳(重度の者に限る)の交付を受けた者
  • 精神保健福祉手帳(1級及び2級の者に限る)の交付を受けた者
死亡一時金
加入者(であった者)が死亡した時、その遺族が運営管理機関等の裁定に基づき、資産残高を一時金として受給できる(40条)。
脱退一時金
中途脱退した場合に資格喪失日から2年以内に請求することで、一時金として受給できる。ただし、審査があり個人別管理資産が25万円超、且つ通算拠出期間が36ヶ月超である場合等は、脱退一時金を受けられない場合がある。また障害給付金の受給権者は脱退一時金を請求できない。

掛金に対する税制

給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。租税その他の公課は、障害給付金として支給を受けた金銭を標準として、課することができない(第32条)。

個人型および企業型の確定拠出年金の掛金にかかる課税は以下のとおり。積み立てている間は非課税、積立金を受け取った時に課税されるのが特徴。

掛金拠出時

  • 個人型の場合、掛金全額が所得控除小規模企業共済等掛金控除)の対象とされ、所得税住民税が軽減される。
  • 企業型の場合、掛金の全額が損金算入される。かつ、従業員の給与所得とは見なされない。マッチング拠出の掛金額は、個人型の掛金と同様に所得控除の対象とされる。

運用時

運用益は非課税。

企業型の場合、積立金に対して特別法人税が課税されることになっているが、当初からずっと課税凍結しており、凍結期間は延長を繰り返していて、現在は少なくとも2023年3月まで凍結が延長されている。撤廃の議論もある[16]

給付時

受け取り条件によって、課税される科目が異なる。受け取り時に課税対象であった場合は、確定申告の対象となる。

  • 老齢給付金を受け取る場合
    • 一時金払いの分は、退職所得となり、退職所得控除の対象。その際は掛金拠出期間が勤続年数と見なされる。
    • 年金払いの分は、公的年金等の雑所得となり、公的年金等控除の対象。
  • 障害給付金を受け取る場合、所得税住民税ともに非課税。
  • 死亡一時金を受け取る場合、みなし相続財産として相続税の課税対象。法定相続人一人当たり500万円まで非課税。
  • 脱退一時金を受け取る場合、一時所得として課税される。

注釈

  1. ^ 免除部分も一定の割合で年金として将来受取ることができる。
  2. ^ この制度に類似した、積立投資ドルコスト平均法)による長期運用の制度である「つみたてNISA」は、いつでも換金・出金ができる点で「iDeCo」よりも運用に参加するためのハードルが低い。
  3. ^ この費用は定期預金だけであっても発生し、また拠出を停止しても最低限792円の年間手数料(事務委託手数料)がかかる。
  4. ^ 法令改正前から存在するプランでは、SBI証券(オリジナルプラン)の最大67本[11]SBI証券オリジナルプランでは29銘柄の買付が停止された
  5. ^ SBI証券[12]
  6. ^ iDeCoに関して、ここでは価格変動商品から定期預金へのスイッチングを売却とし、定期預金から価格変動商品へのスイッチングを再投資とする。

出典

  1. ^ DC(=Defined Contribution Plan)とは、「確定拠出型」を意味するが、日本においては確定拠出年金(企業型年金、個人型年金)のことを指す略称として用いられることが多い”. 企業年金連合会. 2009年4月25日閲覧。
  2. ^ 厚生労働白書 令和4年度』厚生労働省、2022年、資料編https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21-2/dl/11.pdf 
  3. ^ 被用者年金制度の一元化に伴い、2015年10月1日から公務員及び私学教職員も厚生年金に加入。また、共済年金の職域加算部分は廃止され、新たに退職等年金給付が創設。ただし、2015年9月30日までの共済年金に加入していた期間分については、2015年10月以後においても、加入期間に応じた職域加算部分を支給。
  4. ^ 「確定拠出年金の日(10月1日)」と 「NISA(ニーサ)の日(2月13日)」を制定しました。確定拠出年金教育協会
  5. ^ 高橋成壽 (2017年1月4日). “「iDeCo」をやらないほうがいい人 60歳まで下ろせない”. PRESIDENT Online. https://president.jp/articles/-/21047?page=2 
  6. ^ 個人型確定拠出年金制度 愛称募集キャンペーン”. 2016年9月16日閲覧。
  7. ^ a b iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数等について (PDF)
  8. ^ 個人型確定拠出年金取扱機関 かんたん比較&検索! | モーニングスター iDeCo(個人型確定拠出年金)情報 - モーニングスター
  9. ^ eMAXIS Slim米国株式(S&P500), SMBC・DCインデックスファンド(S&P500), DC米国株式インデックス・オープン(S&P500), iFreeNEXT NASDAQ100インデックス - 確定拠出年金教育協会 iDeCoナビ(個人型確定拠出年金ナビ)
  10. ^ 手数料でiDeCo(イデコ)金融機関を比較 | 個人型確定拠出年金ナビ「iDeCo(イデコ)ナビ」 - 確定拠出年金教育協会
  11. ^ 個人型確定拠出年金取扱機関 かんたん比較&検索! | モーニングスター iDeCo(個人型確定拠出年金)情報 : 商品内容検索 - モーニングスター
  12. ^ 対象商品数一覧 | モーニングスター つみたてNISA (積立NISA) 総合ガイド - モーニングスター
  13. ^ つみたてNISA対象商品届出一覧 2022年4月26日 - 金融庁
  14. ^ a b 確定拠出年金の統計|統計資料|企業年金連合会
  15. ^ 運営管理機関登録業者一覧”. 厚生労働省. 2011年11月19日閲覧。
  16. ^ 令和2年度税制改正要望事項(抄) (PDF)
  17. ^ 確定拠出年金の施行状況(毎月更新)”. 厚生労働省 (2016年8月31日). 2016年10月26日閲覧。






確定拠出年金と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「確定拠出年金」の関連用語



3
ディー‐シー デジタル大辞泉
100% |||||

4
日本版401k デジタル大辞泉
100% |||||



7
確定拠出年金法 デジタル大辞泉
100% |||||

8
イデコ デジタル大辞泉
100% |||||

9
企業型確定拠出年金 デジタル大辞泉
100% |||||


確定拠出年金のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



確定拠出年金のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの確定拠出年金 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS