温帯低気圧 ノルウェー学派モデル

温帯低気圧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/31 04:46 UTC 版)

ノルウェー学派モデル

1920年前後にノルウェーの気象学者ヴィルヘルム・ビヤークネスを中心とする学派(ノルウェー学派またはベルゲン学派と呼ばれる)によって提唱された低気圧モデルである。この時代には高層大気についての観測データはまだ少なく、地上観測でのデータを中心に構築されたモデルである。古典モデルであるが、低気圧の実態についてよく説明できるため現在でも広く低気圧の説明に利用されている。

低気圧の発生

ノルウェー学派は暖気を持つ亜熱帯高圧帯と寒気を持つ極高圧帯の境界にできる寒帯前線亜寒帯低圧帯)上で発生する渦と考えた。寒帯前線の一部で暖気の勢力が強まるとその部分は高緯度に向かって移動しはじめ温暖前線となり、一方寒気の勢力が強まると低緯度に向かって移動しはじめ寒冷前線となる。コリオリの力によってこの空気の流れは回転させられ、東側の温暖前線と西側の寒冷前線の境界で北半球では反時計回転の渦(南半球では時計回転の渦)ができる。これが低気圧の中心である。なお、熱帯低気圧台風など)が中緯度まで北上(北半球の場合)し、温低化[1]することで温帯低気圧に変わることもある。

低気圧の発達

発達した温帯低気圧(南半球なので渦が右巻きになっている)

温暖前線においては相対的に軽い暖気が相対的に重い寒気の上を這いあがり、寒冷前線においては寒気が暖気の下にもぐりこむ。これらの運動により重力による位置エネルギーが減り、その分が空気の運動エネルギーに変換される。その結果、低気圧の渦の回転が加速される。それに伴って低気圧の中心気圧も低下する。この過程が進行するにつれて徐々に低気圧の南側に存在する地上が暖気で覆われた部分(暖域)が減少し、寒気に覆われた部分が増加していく。これは天気図上では温暖前線に寒冷前線が追いついていくように見える。そしてついには低気圧の中心に近い部分では地上からは暖気がなくなってしまう。これを閉塞 (occlusion) という。しかし、低気圧の前面と後面の寒気はもともと遠く離れていた場所の空気であるので、ある程度の温度差があり前線が残る。この前線は閉塞前線という。

低気圧の衰弱

イギリス付近の温帯低気圧の天気図。Lは低気圧の中心、青の矢印は風向。

閉塞した低気圧はもはや発達するためのエネルギーを使い切ってしまっているので、徐々に地表との摩擦などにより渦運動が弱まっていく。閉塞前線の前後の空気の温度差が小さいため、徐々に温度差は小さくなり閉塞前線も消失する。こうすると低気圧は寒帯前線から切り離された寒気内の渦となり、さらに衰弱してやがて消滅する。








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