拳銃は俺のパスポート
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/10 14:48 UTC 版)
製作背景
- 製作は多くの日活B級活劇映画に共通する過酷なスケジュールと低予算で、脚本執筆に4日、撮影も公開日目前の1967年1月に20日ほどの短期間で製作された。屋外ロケーションの多い作品ながら真冬の撮影であっただけに、苦労も多かったという。
- 宍戸は監督の野村、B班担当の長谷部らを相手に多様なアクションのアイデアを提案し(宍戸が日活アクション映画で頭角を現して以来の習慣だった)、ラストの決闘シーンの流麗なガンアクションをはじめ相当な部分で活かされている。
- 宍戸が矢作俊彦との対談で語ったところでは、ラストシーンの埋立地のロケーションに使われたのは、川崎市扇島の埋立地であった。21世紀時点ではすでに撮影当時とは一変して都市化しているという(ただし実際の扇島は埋め立て完成後は純然たる工場用地となっており、別の埋立地でロケした可能性もある)。日活は本作のビデオソフト紹介にてロケ地に横浜、羽田空港を挙げたほか、ドライブイン「渚館」のロケ地を熱海としている。
- 脚本の永原秀一は、本作での実績に基づき、同種のハードボイルドなガンアクション作品の企画を立てて脚本も執筆したが、日活・宍戸主演では映画化は実現せず、翌1968年に東宝で「狙撃」(堀川弘通監督・加山雄三主演)として映画化されている。
原作
本作の原作については、本編のクレジットでも、現在、日活のウェブサイトで閲覧できる作品紹介[1]でも「藤原審爾(「逃亡者」より 久保書店刊)」とされている。これを受け、本作の原作を藤原審爾の「逃亡者」とする見方が広がっているものの、久保書店刊『逃亡者』は短編集であり、「逃亡者」「殺し屋」など全5編が収められている。その内、本作の原作となっているのは表題作の「逃亡者」ではなく「殺し屋」であることは明らか。役名(周治、駿、美奈など)や基本的プロット(島津組の組長を暗殺した二人組が安ホテル「渚館」に身を隠し高飛びの機会を窺う)も映画と一致している。ただし、映画のクライマックスとなっている埋立地での対決は完全に映画オリジナル。また原作にも映画にも大田原、津川、千崎、三好という人物が登場するが、原作と映画では人物設定が異なっている。
なお、短編小説「殺し屋」は『面白倶楽部』1958年11月号が初出。その後、光風社刊『果しなき欲望』に収録され、さらに1965年、本作の原作とされている久保書店刊『逃亡者』に再録されている。
サウンドトラック
- 拳銃は俺のパスポート オリジナル・サウンドトラック(2020年6月24日/CINEMA-KAN/規格番号CINK-62)
伊部春美作曲の口笛を用いたマカロニ・ウエスタン風のテーマ曲が、アレンジされながら全編で繰り返し使われる。また本業が歌手であるジェリー藤尾の見せ場を作るため、挿入歌として『逢いたいぜ』(作詞 杉野まもる、作曲 伊達政男)が作られており、渚館での上村と塩崎の会話シーンでジェリーがギターで弾き語る演出がされている。CDには本編未使用の音源も収録されている。
- ^ “拳銃は俺のパスポート”. 日活. 2021年11月14日閲覧。
- ^ “宍戸錠×矢作俊彦 対談──かつてこの国には「殺し屋」がいた”. GQ JAPAN. 2021年11月14日閲覧。
- ^ 西脇英夫『アウトローの挽歌 黄昏にB級映画を見てた』白川書院、1976年、123頁。
- ^ “『拳銃は俺のパスポート』(1967年・野村孝)|佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所”. 2021年11月27日閲覧。
- ^ キネマ旬報WEB>拳銃は俺のパスポート
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