態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/01 04:07 UTC 版)
概説
動詞の主語が、目的語に及ぶ行為の動作主である場合、動詞は能動態に置かれ、その文は能動文となる[2]。
文の主語が、実際には根底の文の能動動詞の目的語である場合、動詞は受動態に置かれ、その文は受動文となる[2]。
たとえば、Pierre a été blessé par Paul. (ピエールはポールに傷つけられた)は、Paul a blessé Pierre. (ポールはピエールを傷つけた)に由来する。この場合、根底にある能動文の主語 Paul は、実現された文の動作主、いわゆる動作主補語となり、目的語Pierre は主語となっている[2]。Pierre a été blessé.という文では、根底の文の主語は、実現された文の動作主のはずであるが、特定のものが示されていないが、これは、受動態の主たる目的が、特定の動作主のない文を表現することだからである[2]。フランス語では、受動態のしるしは、助動詞の後に他動詞の過去分詞が付いたものである[2]。
文の主語が、同時に、動詞の示す目的語であれば、それが行為の動作主であろうとなかろうと、動詞は中動態に置かれる[2]。中動態は、ギリシア語にもあるが、フランス語では、次のものに対応する。
- 代名態。
- Paul lave Paul. → Paul se lave. (ポールは体を洗う)という文で、Paulは主語であり、目的語であり、また動作主である[2]。
- 動詞の自動詞形。
- Le rocher bouge. (岩が動く) という文で、岩は主語だが、必ずしも行為の動作主ではなく、この場合の中動態は、受動態に近い。歴史的には、ギリシア語の受動態は、中動態から出たものである[2]。
- 二重目的語をもつ代名動詞形。
- Pierre se cire ses chaussures. (ピエールは自分の靴を磨く)という文では、動作主は、その行為を別の目的語に及ぼすが、それは自分自身のためである[2]。
- ^ Allan, Rutger (2013). "Diathesis/Voice (Morphology of)". Encyclopedia of Ancient Greek Language and Linguistics. doi:10.1163/2214-448X_eagll_COM_00000099。
- ^ a b c d e f g h i j k l 「態」ラルース言語学用語辞典、大修館書店、1980,p.259.
- ^ Middle English Dictionary, voice n. , 6.Gram., University of Michigan.
- ^ Klaiman 1991: 3.
- ^ a b Shibatani 2006.
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