多重散乱理論 多重散乱理論の概要

多重散乱理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/21 09:15 UTC 版)

格子上に配置したランダムなポテンシャル下での電子

多重散乱理論には扱う対象により様々なものが考えられるが、以下に一つの例として並進対称に配置した格子系において、各格子(サイト)上にポテンシャルがランダム(非周期的)に配置した場合を考える。以下、散乱されるのは電子としておく。

サイトnにあるポテンシャルをVn自由電子(または無摂動)のハミルトニアンをH0として、系を記述するハミルトニアンHを、

とする。次にこれを以下のように変形する。

ここで、

であり、は任意の周期ポテンシャル。つまりポテンシャルVnを周期的部分と非周期的部分とに分けた訳である。zは複素エネルギー。上式で、v(z)は次のようvn(z)の和になっている。

更に、この系におけるグリーン関数をG(z)とすると、G(z)は、

であり、

とし、非周期ポテンシャル部分vに関して展開すると、

となる。Tを総散乱行列と言う。総散乱行列Tをサイトの和の形で表すと、

となる。サイトnのポテンシャルvnのみを考え、散乱理論の場合と同じ要領でt行列が定義できる。

加えて、

である。総散乱行列TはサイトnでのTnの和、

と表現でき、各Tnは、

更に、

である。ここで、

よりtnが出てくる。以上から総散乱行列Tは、t行列により次のように表される。

形式解の提示

ここでポテンシャルが全て同じであると考える。そして総散乱行列Tを次のように分解する。

分解されたTnn'は、

となる。G0は自由電子のグリーン関数とする()。これにより、厳密な形式解を得ることができる。Tnn'は更に、

となる。Tnn'はサイトnから始まって、サイトn'で終わる全ての散乱過程を記述していることとなる。一方Tnは、

であり、これはサイトnは考慮されるが、終点としてのサイトn'を考えていない。そして、Tnn'の形式解は(但し、ここでrkへのフーリエ変換及び、角運動量表示を導入している)、

 : 角運動量表示

となる(形式解導出の詳細は省略)。は構造定数と言われるもので、結晶格子の種類にのみ依存する定数である。であり。L,L',lなどは軌道角運動量に関しての指標である。τn(κ)はt行列tnに相当する。ここで構造定数は具体的には、

となる。球ハンケル関数、YL球面調和関数である。尚、形式解は次のようにも表される。

この形式解から、状態密度をD(E)の表式を得ることができる。この時、上式左辺をと略して表示。

ここで、係数2はスピンの縮重度、Nは全サイト数、Imは虚数部分、Trはトレース(跡)を取ることを意味する。D0(E)は自由電子の状態密度。




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