可除群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/02/09 05:39 UTC 版)
定義
アーベル群 (G, +) が可除 (divisible) であるとは、すべての正の整数 n とすべての g ∈ G に対して、ある y ∈ G が存在して、ny = g となることをいう[1]。これは任意の正の整数 n に対して nG = G といっても同じである。なぜならば、すべての n と g に対しての y の存在から nG ⊇ G が言え、逆の nG ⊆ G は任意の群に対して正しいからである。また別の同値条件として、アーベル群 G が可除であることと G がアーベル群の圏における入射対象であることは同値である。この理由のため、可除群は入射群と呼ばれることがある。
アーベル群が素数 p に対して p-可除 (p-divisible) とは、すべての正の整数 n とすべての g ∈ G に対してある y ∈ G が存在して pny = g となることをいう。あるいは同じことだが、アーベル群が p-可除であることと pG = G であることは同値である。
例
- 有理数全体 は加法のもと可除群をなす。
- より一般に、 上の任意のベクトル空間を加法群と見たものは可除である。
- 可除群のすべての商群は可除である。したがって、 は可除である。
- の p-準素成分 、これは p-準巡回群 と同型であるが、可除である。
- 複素数体の乗法群 は可除である。
- (モデル理論の意味で)存在閉なすべての群は可除である。
性質
- 可除群がアーベル群の部分群であれば直和因子である[2]。
- 任意のアーベル群は可除群に埋め込むことができる[3]。
- 非自明な可除群は有限生成でない。
- さらに、すべてのアーベル群は可除群に一意的に本質部分群として埋め込むことができる[4]。
- アーベル群が可除であることと全ての素数 p に対して p-可除であることは同値である。
- A を環とする。T が可除群であれば、 は A 加群の圏において単射的である[5]。
- ^ Griffith, p. 6
- ^ Hall, p. 197
- ^ Griffith, p. 17
- ^ Griffith, p. 19
- ^ Lang, p. 106
- ^ Kaplansky 1965.
- ^ Griffith, p. 7
- ^ Feigelstock 2006.
- ^ Cartan & Eilenberg 1999.
- ^ Rotman 2009.
- ^ Lam 1999.
- ^ Nicholson & Yousif 2003.
- ^ Damiano 1979.
- ^ a b Lam 1999, pp. 70–73.
- 1 可除群とは
- 2 可除群の概要
- 3 可除群の構造定理
- 4 移入包絡
- 5 参考文献
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