単段式宇宙輸送機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/05 14:23 UTC 版)
今後
2009年現在、SSTOの具体的な開発計画は存在していない。これは、スペースシャトルの運航経験や過去の研究状況から、現時点の技術では使い捨てロケットより経済的なSSTOの実現は不可能であると判断されているためである。また、使い捨てロケットが高コストと評価されたのは、当時のアヴィオニクスにおいて電子装置が極端に高価だったためであり、エレクトロニクスの進歩により現代ではコスト計算が変わっている。SSTOが本来期待される、使い捨てロケットよりはるかに経済的で簡便な宇宙輸送手段として実現するには、材料などの要素技術が大幅に進歩しなければならないとする考えが一般的である。
空気吸い込み式の極超音速エンジンは、研究が行われているものの実用化の目処は立っておらず、これを搭載するSSTO、TSTOとも構想段階から踏み出していない。
一方、ロケットエンジンを使用するTSTOは比較的難易度が低いことから、2009年現在も検討や開発が行われている。また過渡的段階として、フライバックブースターや空中発射ロケットの開発も行われている。
地球以外の天体でのSSTO
地球におけるSSTOはいまだ実現には至っていないが、月でのSSTOはアポロ計画のアポロ月着陸船の上昇段で実現されている。月の低重力ならば、SSTOは難しいことではない。ただしアポロ月着陸船の場合は、着陸する際に使用した下降段(総重量の6割)は切り離し月面に投棄している。
さらに重力の小さい小天体であれば、完全なSSTOもしばしば実現されている。2005年に小惑星イトカワを探査したはやぶさは、月以外の天体としては初めて着陸後に離陸しており[2]、これは機体の下段を投棄したアポロの月着陸船と違って着陸・離陸を、サンプル採取という輸送目的も達成しつつ行うという、完全なSSTOが実現された。似たような例としては他にも2014年に彗星探査機ロゼッタの着陸機フィラエが着陸に失敗し、バウンド(このとき偶然サンプル採取)後に数時間ほど飛行して再着陸後にサンプルを分析したケースもあるが、こちらは自力での離陸やサンプル輸送を意図した設計では無い。はやぶさ2ミッションでフィラエの技術を応用した着陸機MASCOTに至っては2018年に自力でジャンプしての移動・探査も達成したが、いずれにせよ対象天体の重力圏を脱出できるほどの設計ではなかった。なお、はやぶさミッションでもエクストラ扱いではあったが似たような意図の分離子機「ミネルバ」が搭載されていたが、そちらは放出が適切なタイミングで行われず、結果として近傍の惑星軌道に乗った人工惑星となったものと推測されている。こちらについても後継機ミネルバ2にて小惑星上のジャンプ移動・探査には成功している。
- ^ “宇宙飛行に革命を! NASAが「回転デトネーション・エンジン」の試験に成功”. TECH+(テックプラス) (2023年2月4日). 2023年2月6日閲覧。
- ^ “JAXA小惑星探査機「はやぶさ」物語|ミッションカレンダー”. JAXA. 2017年7月2日閲覧。
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