下請代金支払遅延等防止法 禁止行為

下請代金支払遅延等防止法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/08 14:53 UTC 版)

禁止行為

親事業者の禁止行為として、次のような行為が定められている。

受領拒否(4条1項1号)
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むことをいう。発注の取消しや納期の延期なども受領拒否にあたる[7]。「下請事業者の責めに帰すべき理由」がある場合とは、「下請事業者の給付の内容が三条書面に明記された委託内容と異なる場合又は下請事業者の給付に瑕疵等がある場合」と「下請事業者の給付が三条書面に明記された納期に行われない場合」に限られる[8]
下請代金の支払い遅延(4条1項2号)
下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないことをいう。
下請代金の減額(4条1項3号)
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずることをいう。原材料価格の下落等を含め、あらゆる名目、方法での減額行為が禁止されている。振込手数料消費税相当額を支払わないこともこれに該当する[9]
不当返品(4条1項4号)
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせることをいう。「親事業者が受入検査を行い、いったん合格品として取り扱ったもののうち、直ちに発見することができない瑕疵があったもの」や、「親事業者が下請事業者に受入検査を文書で委任している場合、直ちに発見することのできない瑕疵や、直ちに発見できる瑕疵であっても明らかな検査ミスのあるとき」は、受領後6か月以内であれば返品することができる[3]
買いたたき(4条1項5号)
下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めることをいう。「通常支払われる対価」とは、「その下請事業者の属する取引地域において一般的に支払われる対価」[10]をいう。
購入強制・役務の利用強制(4条1項6号)
下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させることをいう。
報復行為(4条1項7号)
親事業者がこれらの禁止行為をしている場合に、下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすることをいう。
有償支給原材料等の対価の早期決済(4条2項1号)
原材料等を自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせることをいう。これによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
割引困難手形の交付(4条2項2号)
下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することをいう。これによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。なお、割引困難手形とは、繊維業では90日、その他の業種では120日を超える長期の手形をいう[11]
経済上の利益の提供要請(4条2項3号)
自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることをいう。これによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
不当な給付内容の変更・やり直し(4条2項4号)
下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させることをいう。これによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。

  1. ^ 金井・川濵・泉水(2006)321頁
  2. ^ a b 下請代金支払遅延等防止法施行令(平成13年1月4日政令第5号)において、情報成果物として「プログラム」が、役務として「運送」「物品の倉庫における保管」「情報処理」が定められている。
  3. ^ a b c 公正取引委員会「よくある質問コーナー
  4. ^ 例えば、製造委託をする場合であれば、資本金が3億円以下の子会社
  5. ^ 『ポイント解説下請法』7頁
  6. ^ a b 『知るほどなるほど下請法』4頁
  7. ^ 『知るほどなるほど下請法』11頁
  8. ^ 下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準(平成15年12月11日事務総長通達第18号)
  9. ^ 『ポイント解説下請法』12頁
  10. ^ 『ポイント解説下請法』8頁
  11. ^ 『ポイント解説下請法』15頁
  12. ^ 金井・川濵・泉水(2006)325頁
  13. ^ 下請法勧告一覧(平成21年度以降)公正取引委員会
  14. ^ 勧告件数は以下の通り。2009年度はダイゾーマルハニチロ食品とりせんなど15件、2010年度は日産サービスセンター・トステムビバドギーマンハヤシいすゞ自動車中国四国西鉄ストアなど15件、2011年度は生活協同組合連合会コープ中国四国事業連合・タカキューはるやま商事たち吉・大創産業など18件、2012年度はコナカ生活協同組合コープさっぽろアイリスオーヤマライトオン・ニッセン・日本生活協同組合連合会・サンゲツなど16件、2013年度は日本旅行三共理化学ヨークベニマルなど10件、2014年度はヒマラヤ・大創産業(2回目)・北雄ラッキーマルショクなど7件。2015年度はゼビオ・大地を守る会など4件。2016年度はファミリーマート・農協観光ニッドプレナスあらたなど11件。2017年度は久世山崎製パンタカタセブン-イレブン・ジャパン伊藤園など9件。2018年度は小野建全日本食品サンリオ柿安本店など7件。2019年度は森永製菓LIXILビバ東洋電装サンクゼールなど7件。2020年度はリーガルコーポレーションコモディイイダ・フジデン(本社:大阪府枚方市)・マツダの4件。2021年度はティーガイア・東京吉岡の2件。
  15. ^ ダイソー、下請け代金を不当減額…公取委勧告2012年3月27日 読売新聞
  16. ^ 株式会社ニッセンに対する勧告について (PDF) 平成24年9月20日 公正取引委員会
  17. ^ 通販大手ニッセン、下請法違反で勧告 支払い不当に減額2012年9月21日 朝日新聞
  18. ^ 日本生活協同組合連合会に対する勧告等について(PDFファイル)平成24年9月25日 公正取引委員会
  19. ^ ヒマラヤが下請法違反=不当返品など1億円-公取委2014年6月27日 時事通信
  20. ^ 売れ残り、下請けに不当返品…ダイソーに勧告2014年7月14日 読売新聞
  21. ^ 「ダイソー」が下請法違反=不当に返品、勧告2回目-公取委2014年7月14日 時事通信
  22. ^ 下請法の指導件数 7年連続で最多 公取委、16年度2017年5月24日 日本経済新聞 公取委によると、近年は下請け業者が書面調査に積極的に回答するようになっているほか、親事業者からの自発的な申告も増えているという。公取委は政府の中小企業対策が浸透し、これまで明らかにならなかった違反が表面化するようになっており、親事業者が不当に得た利益(不当利得)が公取委の指導や勧告によって下請け業者に返還されるなど、一定の効果を上げていると見ている。
  23. ^ ファミマ、下請けへの支払代金を不当に減額2016年8月25日 読売新聞
  24. ^ 下請法違反で「久世」に勧告=5000万円不当減額-公取委2017年4月27日 時事通信
  25. ^ 下請法違反、山崎製パンに勧告=コンビニ事業で不当減額-公取委2017年5月10日 時事通信
  26. ^ (平成29年7月21日)株式会社セブン-イレブン・ジャパンに対する勧告について平成29年7月21日 公正取引委員会
  27. ^ (令和元年9月27日)株式会社LIXILビバに対する勧告について令和元年9月27日 公正取引委員会
  28. ^ (平成30年5月7日)平成30年度「下請取引適正化推進月間」キャンペーン標語の一般公募について平成30年5月7日 公正取引委員会
  29. ^ 各種パンフレット下請法関係 公正取引委員会






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「下請代金支払遅延等防止法」の関連用語

下請代金支払遅延等防止法のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



下請代金支払遅延等防止法のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの下請代金支払遅延等防止法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS