マイヤー・ヴィートリス完全系列 更に進んだ議論

マイヤー・ヴィートリス完全系列

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/29 14:29 UTC 版)

更に進んだ議論

相対版

相対ホモロジー版のマイヤー・ヴィートリス完全系列も存在する。部分空間 YXCA および DB の和であるとき、相対版マイヤー・ヴィートリス完全列は

可換である[21]

コホモロジー版

係数群 G を持つ特異コホモロジーに対するマイヤー・ヴィートリスの長完全系列は、ホモロジー版の双対であり、

で与えられる[22]。ここで、次元を保つ写像は包含写像から誘導された制限写像であり、(双対)境界写像はホモロジー版のときと同様にして定義される。さらにこの相対版の定式化も同様にできる。 重要な意味を持つ特別な場合としては、係数群 G実数全体の成す加法群 R で、考える位相空間がさらに可微分多様体の構造を持つような場合であって、このときド・ラームコホモロジーに対するマイヤー・ヴィートリス完全系列は

と書ける。ただし {U, V} は X開被覆、ρ は制限写像、Δ は差であり、また双対境界写像 d は上で述べた境界写像 ∂ と同様に定められる。この完全系列は以下のように簡潔に述べることもできる。例えば交わり UV における閉微分形式 ω で表されるコホモロジー類 [ω] に対して、開被覆 {U, V} に従う 1 の分割を通じて ω を ωU - ωV の形の差に表せば、外微分 dωU および dωVUV 上で一致し、それ故ともに X 上の或る (n + 1)-形式 σ を定めるが、このとき d([ω]) = [σ] が成り立つ。

導出について

α(x) = (x, −x), β(x, y) = x + y および Cn(A + B) は A の鎖と B の鎖の和からなるものとして、鎖群(鎖複体を構成する群)の成す短完全列[9]

付随する長完全列を考える。事実として、X の特異 n-単体で像が AB の何れかに含まれるようなもの全体はホモロジー群 Hn(X) を生成する[23]。即ち、Hn(A + B) は Hn(X) に同型である。この事実が特異ホモロジーに対するマイヤー・ヴィートリス完全系列を与えるのである。 同じ計算を微分形式の成すベクトル空間の短完全列

に適用すれば、ド・ラームコホモロジーに対するマイヤー・ヴィートリス完全系列が得られる[24]

形式的な観点で言えば、マイヤー・ヴィートリス完全系列は、ホモロジー論に対するアイレンバーグ・スティーンロッド公理系英語版からホモロジーの長完全列を用いて導出できる[25]

種々のホモロジー論

アイレンバーグ・スティーンロッド公理系からのマイヤー・ヴィートリス完全系列の導出には次元公理は必要でない[26]ので、常コホモロジー論において存在するばかりでなく、超常コホモロジー論(位相的 K-理論やコボルディズムのような、常コホモロジーにならない一般コホモロジー論)においてもやはりマイヤー・ヴィートリス完全系列の存在が保証される。

層係数コホモロジー

層係数コホモロジーの観点からは、マイヤー・ヴィートリス完全系列はチェックコホモロジーと関係する。特に、チェックコホモロジーを計算するために用いた開被覆が二つの開集合からなる場合において、スペクトル系列の退化から生じるもの(マイヤー・ヴィートリススペクトル系列とも呼ばれる)は、チェックコホモロジーを層係数コホモロジーに結び付ける[27]。このスペクトル列は任意のトポスにおいて存在する[28]


  1. ^ Hirzebruch 1999
  2. ^ Mayer 1929
  3. ^ Dieudonné 1989, p. 39
  4. ^ Mayer 1929, p. 41
  5. ^ Vietoris 1930
  6. ^ Corry 2004, p. 345
  7. ^ Eilenberg & Steenrod 1952, Theorem 15.3
  8. ^ Eilenberg & Steenrod 1952, §15
  9. ^ a b Hatcher 2002, p. 149
  10. ^ a b Hatcher 2002, p. 150
  11. ^ Spanier 1966, p. 187
  12. ^ Massey 1984, p. 240
  13. ^ Hatcher 2002, Theorem 2A.1, p. 166
  14. ^ Hatcher 2002, Example 2.46, p.150
  15. ^ Hatcher 2002, p. 384
  16. ^ Hatcher 2002, p. 151
  17. ^ Hatcher 2002, Exercise 31
  18. ^ Hatcher 2002, Exercice 32
  19. ^ Hatcher 2002, p. 152
  20. ^ Massey 1984, p. 208
  21. ^ Eilenberg & Steenrod 1952, Theorem 15.4
  22. ^ Hatcher 2002, p. 203
  23. ^ Hatcher 2002, Proposition 2.21, p.119
  24. ^ Bott & Tu 1982, §I.2
  25. ^ Hatcher 2002, p. 162
  26. ^ Kōno & Tamaki 2006, pp. 25–26
  27. ^ Dimca 2004, pp. 35–36
  28. ^ Verdier 1972 (SGA 4.V.3)





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