ベーラー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 01:03 UTC 版)
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成型する梱包の形状と大きさによって、いくつかの異なったタイプのベーラーが使用される。一般的にベーラーはトラクターに牽引されてそのPTOの動力によって稼動するが、エンジンを搭載した自走ベーラーも存在する。
また、資源リサイクル施設等に設置された産業用梱包機もベーラーと呼ばれる。梱包機は主としてプラスチックや紙、ダンボールを圧縮梱包してリサイクル施設に輸送するために使う。
ロールベーラー
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最もよく使われるタイプのベーラーは、円柱状に成型された梱包を作るロールベーラーである。干し草はベーラーの内部で、ゴムベルトかローラー、またはそれらを組み合せた機構によって単純に巻き上げられる。
ロールベーラーを牽引するトラクタはレーキによって集草されたウインドロー(集草列)をまたぐように走行し、中央部だけ密度が高い樽型のベールが出来るのを防ぐためにトラクタのトレッドの範囲内でウインドローの上を蛇行するように走行する。
多数のタインが取りつけられたピックアップがウインドローを拾い上げて、干し草の圧縮・成型を行うチャンバーへと送りこむ。機種によってはピックアップの後方に並べられたカッティングナイフで切断されてからチャンバーへと干し草を送りこむ。
ベールが決められた大きさになったとき、自動又は手動操作でベールを縛るようにトワインかネットが外周に巻きつけられるが、結束はされない。そしてベーラーの後部が上に開き、ベールが放出される。トワインやネットを繰り出す際には、トラクタを完全に停車させ、ピックアップからの干し草の供給を中断する必要がある。藁や完全に乾燥した干し草のベールはこれで完成であるが、もしベールをサイレージにするなら、別の機械で気密性のあるラップフィルムを巻きつけてラッピングする。
可変径タイプのベーラーは外径が48から72インチ(約120から180cm)かそれ以上、幅60インチ(150cm)のベールを成型する。ベールは大きさ、干し草の種類、および乾燥度合によって、1100ポンド(500kg)から2200ポンド(1000kg)の重量がある。
初期のロールベーラーはロトベーラー[1]としてエリスシャルマース(en:Allis_Chalmers)によって販売された。ベールのサイズは直径およそ16インチ(41cm)で幅は48インチ(120cm)だった。最初のロールベーラーの概念はUmmo Luebbensによって1910年代初期にすでに考案されていた。エリスシャルマースの円柱状にベールを梱包する機械は、1947年に発表され、1960年に販売中止されるまでの間、当時長方形のベールが最も一般的であったところにロールベーラを販売することにおいて先駆者だった。
近代的なロールベーラーは1972年にバーミヤー社によって設計された。(バーミヤー社は、2007年現在、ロールベーラを生産し続けている[2][3]。)
日本のメーカーは、農家の規模に合せて、ロールの外径が120cm以上の大型タイプ、100cm前後の中型タイプ、そして外径50cmのミニ・タイプの三つのクラスのロールベーラーを販売している。また、水田での稲ワラ収集を可能にするため、クローラを備えた自走式のロールベーラーも生産している。最近では、細断されたデントコーンをホッパで直接受け、そのままロールに成型する専用のロールベーラーも登場した。
ロールベールの取扱いと運搬
酪農等の200頭以上の牛を飼う現代の大規模農業において、1トンかそれ以上のロールベールは検討に値する。しかしながら、ロールベールは斜面を転がったりするため、特別な運搬方法や荷役機械を必要とする。
日本において一般的なロールの取扱い方法はフロントローダーの先端に取り付けるベールグラブやベールハンドラであるが、 海外でロールの取り扱いに最も重要なツールとされるものは、ベール用のスピアー[4]かスパイク[5]で、トラクタの3点リンクかスキッドステアローダの前部、小型トラックの荷台後部等にも取りつけられ、4輪バギーで牽引するスピアーも存在する。それらは、ロールベールのだいたい中央に突き刺し、持ち上げて別の場所に運搬する。目的地に着いたら、ロールは地面に置かれ、スピアーは引き抜かれる。スピアーを慎重に中央に突刺すことは、ロールが運搬中にくるりと回って地面に接触し、不意の事故が発生するのを防止するために重要である。
また、ロールを持ち上げて運搬するのに、グラップルフォーク[6]が使われることもある。グラップルフォークは、トラクタのフロントローダーに取り付ける油圧作業機である。油圧シリンダが伸びると手を閉じるようにフォークが下向きにつかむ。ロールベールを移動するために、トラクタは横からベールに接近してベールの下にバケットを置く。フォークはベールの上から挟み込むようにベールをつかみ、バケットを持ち上げて運搬する。
ブログの記事「Hay Delivery」[7]の中では、大小のロールベールを簡単に移動する方法を見ることが出来る。
これは簡単な日曜大工で出来る、ローダーのバケットの改造法である。2個のフックをフロントローダーのバケット上面の両サイドに溶接し、チェーンを取り付ける。そして、オペレータがトラクタに乗ったままチェーンをベールの向こう側に回してバケットをすくい上げると、ベールを掴むことができ、それを運搬して積み重ねたり、家畜の餌場に置いたり出来る。この簡単なシステムの利点は、トラクタのフロントやリアに装着する高価な作業機を使用しないということである。これで小さな農家は、余分な作業機の経費を負担する事を回避でき、1つの機能のために別のトラクタを用意する必要が無い。少々練習することで、専用の油圧ベールグラブと同じ位素早く使うことが出来る。 シュガー・マウンテン・ファーム[8]のウォルター・ジェフリーズ(Walter Jeffries)によって開発されたこの方法は、複雑なメンテナンスもなく、ベールスピアーやベールグラブよりも安全である。
ロールの平らな面を地面に置くと後でそれを(スピアーで)倒すのは難しいので、沢山のロールを長い距離運搬するのには大変である。(アオリの無い)平らな荷台のトラックでロールを運ぶのは、上り坂でロールが転がり落ちるかもしれないので難しい。これを防ぐために、平らな荷台のトレーラはロールが前や後ろに転がるのを防ぐため、両端に丸いガード・レールを備えている。この他の解決法はサドルワゴンで、ロールが落ちつくようロールの形に合せた台座を備えたり、ロールを支える支柱で荷台を区切ったものである。それぞれの台座(saddle)の高い側の面、または支柱の間にベールが収まることによって、積荷のベールが転がり落ちることを防ぐ。
ロールベールは給飼する場所に置くことによって、直接給飼することが出来る。ベールのラップを剥ぎ取り、周囲から保護されたリングの中に置くと、ペールの外周からほぐれた干し草を家畜に踏みつけられる事が無い。
ロールベーラーの成型と圧縮の過程は、ベールを逆に転がしてほぐすのを助けてくれる。トワインやネットを切断した上でロールを逆に転がしただけで、連続した平らな細長い列になるからだ。
ロールベールサイレージ
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最近採り入れられた牧草の格納方法は、高水分のままラッピングしたロールベールサイレージ(またはヘイレージ)である。これは普通のロールよりも、はるかに水分が高い状態で梱包されており、高い含水量の為に通常のロールよりも重量が重いため、乾草のロールよりも小さい径で梱包される場合がある。ロールベールサイレージはすぐに発酵し始め、このベールの中央に突刺した金属製のベールスピアーに触ると、発酵の熱によりとても熱くなっている。
専用のラップマシンを使用する場合は、半乾燥状態の干し草のベールを、トラクタの3点リンクに装着された、上部に一対のローラーが付いているターンテーブルの上に乗せ、ベールを転がすと同時に水平に回転させながら、僅かに粘着性のあるラップフィルムを何層かに渡って巻きつける。(外部リンクのYouTube動画参照) これによって、円柱状のベールの端面と側面が同時に密封される。一本のラップフィルムを巻きつける方式をシングルストレッチ、二本同時に巻き付ける方式をダブルストレッチと呼ぶ。近年ではベーラーとラップマシンが一体化してウインドローを拾い上げて梱包作業をしながら、同時進行で前の工程で完成している梱包のラッピング作業が出来るベーラ・ラッパが使われ始めた。
ロールベールサイレージは、トラクタのフロントローダーに取りつけられた油圧式のベールグラブ(bale glab)[注 1]で移動したり、積み重ねられる。普通のベールスパイクで移動することも出来るが、密封されたラップに穴をあけてしまうので、その都度空気が浸入しないようテープで補修するか、すぐ給飼しなければならない。ロールベールサイレージは、通常リングフィーダー(ring feeder)等で家畜に給飼する度にひとつずつ開封される。
各ベールの高い気密性は、まるでそれがバッグサイロ(silo bag)の中にあるかのように梱包された飼料が発酵することを可能にする。しかもバッグサイロよりも取り扱いが簡単で、密封した梱包を個別に運搬することが出来る。対照的に、大きなバッグサイロは破れやすく、ローダー等の機械で簡単に損傷するバッグの中から、ばらのサイレージをすくい出さなければならない。
しかしながら、ラップフィルムを多量に使い、サイレージで汚れたラップフィルムは、燃料として焼却する以外には再利用したり再生する方法が全く無い。ベール1つ当りのラッピング費用はおよそ5ドルである。
簡易的なラップ方法
この記事の英語版では、ロールにラップを巻きつける簡単な方法が紹介されている。 その作業方法はまず、トラクタに取り付けられた、特殊な回転するベールスピアーで突き刺す。ベールは回転させられ、ラップフィルムはベールの外側にぴったりと巻き付けられる。このラップするフィルムのロールは、オペレータが重いラップフィルムを持ち上げなくても良いように、ベールの軸に対し平行に移動するアームに取りつけられる。このようなラップの巻き方だとラップの層はロールベールの平らな面の真中に12インチ程(約30cm)のラップされずに開放された部分が残るので、後でそこをラップで覆って密封する。
これらのベールは、それぞれのラップされたベールを、既に地面に並べられているベールに対してしっかりと押しつけながら地面に置く。そうすると、互いのベールの端のラップが、空気と湿気を遮断し風雨から干し草を保護する為、開いている両端をラップで覆う手間を省くことが出来る。列の最後のベールは干し草を開梱するまで手作業でぴったりと密閉される。
ビッグベーラー
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別のタイプのこのベーラーは、共同草地(commons)等で利用される大きな長方形のベールを成型し、それぞれのベールは6本程のトワインの紐で結束される。結束する際にロールベーラーと違って停車する必要がないため連続作業が可能であり、ロールベーラーよりも能率に優れる。 このようなベールは非常に高密度に圧縮され、一般にロールベールよりも重量がある。
角型ベールの取扱いと運搬
角型のベールは平ボディのトレーラから転がり落るというリスクがほとんど無いのでロールベールより輸送しやすい。 長方形の形は、保管場所を節約し、干し草で出来た硬いブロックは輸送や保管の為に何段も積み重ねることを可能にする。
それらは何トンもの飼料が毎時間給飼されるフィードロット(feedlot)と呼ばれる大規模な家畜飼育場に最適である。
巨大な長方形の形のため、これらの角型ベールを持ち上げるためには、大型のスピアーフォークかスクイーズグリップ(squeeze grips)を装備した重機、たとえば大型フォークリフト、トラクタのフロントローダー、テレハンドラー、ヘイスクイーズ(hay squeezes)またはホイールローダが使われる。
注釈
出典
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