トランジスタラジオ トランジスタラジオの概要

トランジスタラジオ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/04 19:35 UTC 版)

東京通信工業(現・ソニー)のTR-52(1952年発売)。
日本のトランジスタラジオの1号機。
5石トランジスタ[注釈 1]スーパーヘテロダイン方式受信機。東京通信工業社内の通称は「国連ビルラジオ」。形状がこの年竣工したニューヨークの国連本部ビルを思わせるものだったからそう呼ばれた。
ソニー スカイセンサー ICF-5900(1975年10月発売)。BCL用トランジスタラジオ。

概要

それまでのラジオ受信機で主に使われていた真空管の代わりに、トランジスタを使うことで小型化・軽量化・携帯化が可能になったものである。

トランジスタは、ベル研究所の3人(ジョン・バーディーンウォルター・ブラッテンウィリアム・ショックレー)の連名で1948年に発表されたものであった。[注釈 2] トランジスタは半導体素子で、真空管と比べて大幅に省電力で、サイズも小さく、振動にも強い。真空管は使用とともに性能が劣化し交換しなければならない消耗品であるが、トランジスタは交換の必要がない。このように優れた特徴が多数あるので、真空管の代わりにトランジスタが用いられることが増え、それが起きた製品ジャンルのひとつがラジオであった。[注釈 3]

真空管ラジオからトランジスタラジオへの移行期は1950年代に始まり、日本では東京通信工業(略称「東通工」。現:ソニー)が先陣を切る形で製造に成功し、日本製のトランジスタラジオが世界中に輸出されるようになった。

1950年中頃にはトランジスタラジオの量産が始まり、1950年代後半から1960年代にかけて普及、70年代までに従前の真空管をつかったラジオをほぼ駆逐するに至った。

真空管を増幅回路として使用するラジオは、電源の電圧が比較的高くなければならない上に消費電力も大きく[注釈 4]、また真空管のサイズが大きいのでそれを使うラジオ受信機の筐体も大ぶりになってしまい、通常 据置型として使用するものであった。それに対してトランジスタラジオは小型で、電源の電圧も低くてよく(4.5 - 9V程度)消費電力も小さいため、小さな乾電池で動作し片手で持ち運べる機器となり、野外でもラジオを手軽に聞くことができるようになった。またそれまで据置型で「一家に一台」だったものが、持ち運べることになったことで一家で複数台所有されることになり、ラジオ放送受信機の市場が拡大した。

分類、種類

いくつか分類法があるが、 ひとつの分類法は、増幅回路に含まれているトランジスタの数で分類する方法である。1石/2石/3石/4石/5石/6石/7石...などと分類される。

回路方式による分類としては、レフレックス / スーパーヘテロダイン という分類が基本で、それに加えてダイレクトコンバージョン も分類に加えることがある。


注釈

  1. ^ 「5石」とは素子を5個使っているという意味。「5石トランジスタ」はトランジスタを5個使っているという意味である。
  2. ^ 1947年にベル研究所のジョン・バーディーンとウォルター・ブラッテンが高純度のゲルマニウム単結晶にきわめて近づけて立てた2本の針の片方に電流を流すともう片方に大きな電流が流れるという現象を発見し、同研究所の固体物理学部門のリーダーだったウィリアム・ショックレーがこの現象を増幅に利用できると気づき熱心に研究を行い、1948年6月30日に増幅素子の発明として3人の連名で発表したものである。
  3. ^ 他にも、真空管式コンピュータの代わりにトランジスタ式コンピュータが製造されるなど、真空管が用いられていたいくつもの製品ジャンルで同様のことが起きた。
  4. ^ 基本的には100 - 120V商用電源が必要。低電圧動作の電池管と呼ばれる素子を使ったものでも45 - 90Vの高圧乾電池とヒーター加熱用に1.5 - 3Vの乾電池が必要。
  5. ^ シリコントランジスタはまだ一部企業での研究所での基礎実験段階だった。ソニーは発売当時シリコントランジスタは手がけておらず、ゲルマニウムトランジスタを採用するのは当然だった。
  6. ^ ラジオに使えるレベルの特性の良いものはだいたい1%程度に過ぎなかったという。
  7. ^ なお、その原動力の最初の主なものは1950年に勃発した朝鮮戦争に起因する朝鮮特需で1952年までもしくは1955年までのものであったが、その後は日本製品の輸出、まさに当記事で扱っているトランジスタラジオなどのエレクトロニクス製品の輸出で稼ぐ外貨の効果も現れることになった。
  8. ^ 日本政府は1960年代に道路整備を精力的に推進し。1960年代前半には1964年東京オリンピックに向けて東京都内でも高速道路を整備するということも行った。

出典

  1. ^ NHKスペシャル電子立国日本の自叙伝』上巻(相田洋著、日本放送出版協会1991年) pp.314 - 315
  2. ^ Sony Japan | Sony Design|History|1950s”. www.sony.co.jp. ソニー. 2020年4月17日閲覧。
  3. ^ a b 盛田昭夫、下村満子、E・M・ラインゴールド『MADE IN JAPAN』朝日新聞社、1990年1月20日、153-154頁。ISBN 978-4022605825 
  4. ^ 2000年12月12日放送 NHKプロジェクトX 第33回『町工場、世界へ翔ぶ~トランジスタラジオ・営業マンたちの闘い~』、2021年(令和3年)7月20日放送 プロジェクトX 4Kリストア版
  5. ^ rd0.html りき丸城 ラジオセット土鈴草花, http://rdriki.zashiki.com/newpage rd0.html 
  6. ^ トランジスタラジオの発売と普及, http://www.japanradiomuseum.jp/Tr-radio.html 
  7. ^ NHK年鑑 1956年版 日本放送協会編 1955年10月 日本放送出版協会
  8. ^ 川名喜之「シリコントランジスタの開発とソニー - 日本半導体歴史館」(PDF)『半導体産業人協会 会報』No.86、2014年10月、25-32頁。 
  9. ^ 『電子立国日本の自叙伝』上巻・pp.325 - 329
  10. ^ 『電子立国日本の自叙伝』上巻・pp.331 - 335
  11. ^ 川名喜之「東京通信工業、日本初のトランジスタ及びトランジスタラジオ量産成功の軌跡」(PDF)『半導体産業人協会 会報』No.84、2014年4月、26-33頁。 
  12. ^ 『電子立国日本の自叙伝』上巻・pp.336 - 343
  13. ^ 『電子立国日本の自叙伝』上巻・p.343
  14. ^ 現:株式会社ジェイテクトエレクトロニクス。東京小平市の会社。
  15. ^ トヨタ自動車公式サイト、75年史、「高度成長とモータリゼーション


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