トゥルハンスク トゥルハンスクの概要

トゥルハンスク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/11 19:14 UTC 版)

黒貂が大きく描かれたトゥルハンスクの紋章。この黒貂の絵は、街がかつて毛皮交易で繁栄したことを暗に示している。
イェニセイ川流域

トゥルハンスク、またはツルハンスク(ロシア語: Туруха́нск)は、ロシア連邦クラスノヤルスク地方トゥルハンスク地区の行政上の中心地である。地域区分で村(セロー、ロシア語: Село)にあたる。クラスノヤルスクの北方1474キロメートル、イェニセイ川ニジニャヤ・ツングースカ川の合流点に位置する。なお、1925年までは現在のスタロトゥルハンスクがトゥルハンスクと呼ばれており、現在のトゥルハンスクは1924年までモナスティルスコエ、1924年から1930年までノヴォ=トゥルハンスクと呼ばれていた。

歴史

毛皮交易の要地として

イェニセイ川の中流には先住民ケト人が住んでいた[1]

16世紀から17世紀にかけて、ロシア人によるシベリア征服が行われ[2]、初期のロシア人入植地のひとつであるトゥルハンスクは、1607年、あるいは1604年[3]コサックや商人たちのための冬営地(ジモヴィエзимовье)として建設された。

一方、16世紀から、毛皮獣が豊富な土地として、北極海オビ湾からタズ川に入ったあたりにあったマンガゼヤが知られていた。マンガゼヤ産の毛皮は白海アルハンゲリスク港での西ヨーロッパとの貿易で好評を博し、イギリスやオランダの商人や探検家をも呼び込んだ。1601年に作られたマンガゼヤは、北氷洋航海の終点として大いに栄えた。夏になると2000人から3000人が集まってきたという。マンガゼヤからは、トゥルハンスクのあるイェニセイ川方面へのルートも開かれた[4]。 しかし、17世紀なかばにマンガゼヤは衰退していく[4]。理由は、1619年、1642年、1662年のマンガゼヤの大火災[要出典]のため、あるいは、北氷洋航路からのドイツ人侵入や海上密貿易を警戒したロシア・ツァーリ国当局によって、北氷洋航路が閉鎖されたためといった説がある[5]。トゥルハンスクは旧入植地の大部分の住民を受け入れ、新マンガゼヤと呼ばれるようになった[5]。1677年、大砲を備えた木造の砦がこの地に建てられた。入植地はシベリアでも最大規模の定期市のひとつを主催し、1785年、トゥルハンスク町(町、ウエズド уезд)として地方行政に組み込まれた[要出典]。 シベリアの毛皮は、小商人が各地の集落を周り、猟師から直接買い付けた。これらの毛皮は東シベリアの都市の定期市に送られていった。トゥルハンスクでは北極狐が集められた[注釈 1]。 そこで買いとられた毛皮はイルクーツク定期市に出品され、イルクーツクの大商人たちが清国とのキャフタ貿易を行った。したがって、キャフタ貿易の中断にともなって、北極狐の値は大幅に下落した[6]。 1822年以降、町の人口は減っていった。

流刑地として

帝政ロシアからソビエト連邦時代を通じて、トゥルハンスクはしばしば政治犯の流刑地となった。流刑囚のなかには、以下の人々が含まれる。ユーリー・マルトフヤーコフ・スヴェルドロフヨシフ・スターリンレフ・カーメネフ、アレクサンドル・ウラノフスキー、マリーナ・ツヴェターエワの娘であるアリアドナ・エフロン、ユズ・アレシコフスキー、大主教聖ルカ(ヴォイノ-ヤセネツキー)らである。

トゥルハンスクに流されていたスターリンが、1913年にロシア社会民主労働党の同志ロマン・マリノフスキー[注釈 2]に書き送った手紙がある。

親愛なる友へ。手紙を書くのは気まずいが、仕方がないのだ。今まで、これほどひどい時を過ごしたことはないと思う。金はすべてなくなった。ひどい寒さが始まった(零下37度だ)。そのせいで、どうもたちの悪いセキが出始めた。身体全体は病気気味だし、パンも砂糖も肉も灯油も蓄えがない(金はすべて当面の出費と衣服と履物でなくなった)。蓄えがないと、ここでは何でも高い(中略)牛乳も薪も必要だが、金がない。金がないのだ。友よ。この状態でどのように冬を過ごしたら良いのか、俺にはわからない。
スターリン、1913年、トゥルハンスクにて。横手慎二

[7]

人口統計


注釈

  1. ^ 三上 & 神田 1989, p. 127.
  2. ^ 土肥 2007, p. 52.
  3. ^ 三上 & 神田 1989, p. 440.
  4. ^ a b 三上 & 神田 1989, pp. 436–437.
  5. ^ a b 三上 & 神田 1989, p. 437.
  6. ^ 森永 2005, pp. 16–17.
  7. ^ 横手 2010, pp. 82–83.
  8. ^ Russian Federal State Statistics Service (2011). "Всероссийская перепись населения 2010 года. Том 1" [2010 All-Russian Population Census, vol. 1]. Всероссийская перепись населения 2010 года [2010 All-Russia Population Census] (ロシア語). Federal State Statistics Service.
  9. ^ Russian Federal State Statistics Service (21 May 2004). "Численность населения России, субъектов Российской Федерации в составе федеральных округов, районов, городских поселений, сельских населённых пунктов – районных центров и сельских населённых пунктов с населением 3 тысячи и более человек" [Population of Russia, Its Federal Districts, Federal Subjects, Districts, Urban Localities, Rural Localities—Administrative Centers, and Rural Localities with Population of Over 3,000] (XLS). Всероссийская перепись населения 2002 года [All-Russia Population Census of 2002] (ロシア語).
  10. ^ "Всесоюзная перепись населения 1989 г. Численность наличного населения союзных и автономных республик, автономных областей и округов, краёв, областей, районов, городских поселений и сёл-райцентров" [All Union Population Census of 1989: Present Population of Union and Autonomous Republics, Autonomous Oblasts and Okrugs, Krais, Oblasts, Districts, Urban Settlements, and Villages Serving as District Administrative Centers]. Всесоюзная перепись населения 1989 года [All-Union Population Census of 1989] (ロシア語). Институт демографии Национального исследовательского университета: Высшая школа экономики [Institute of Demography at the National Research University: Higher School of Economics]. 1989. Demoscope Weeklyより。
  11. ^ Погода и Климат. Retrieved 18 November 2012.
  1. ^ 北極狐は清国人に好まれた。特に、クッションの材料にされたという。森永、2005年、12頁
  2. ^ 実際には帝国政府の保安当局スパイであった。横手、2014年、82頁


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