タットヴァ (ジャイナ教)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/22 22:36 UTC 版)
バンダ
カルマは意識と縛り付けられているときにのみ効果を及ぼす。この、カルマが意識に縛り付けられていることをバンダ(bandha)と呼ぶ。しかし、ヨーガつまり活動自体がこういった束縛を生み出すわけではない。束縛の様々な要因の中でも、情動こそが束縛の主な要因だとされる。様々な情動や精神的傾向が存在するために魂が「粘着性」を帯び、それによってカルマが文字通りくっついて離れがたくなるという[6]。
パーパとプニャ
多くの文献でプニャ(punya)つまり善行とパーパ(pāpa)つまり悪行が基本的実在として挙げられている。しかし『タットヴァールタスートラ』(Tattvārthasūtra)ではタットヴァの数は七種とされる、というのはこの文献ではプニャおよびパーパはアースラヴァやバンダに含められているのである。プニャとパーパはどちらも「ドラヴィヤ」タイプ(物質的なタイプ)と「バーヴァ」タイプ(精神的なタイプ)の二種類に分けられる[9]。
サンヴァラ
サンヴァラ(Saṃvara)とはカルマの制御である。自己の解放あるいは成就の第一段階はカルマの魂への流入路を全て遮断し、カルマが今以上に蓄積しないよう気を付けることである。これがカルマの流入の停止、すなわちサンヴァラである[10]。サンヴァラには二種類ある。すなわち精神的生活に関するもの(「バーヴァ・サンヴァラ」)とカルマの微粒子の移動を言うもの(「ドラヴィヤ・サンヴァラ」)である。この制御は自制心と、固着からの解放によって可能となる。戒律の実践、注意深さ、自制心、十種のダルマの順守、瞑想、様々な障害(飢え、渇き、情動など)の除去といったことを行うことで、カルマの流入を停止して活発なカルマによる汚染から魂を守ることができる。
ニルジャラー
ニルジャラー(Nirjarā)とは既に蓄積されたカルマを払い落とし、あるいは破壊することである。ニルジャラーには二種類ある。すなわちカルマを除去する霊的な相(「バーヴァ・ニルジャラー」)とカルマの微粒子の破壊(「ドラヴィヤ・ニルジャラー」)である[10]。カルマはその結果が完全に実現すると自然の行程として自己消滅する。この場合は何の努力も必要ない。残存するカルマは苦行(「アヴィパカ・ニルジャラー」)によって除去する必要がある。霊魂はその表面がカルマの塵に覆われると鏡のように曇って見える。カルマが破壊されて除去されると霊魂はその本来の卓絶した姿を取り戻して輝く。この後に最終的な目的である「モークシャ」に到達する。
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- ^ *Soni, Jayandra; E. Craig (Ed.) (1998). “Jain Philosophy”. Routledge Encyclopedia of Philosophy (London: Routledge) 2008年3月5日閲覧。.
- ^ Nayanar, Prof. A. Chakravarti (2005). Pañcāstikāyasāra of Ācārya Kundakunda. New Delhi: Today & Tomorrows Printer and Publisher. ISBN 81-7019-436-9. , Gāthā 16
- ^ Nayanar, Prof. A. Chakravarti (2005). Pañcāstikāyasāra of Ācārya Kundakunda. New Delhi: Today & Tomorrows Printer and Publisher. ISBN 81-7019-436-9. , Gāthā 18
- ^ Shah, Natubhai (1998). Jainism: The World of Conquerors. Volume I and II. Sussex: Sussex Academy Press. ISBN 1-898723-30-3.
- ^ James, Edwin Oliver (1969). Creation and Cosmology: A Historical and Comparative Inquiry. Netherland: BRILL. ISBN 90-04-01617-1. p. 45
- ^ a b Jaini, Padmanabh (1998). The Jaina Path of Purification. New Delhi: Motilal Banarsidass. ISBN 81-208-1578-5. p. 112
- ^ Kuhn, Hermann (2001). Karma, The Mechanism : Create Your Own Fate. Wunstorf, Germany: Crosswind Publishing. ISBN 3-9806211-4-6. p. 26
- ^ Tatia, Nathmal (tr.) (1994) (Sanskrit - English). Tattvārtha Sūtra: That which Is of Vācaka Umāsvāti. Lanham, MD: Rowman Altamira. ISBN 0-7619-8993-5. p. 151
- ^ Sanghvi, Sukhlal (1974) (trans. K. K. Dixit). Tattvārthasūtra of Vācaka Umāsvāti. Ahmedabad: L. D. Institute of Indology.
- ^ a b T. G. Kalghatgi, Philosophy East and West, Vol. 15, No. 3/4, (Jul. - Oct., 1965), pp. 229-242 University of Hawai Press
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