ゼルダの伝説 スカイウォードソード
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歴史
本作が公式の場で初めて存在が言及されたのは2008年E3のラウンドテーブルでのことで、このときWii向けのゼルダの新作が開発中であると宮本茂が発言した[4]。また、このチームはDS向けのゼルダ(大地の汽笛)を開発しているチームとも溶け込んでいる(メンバーの入れ替わりなどがある)ことが紹介される[4]。
2009年E3のラウンドテーブルでは、宮本茂により1枚のコンセプトアートが公開され、Wiiモーションプラスに対応する事、発売年は2010年を目標にしている事も明かされた[5]。
2010年E3にてSkyward Swordというタイトルと共に正式に発表され、トレーラーやスクリーンショット、操作方法等が公開、試遊台が展示された。また発売予定時期が2011年に延期された[6]。宮本は「『ゼルダの伝説』を何度も遊ぶ人がいるというのは、仕組みがおもしろいからだと思っています。それがだんだんと、ダンジョンの数やストーリーの長さに興味がうつりがちですが、もっと原点に帰っておもしろい遊びを作りたい、という気持ちが強いです」と語っている[7]。
2011年E3では、新しいトレーラーとスクリーンショットが公開された。またゲーム本編は『スーパーマリオギャラクシー』と同様にオーケストラ演奏によるBGMを採用していること、スカイウォードソード仕様の金色のWiiリモコンが発売されることも明かされた。
開発
本作の開発はストーリー等ビジュアルな部分から行われたものではなく、ゲームの基礎となる操作などの仕組みの部分から行われた。具体的にはWiiリモコンを使うことで「『ゼルダ』がどう変わるのか」ということが、本作のチャレンジのひとつだった[8]。プロデューサーの青沼英二は『トワイライトプリンセス』の開発が終了したあと次作の企画を検討していた[8]。その中で、『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』を開発していた藤林秀麿が企画書を持参し、制作を志願した[8]。そして同時期に開発された「Wiiモーションプラス」を使用して、「自由に操作できるものを考える」コンセプトのもと話を進めたが、『ゼルダ』でのアクション場面において、Wiiモーションプラスを円滑に使うことが困難であり、当初は使用することを断念した[8]。そこで青沼らはWiiリモコンとヌンチャクだけで遊べる『ゼルダ』を制作し始めるが、他のプロデューサーから「なぜWiiモーションプラスを使わないのか」とプレッシャーを受け、結果、再度Wiiモーションプラスを使う方向に方針を転換した[8]。問題を解決するにあたって、青沼らは当初は人の動きを忠実に再現しようと、人体の骨格を研究するなど実験を繰り返したが、リンクのアクションが様にならないため、忠実さを断念したところ、むしろ自然な動きとなることができた[9]。
アクションの問題が解決したため、アイテムの切り替えもこれまでとは異なり、画面を見なくても切り替えられる検討した結果、Wiiリモコンプラスを傾ければ、アイテム選択ができるようなUIにすることにした[10]。
このように操作方法が変化したことで、宮本茂は「前の操作にはもう戻れない」と評価する一方、既存の方法からの変化に戸惑う消費者もいることが想定された[11]。これに関して、開発者一同は、自分の動作がキャラクターに反映されることで、より世界への没入観が得られる点や、既存のコントローラーのようにコマンドを覚える必要がない点、最初は違和感があったとしても身体が覚えるなどの自己評価をしている[11]。
最終的に開発期間は5年にわたり、総勢100人以上のスタッフが関わった[8]。タイトルの『スカイウォード』は宮本のアイデアによって「剣ビーム」が実現し、天に剣を掲げられるようになったことで名付けられた[9]。また本作にはアイテムとして「ビートル」が登場するが、開発段階では「ロケットパンチ」であり、このようなからくりが登場することで設定が膨らみ、本作には「発達した古代文明があった」という設定が生まれた[12]。
なお本作のメインテーマ曲「女神の詩」は、逆再生すると、ゼルダシリーズでゼルダのテーマ曲として用いられている曲「ゼルダの子守歌」になる。女神の詩を作曲した若井淑はこのトリックについて当初「誰も気づかなかったらお墓まで持って行こう」と考えて周囲に内緒にし、青沼にも伝えていなかったが、ファンはこれにいち早く気づいていた。こうした中、アメリカのゲーム見本市のE3で海外メディアからこの件を尋ねられた際、事実を知らない青沼は「そんな訳がないでしょう。逆再生して曲が成り立つわけがない」と否定し大恥をかいてしまったという[13]。
不具合
勇者の詩を手に入れるイベントを特定の順番で行うと先に進めない不具合が存在する。これについて任天堂は不具合回避手順を公式ホームページ上で告知し、Wiiチャンネルを用いたオンラインでのセーブデータ修復サービス、およびセーブデータ入りのSDメモリーカード(またはWii本体)を任天堂に送付することによる修復サービスを行っている[14]。
注釈
- ^ 他に派生作品であるTPSゲーム『リンクのボウガントレーニング』がWiiで発売されている。
- ^ ただし4:3の場合は上下に黒帯ができ、ワイドテレビかつWiiの本体設定で4:3にして遊んでいる場合は正しい比率で反映されない為、テレビ側で画面サイズをノーマルに設定する必要がある。
出典
- ^ “2011年度 第72期(2012年3月期) 決算説明会資料” (PDF). 任天堂株式会社 (2012年4月27日). 2024年2月20日閲覧。
- ^ 『CESAゲーム白書〈2020〉(2020 CESA Games White Papers)』コンピュータエンターテインメント協会、2020年7月27日、[要ページ番号]頁。ISBN 978-4-902346-42-8。
- ^ “社長が訊く 『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』第6回:濃密なシナリオと演出編”. 任天堂. 2024年2月20日閲覧。
- ^ a b “E3: 宮本さん、「ゼルダ新作は制作中」とコメント”. N-Wii.net (2008年7月16日). 2024年2月20日閲覧。
- ^ “宮本茂氏からWii向け『ゼルダの伝説』最新作の話題も―任天堂ラウンドテーブル”. ファミ通.com (2009年6月3日). 2024年2月20日閲覧。
- ^ “任天堂、Wii「The Legend of Zelda: Skyward Sword」を発表 Wiiモーションプラス+ヌンチャクでプレイ。来年発売予定”. GAME Watch (2010年6月16日). 2024年2月20日閲覧。
- ^ “【任天堂ラウンドテーブルその2】『The Legend of Zelda:Skyward Sword』の開発秘話”. ファミ通.com (2010年6月17日). 2024年2月20日閲覧。
- ^ a b c d e f 青沼英二; 藤林秀麿; 小林竜二; 田中怜(インタビュアー:岩田聡)「社長が訊く 『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』」『第1回:「Wii+モーションがもたらした新操作」篇 1. 大きな回り道から』、任天堂、2011年10月18日 。2024年2月2日閲覧。
- ^ a b 青沼英二; 藤林秀麿; 小林竜二; 田中怜(インタビュアー:岩田聡)「社長が訊く 『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』」『第1回:「Wii+モーションがもたらした新操作」篇 2. 「止めたらええねん」』、任天堂、2011年10月18日 。2024年2月2日閲覧。
- ^ 青沼英二; 藤林秀麿; 小林竜二; 田中怜(インタビュアー:岩田聡)「社長が訊く 『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』」『第1回:「Wii+モーションがもたらした新操作」篇 3. 画面を見ないでアイテム選択』、任天堂、2011年10月18日 。2024年2月2日閲覧。
- ^ a b 青沼英二; 藤林秀麿; 小林竜二; 田中怜(インタビュアー:岩田聡)「社長が訊く 『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』」『第1回:「Wii+モーションがもたらした新操作」篇 5. 「前の操作にはもう戻れない」』、任天堂、2011年10月18日 。2024年2月2日閲覧。
- ^ 青沼英二; 藤林秀麿; 小林竜二; 田中怜(インタビュアー:岩田聡)「社長が訊く 『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』」『第1回:「Wii+モーションがもたらした新操作」篇 4. 「ロケットパンチが生んだ古代文明」』、任天堂、2011年10月18日 。2024年2月2日閲覧。
- ^ “ゲーム音楽のオーケストラコンサート、“PRESS START 2012 -Symphony of Games-”東京公演リポート!”. ファミ通.com (2012年9月26日). 2023年6月1日閲覧。
- ^ “Wii『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』ナリシャに出会った後の「勇者の詩」イベントの進め方についてのお願い”. 任天堂 (2011年12月15日). 2024年2月20日閲覧。
- ^ a b “Nintendo Switch『ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD』が7月16日に発売。特別デザインのJoy-Conも同時発売。”. 任天堂 (2021年2月18日). 2021年2月18日閲覧。
- ^ a b “ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD|Nintendo Switch|任天堂”. 任天堂. 2021年7月13日閲覧。
- ^ a b “The Legend of Zelda™: Skyward Sword HD for Nintendo Switch - Nintendo Game Details”. Nintendo of America. 2021年7月13日閲覧。
- ^ a b “The Legend of Zelda: Skyward Sword HD|Nintendo Switch|Games|Nintendo”. Nintendo UK. 2021年7月13日閲覧。
- ^ “任天堂株式会社 2022年3月期 決算説明資料” (PDF). 任天堂 (2022年5月10日). 2022年5月10日閲覧。
- ^ 2023CESAゲーム白書 (2023 CESA Games White Papers). コンピュータエンターテインメント協会. (2023). ISBN 978-4-902346-47-3
- ^ MAC佐藤 (2021年7月13日). "『ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD』レビュー。知恵とアイテムを駆使した始まりの物語を楽しめる". 電撃オンライン. KADOKAWA Game Linkage. 2023年11月17日閲覧。
- ^ "ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD」レビュー". GAME Watch. インプレス. 2021年7月15日. 2023年11月17日閲覧。
- ^ a b c O'Reilly, PJ (2023年8月14日). "Zelda: Skyward Sword HD Differences - What's Different In Skyward Sword Switch Vs Wii?". Nintendo Life (英語). 2023年11月17日閲覧。
- ^ "ゼルダ&ロフトバード【スカイウォードソード】". 任天堂. 2023年11月17日閲覧。
- ^ Jurkovich, Tristan (2021年7月18日). "Everything That's Different About The Legend of Zelda: Skyward Sword HD". GAMERANT (英語). 2023年11月17日閲覧。
- ^ “ゴールデンヌンチャク”. クラブニンテンドー. 2012年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月閲覧。
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