スペインワイン
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生産工程
ブドウ栽培
スペインでのブドウ栽培は、この地域の変化に富んだ極端な気候に適応して発展した。スペインの多くの地域にみられる乾燥した気候は、べと病やうどんこ病、ボトリチス病などの被害の脅威を低減させている。これらの地域では、干ばつの脅威や土地の生産能力の低さなどが理由で、ブドウ畑の所有者は樹の間隔を広く取ってブドウを植えることが奨励された。広く採用されている栽培手法のひとつに、ブドウの樹の間隔を全方向に対して2.5メートル取るという「レアルの枠」がある。スペイン南部や中央部は世界的にみて植樹密度が低い地域であり、1エーカーあたり375-600本(1ヘクタールあたり900-1600本)の範囲に収まる。これは、ボルドーやブルゴーニュなどの地域に一般的に見られる植樹密度の1/8以下である。スペインの多くのブドウ畑では植え付けから数十年が経過しているが、古いブドウの樹は収量が少なく、例えば、ムルシア州のフミーリャ (DO)では1エーカーあたりの収量が1.1トン以下(20ヘクトリットル/ヘクタール)である[14]
1994年と1995年の干ばつでブドウの収穫量が激減した後、1995年にはすべてのワイン生産地域で灌漑を使用することが合法化され[12]、多くの生産地域で灌漑が急速に浸透した。蒸発量を最小限に抑えるために、トレド県ではオーストラリアの企業が地下点滴灌漑方式の普及を支援した。灌漑の普及は植樹の高密度化を進展させ、いくつかの地域での収量の向上に貢献した[14]。
伝統的なブドウ畑が手摘みを継続している一方で、スペインのワイン産業界では機械収穫の使用増加が見られる。かつてワイナリーは正午以降に収穫されたブドウの購入を拒否していたため、ブドウの生産者は収穫を早朝に行わねばならなかった。近年では機械使用による収穫が広く普及しており、より気温が低い夜間に収穫されるようになっている[14]。かつてのスペインでは、ブドウ栽培農家とワイン生産者の分業化が一般的だった[47]。
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水分を効率よく集めるために地を這うように植えられているラ・マンチャ地方のブドウ畑
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リア沿いの多湿地域で蔓棚によって生産されるガリシア地方のブドウ畑
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降水量の多さに対応して蔓棚が使用されているバスク地方のブドウ畑
ワイン醸造
スペインでは白ワインでさえも樽の中で20年間を熟成に費やすことがあり、はっきりそれと識別可能な風味を生み出している[9]。しかし、19世紀前半のイギリス人ワイン評論家は、スペインのワイン生産方法に対して否定的な見解を示した。サイラス・レディングは1833年の著書『A History and Description of Modern wines』(現代ワインの歴史と種類)で、スペイン人はブドウに対して「粗雑な扱い」をしていると書き、リチャード・フォードは1846年の著書『Gatherings from Spain』で、スペイン産ワインは「非科学的で無頓着な方法」で生産されていると書いた。これらの批判の一部は、スペインで培われていた伝統的なワイン生産方法に根ざしている。ブドウの圧搾と発酵はティナハスと呼ばれる陶器瓶の中で行われる。その後、ワインは木製の樽かブタ革製の袋に保存される[14]。温暖な気候や低標高の地域では、赤ワインはよりアルコール度数が高く、酸味が低くなる傾向がある。この傾向を是正するために、白ワイン用のブドウを加えて酸味のバランスを取ることがあるが、これによって黒ブドウの果実味は弱められる[15]。
温度制御装置を備えたステンレス鋼発酵タンクの出現は、アンダルシア州、カスティーリャ=ラ・マンチャ州、レバンテ地方(スペイン地中海沿岸部)などの温暖な地域のワイン産業を急速に変革し、よりフレッシュで果実味の強いワイン、特に白ワインの生産につながった[14]。1990年代初頭には爽やかでフレッシュなワインが注目されたが、その一方で、19世紀のような伝統的な樽による発酵方式も復活している[14]。スペインのワイン生産ではオーク樽を使用する長い伝統があり、オーク樽の使用開始はフランス人が225リットルの樽を取り入れる前にまで遡る[14]。
19世紀末から20世紀初頭、スペインのワイン生産者は安い上に香りの強いアメリカン・オークの樽に移行し始めた[14]。リオハなどの地域のワイン生産者は、特にテンプラニーリョ種が新しいアメリカン・オークの樽によく共鳴することに気づいた[14]。一方で、1980年代にはフレンチ・オークへの回帰も行われるようになり、いくつかのワイナリーはブレンド用に二種類のオーク樽を組み合わせて使用している[14]。新世代のワイン生産者は短期間の熟成で飲むことができる「若いワイン」の生産を開始している[14]。
生産者
カタルーニャ地方のミゲル・トーレス社は、個人所有のワイン生産者としては世界最大の生産量を誇る。ミゲル・トーレス社はスペイン最大のDO認定ワイン生産者であり[48]、商品を140か国以上に輸出している。ミゲル・トーレス社はカタルーニャ州のペネデスを拠点としているが、チリの中央渓谷、アメリカ合衆国・カリフォルニア州にもワイナリーを持つ。プリオラートではアルバロ・パラシオス、ルネ・バルビエのクロス・モガドール社などが知られている。
1877年にリオハに設立されたロペス・デ・エレディアは現在でも家族経営を続けており、現存する家族経営の生産者としてはリオハ最古である[49]。650ヘクタールのブドウ畑から年間8,000キロリットルのワインを生産するファウスティーノ社は、リオハ産ワインの輸出量の4割を占める、リオハ最大規模のワイン生産者である[49]。20世紀半ばに事業を急拡大し、リオハのほかにラ・マンチャなどにも進出している[49]。1879年に設立されたCVNE(クネ)社もリオハ最大規模のワイン生産者であり、2004年にはフェリペ皇太子とレティシアの結婚式で「インペリアル1994」が使用された[50]。
リベラ・デル・ドゥエロのベガ・シシリア社は、長らく「スペイン唯一の高級酒」と呼ばれた「ウニコ」を生産している[49]。同じくリベラ・デル・ドゥエロのドミニオ・デ・ピングス社の「ピングス」はスペイン最高値で有名である[49]。カバの大部分はフレシネ社、コドルニウ社、カステル・ブランチ社(フレシネ社傘下)の大手3社が生産しており、フレシネ社はスパークリングワイン生産者としては世界最大である[49]。フレシネ社を中心とするグループはカバの約7割、コドルニウ社はカバの約2割を生産しており、いずれも世界各地にワイナリーを持っている[49]。
ゴンサレス・ビアス社は最大規模のシェリー生産者であり、「ティオ・ペペ」はフィノの代名詞といえる銘柄である[49]。1772年創業のオズボーン社は現存する世界最古のワイン生産者のひとつであり、オズボーンの雄牛の看板でも知られる。
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