ザ・ブルード/怒りのメタファー ザ・ブルード/怒りのメタファーの概要

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ザ・ブルード/怒りのメタファー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/17 07:06 UTC 版)

ザ・ブルード/怒りのメタファー
The Brood
監督 デヴィッド・クローネンバーグ
脚本 デヴィッド・クローネンバーグ
製作 クロード・エロー
出演者
音楽 ハワード・ショア
撮影 マーク・アーウィン
編集 アラン・コリンズ
製作会社 カナダ映画開発公社英語版
配給
公開
  • 1979年6月1日
  • 1987年6月6日
上映時間 92分
製作国 カナダ
言語 英語
製作費 140万~150万カナダドル[1][2]
興行収入 500万ドル[3]
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日本では『ザ・ブルード』のタイトルでソフト化されたことがある[4]

ストーリー

精神科医のハル・ラグランはソマフリー研究所 (英: Somafree Institute) という施設を経営し、その施設で精神障害の患者を治療している。その治療法は患者の肉体に生理学的な変化を催させることで抑圧された感情を解放するというもので、ラグランはこの療法を「サイコプラズミクス」(英: psychoplasmics) と呼んでいる。入院患者の一人であるノーラ・カーベスは重度の精神障害を抱えており、夫のフランクとは5歳の娘であるキャンディスの監護権を巡って争っている。フランクはノーラの元を訪れた後、キャンディスの体に打撲傷や引っ掻き傷が残っていることを発見する。フランクはノーラがキャンディスを虐待したことを疑い、ラグランにノーラのキャンディスへの面会権を停止させる意思を伝える。ラグランはノーラとの治療を集中的に行うようになり、問題を早期に解決させようとする。セラピーの最中、ラグランはノーラが母親から虐待を受けていたこと、父親はノーラを母親の虐待から守ろうとしなかったことを知る。

一方で、フランクはラグランの治療法をやめさせるため、ジャン・ハートグという人物の元を訪ねる。ハートグはかつてソマフリー研究所の患者だったが、サイコプラズミクスの影響でリンパ腫を患い、死の淵にあった。その際、フランクはキャンディスを義理の母であるジュリアナの元に預ける。ジュリアナは、ノーラは幼い頃に原因不明の瘤が出来て入院していたことをキャンディスに語る。その後、ジュリアナは小人のような子供に襲撃されて撲殺される。キャンディスは精神的なショックを受けたが、襲われることはなかった。

ジュリアナの元夫であるバートンはジュリアナの葬儀のためにフランクの元を訪ね、ソマフリー研究所にいるノーラとの接触を試みる。しかし、ラグランはバートンを追い返してしまう。フランクはキャンディスの先生であるルース・メイヤーを夕食に誘い、自宅に招いて、学校での娘の行状について話し合う。その最中、酒に酔ったバートンから電話がかかる。バートンはジュリアナの自宅におり、一緒にソマフリー研究所でノーラに会いにいこうと言い張る。フランクはバートンを宥めに出かけ、キャンディスをルースに預ける。フランクが不在の中、ルースはノーラがかけた電話に出る。ノーラはその声が自分の娘の教師のものであると悟り、フランクと不倫していると信じ込む。ノーラはルースを罵倒し、自分の家族の元から離れろと怒鳴りつける。その一方で、フランクはジュリアナの家に到着するが、バートンはジュリアナを殺した子供により殺害されていた。子供はフランクを殺そうとするも息絶える。

警察の検視により、その小人のような子供は解剖学的に奇妙な特徴を有していることが判明する。その子供には性器が無く、色盲であると見られ、生まれつき歯が無く、さらに、臍までもが存在しなかった。そのことから、普通の人間のような生まれではないと推定された。殺人の話が新聞に掲載されると、ラルガンは殺人事件とノーラへの治療との関係を不承不承認める。ラルガンはソマフリー研究所を閉鎖し、ノーラ以外の患者たちを追い出す。フランクはハートグを通じてソマフリー研究所の閉鎖について知らされる。

ソマフリー研究所を退去させられた患者の一人であるマイクは、ノーラがラグランの「女王蜂」であること、屋根裏部屋で異様な子供たちを世話していることをフランクに話す。キャンディスが学校へ向かうと、小人のような子供が2人現れて、ルースを襲撃して殺害する。2人の子供はキャンディスを連れてソマフリー研究所に戻る。フランクがキャンディスを追ってソマフリー研究所に到着したところ、ラグランはフランクに真実を伝える。小人のような子供たちはノーラへのサイコプラズミクス療法の過程で生まれた偶然の産物であり、ノーラの虐待を受けたことへの怒りがあまりにも強かったためにノーラが独りでに産み出した存在であるというのだ。その同腹の子供たちはノーラの怒りに反応して活動し、ノーラは子供たちの行動を全く把握していない。ラグランはこの怪物たちを管理するのはもはや危険すぎると判断し、思い切って子供たちの寝床に潜り込み、キャンディスの救出を試みる。フランクには子供たちを刺激しないためにノーラを平静に留めておくように指示する。

フランクはキャンディス救出のため、ノーラとよりを戻そうとしているふりをする。しかし、フランクはサイコプラズミクスによってノーラの体に生じた体外子宮から子供が産み出される様を目撃する。ノーラは自分が子供の体を舐めて綺麗にする様子を見たフランクの態度から嫌悪感を読み取る。それに呼応して、子供たちがラグランを殺害する。ノーラはキャンディスを失うくらいならば、いっそのこと殺してやると脅迫する。子供たちはキャンディスを追いかけ始め、キャンディスはクローゼットに身を隠す。子供たちはドアを押し破ってキャンディスに掴みかかろうとする。フランクは自暴自棄になってノーラを絞殺し、異形の子供たちも精神的繋がりのある母親の死によって全滅する。フランクは精神的なショックを受けたキャンディスを連れて、ソマフリー研究所から出発する。車に乗るキャンディスの腕には、ノーラの体にも現れたような、2つの小さな瘤が出来ていた。

キャスト

役名 俳優
ハル・ラグラン オリヴァー・リード
ノーラ・カーベス サマンサ・エッガー
フランク・カーベス アート・ヒンデル英語版
バートン・ケリー ヘンリー・ベックマン英語版
ジュリアナ・ケリー ナーラ・フィッツジェラルド
ルース・メイヤー スーザン・ホーガン英語版
キャンディス・カーベス シンディー・ヒンズ
マイク・トレラン ゲイリー・マッキーハン
捜査官 マイケル・マギー英語版
ジャン・ハートグ ロバート・A・シルバーマン英語版
弁護士 ラリー・ソルウェイ英語版
クリス ニコラス・キャンベル英語版

注釈

  1. ^ 『クレイマー、クレイマー』は1979年12月に劇場公開されたが、それは『ザ・ブルード』が公開された後のことである[5]。クローネンバーグ監督は『クレイマー、クレイマー』を自分なりに表現しようとして『ザ・ブルード』を製作したと述べているが[2]、クローネンバーグ監督がこの映画を見た可能性は低い[6]。1979年1月時点で『クレイマー、クレイマー』は撮影中だったが、『ザ・ブルード』も同時期に撮影中だった。エイヴリー・コーマンが書いた『クレイマー、クレイマー』の原作小説の方に言及していたのかもしれない。
  2. ^ 新聞によれば、映画が最初に公開されたのは週末の1979年6月1日のことだったという。その際はインディアナポリスで上映された[14]。その翌週にはロサンゼルスで上映された[15]

出典

  1. ^ Lee, Mike (1979年8月1日). “Horror good for you”. Ottawa Journal英語版 (Ottawa, Ontario): p. 39. https://www.newspapers.com/clip/33821345/the_ottawa_journal/ 
  2. ^ a b c d e f g h i j Botting, Josephine (2017年3月17日). “Why I love... The Brood”. British Film Institute. 2019年7月13日閲覧。
  3. ^ a b “The Dark Mind of David Cronenberg”. Vancouver Sun英語版 (Vancouver, British Columbia): p. 142. (1981年2月28日). https://www.newspapers.com/clip/33821353/the_vancouver_sun/ 
  4. ^ ザ・ブルード/怒りのメタファー”. allcinema. 2022年10月17日閲覧。
  5. ^ Canby, Vincent (1979年12月19日). “East Side Story”. The New York Times. 2019年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月26日閲覧。
  6. ^ “Dustin Hoffman hopes to return to New York Stage”. The Decatur Daily Review (Decatur, Illinois): p. 8. (1979年1月2日). https://www.newspapers.com/clip/33822316/the_decatur_daily_review/ 
  7. ^ a b c d e Eggar, Samantha; David, Pierre; Irwin, Mark; Board, John; Baker, Rick (2015). Birth Pains (Blu-ray documentary short). The Criterion Collection.
  8. ^ “Not a bargain evening”. The Gazette英語版 (Montreal, Quebec): p. 50. (1978年11月11日). https://www.newspapers.com/clip/33821645/the_gazette/ 
  9. ^ a b “Art Hindle filming in Toronto”. Ottawa Journal (Ottawa, Ontario): p. 41. (1978年12月5日). https://www.newspapers.com/clip/33821611/the_ottawa_journal/ 
  10. ^ Adilman, Sid (1978年11月15日). “Canada: Land of Big $ ?”. Windsor Star英語版 (Windsor, Ontario): p. 50. https://www.newspapers.com/clip/33821628/the_windsor_star/ 
  11. ^ Howard Shore”. IMDb. 2011年5月12日閲覧。
  12. ^ Collecting Life: An Interview with Samantha Eggar - July 2014”. The Terror Trap. 2015年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。Augsut 26, 2022閲覧。
  13. ^ Chris Rodley (ed.), Cronenberg on Cronenberg, Faber & Faber, 1997.
  14. ^ The Brood trade advertisement”. The Indianapolis News (Indianapolis, Indiana): p. 22. (1979年6月1日). https://www.newspapers.com/clip/33872027/the_indianapolis_news/ 
  15. ^ The Brood trade advertisement”. Los Angeles Times: p. 27. (1979年6月8日). https://www.newspapers.com/clip/33872079/the_los_angeles_times/ 
  16. ^ a b Palmer, Vaughn (1979年9月1日). “This movie is mean, foul and witless”. Vancouver Sun英語版 (Vancouver, British Columbia): p. 19. https://www.newspapers.com/clip/33821316/the_vancouver_sun/ 
  17. ^ The Brood”. Rotten Tomatoes. 2022年7月28日閲覧。
  18. ^ Variety, December 31, 1978.
  19. ^ Ebert, Roger (1979年6月5日). “The Brood”. Chicago Sun-Times. 2012年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月26日閲覧。
  20. ^ Thomas, Kevin (1979年6月8日). “Tumors Beget Dwarves in 'Brood'”. Los Angeles Times: p. 21 
  21. ^ Danny Peary, Cult Movies, Dell Publishing, New York 1981.
  22. ^ Robin Wood, An Introduction to the American Horror Film, in: Bill Nichols (ed.), Movies and Methods Volume II, University of California Press, 1985.
  23. ^ “Scary: Not all on list from horror genre”. The Daily Herald (Chicago, Illinois): p. 8. (2006年10月25日). https://www.newspapers.com/clip/33821465/the_daily_herald/ 
  24. ^ Greatest Scariest Movie Moments and Scenes”. Filmsite英語版. AMC Networks英語版. 2019年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月26日閲覧。
  25. ^ Barkan, Jonathan (2015年7月16日). “'The Brood' And 'Mulholland Dr.' Getting Criterion Editions”. Bloody Disgusting. 2019年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月26日閲覧。
  26. ^ a b McKnight, Brent (2015年11月17日). “Cronenberg's 'The Brood' Taps Into Some Fundamental, Primal Terror”. PopMatters. 2019年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月26日閲覧。
  27. ^ Starks, Richard (1979). Rabid. HarperCollins. ISBN 0583128521 
  28. ^ Zeitchik, Steven (2009年12月15日). “'Creature from the Black Lagoon' emerges”. Los Angeles Times. オリジナルの2012年7月10日時点におけるアーカイブ。. https://archive.today/20120710114305/http://herocomplex.latimes.com/2009/12/15/when-director-breck-eisner-parted-ways-with-the-remake-of-creature-from-the-black-lagoon-fans-of-the-1950s-camp-classic-wond/ 
  29. ^ Goldberg, Matt (2010年8月10日). “Breck Eisner Leaves The Brood and David Fincher Departs Black Hole”. Collider英語版. 2012年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月26日閲覧。
  30. ^ Creed 2007, pp. 47–50.
  31. ^ Creed 2007, p. 47.
  32. ^ Arnold 2013, p. 84.
  33. ^ a b Rickey, Carrie (2015年10月13日). “The Brood: Separation Trials”. The Criterion Collection. 2019年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月26日閲覧。


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