エリソミケス エリソミケスの概要

エリソミケス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/14 02:20 UTC 版)

エリソミケス
Ellisomyces anomalus
分類
: 菌界 Fungi
: ケカビ門 Mucoromycota
亜門 : ケカビ亜門 Mucoromycotina
: ケカビ目 Mucorales
: ケカビ科 Mucoraceae
: Ellisomyces
学名
Ellisomyces Benny & Benjamin 1975

本文参照

特徴

タイプ種である E. anomalus に即して記す。現時点では本属はこの種のみを含んでいる。

まず大まかな特徴として Benny & Benjamin(1975) で属の特徴として示されたものをあげる[1]。よく発達した菌糸体を形成し、胞子嚢柄は基質菌糸から出て立ち上がり、先端に向けて二叉、あるいは三又に分枝を繰り返す。最後の枝の先端には短い柄のある小胞子嚢を頂生、あるいは側生する。小胞子嚢には柱軸があり、複数の胞子を含む。またその壁は崩れない。胞子嚢胞子は球形から円柱形まで、表面は滑らか。接合胞子嚢は球形から亜球形でその壁は着色し、円錐形の突起に覆われる。支持柄はほぼ同型で対向する。

以下、より詳細に示す。

栄養体

腐生菌で通常の培地で培養が出来、菌糸体はよく発達する[2]。合成ムコール培地上、26℃での培養ではコロニーは10日で直径8.5cmに達し、菌糸は密生し、当初は白いがすぐに明るい灰緑色から暗い灰緑色に変化し、時間が経つと明るい緑灰色になる。

無性生殖

無性生殖は小胞子嚢の胞子嚢胞子により、大きい胞子嚢は形成しない[3]。胞子嚢柄は無色透明から明るい黄色で背丈は1mmほどまで、径は10-15μm前後あり、不規則に仮軸状に分枝し、時間が経つと隔壁を生じる。先端の分枝より下の部分では外壁は滑らかになっている。この柄は不規則に仮軸状分枝をしており、その先に短い枝が出て、その枝は4-5回にわたり二叉、あるいは三叉の分枝をする。これらの分枝は下から上に向かって次第に短いものとなっており、最下のものでは枝の長さは40-250μm、太さは3.5-8.5μm、最後のものでは長さ3.2-18μm、太さ3.2-4.5μmとなり、その先に、あるいは側面に1-7個の小胞子嚢をつける。小胞子嚢は短い柄があり、この柄は長さ2-4.5μm、径約1μmで、先細りの形になっており、表面は滑らか[4]。小胞子嚢は球形から亜球形で径8-13μm、表面は滑らかで無色。柱軸は亜球形からドーム型で滑らか、径2-5μm。小胞子嚢は柱軸と柄の一部を含むか、あるいは含まない形で切り離される。小胞子嚢には12個かそれ以下の胞子嚢胞子が含まれる。胞子嚢胞子は亜球形から卵形、角張った卵形、やや円柱に近い形のものまであり、3.2-9μm×2.5-6.5μmで、まとまると無色から灰色を呈する。また内部は顆粒状で小さな油滴が含まれる。

また厚膜胞子をよく作り、それらは基質内の菌糸や露出した菌糸に形成される。膜は薄く、形は球形から卵形、円筒形などで、単独に、あるいは鎖状に連なって、菌糸の先端に頂生するか、介在的に形成される。その大きさは非常に変異が大きいが、大部分は4-20μm×4-30μm程度である。

有性生殖

有性生殖は接合胞子嚢の形成による[5]。自家和合性であり、単独株でよく接合胞子嚢を形成する。接合胞子嚢は球形から亜球形で、径は表面の突起を含んで40-55μmほど。表面の壁は赤っぽい褐色で透明になっており、凹凸の多い突起に覆われており、この突起は高さ6μmにまで達する。支持柄は透明から淡い黄色になっており、長さ5-20μm、太さ11-17μm。

分布と生育環境

分布域は北アメリカの、それもカリフォルニア地方に限定されているが、この地域内では広く分布しているものであり、Benny & Benjamin(1975)は本種の研究に用いられた株を相当数示している[6]

糞や土壌、樹皮など様々な基質から分離されている[7]が、主として糞、との声もある[8]。糞としてはネズミの糞からの分離数が多いが、トカゲの糞から分離された例もある[6]。なお、最新のものではその生育環境としてネズミとトカゲの糞、と限定的に記されている[9]


  1. ^ Benny & Benjamin(1975),p.330
  2. ^ 以下、Benny & Benjamin(1975),p.330
  3. ^ 以下、Benny & Benjamin(1975)p.330-332
  4. ^ ただし図では表面に顆粒が並んでいるようになっている。
  5. ^ 以下、Benny & Benjamin(1975),p.332
  6. ^ a b Benny & Benjamin(1975),p.332
  7. ^ a b Benny & Benjamin(1975),p.334
  8. ^ Benny(2005)[]2020/02/15閲覧
  9. ^ Wagner et al.(2020),p.84
  10. ^ この段はBenny & Benjamin(1975),p.332-333
  11. ^ Benny & Benjamin(1975),p.314-317
  12. ^ Benny(2005)[1]2020/02/15閲覧
  13. ^ Benny & Benjamin(1975),p.(331-332
  14. ^ Benny & Benjamin(1975)p.330
  15. ^ Benny & Benjamin(1975),p.303
  16. ^ Hoffmann et al.(2013)p.69
  17. ^ 以下、Wagner et al.(2020)


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