ひねり飛車 概要

ひねり飛車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/24 08:23 UTC 版)

概要

加藤も著書として執筆した『将棋戦法大事典』(大修館書店、1985年)によると、現在知られるひねり飛車は、純粋に戦後の新戦法である「縦歩取り」をもとに角田三男が開発した。戦前期に修業時代を送り伝統的な将棋観の支配下にあった角田も「終戦直後にある後援者がお好み対局をしてくれまして、まあ気楽な将棋だったので、思いつきでやってみたら案外に成功したというわけです」「一歩を持って石田流になれば指せるという発想ですが、若い人にあまり接してほしくないですな。矢倉あたりをじっくり指してからにしてほしいですな」と語り、自らの新戦法を異端的なものとみている。▲7六飛で石田流に近似するが、その石田流自体が当時は異端的とされていた。

長い間戦法として認められず、田舎将棋と蔑まれていたが、升田幸三らが定跡を整理して公式戦で成果を挙げたため、一般に認知されるようになった。

加藤一二三によればこの戦法の利点は下記のとおりである[6]

  • 普通の振り飛車がまず受けに回るのに比べ、守りの負担がなく強力な攻めを狙える。
  • 自分だけが歩を手持ちにでき、相手が歩を手にしない。
  • 先手ひねり飛車は飛車角銀桂歩で急戦を狙うことができ、玉の守りも短手数で連絡の良い陣形を構築できる。
  • 対する後手は△7二金を強要され玉の守りが薄くなる。
  • 先手は飛車角を捨てる強攻策も取ることが可能。

観戦記者の横田稔もひねり飛車の利点をあげており、

  • 攻めの理想形とされる石田流に無条件で組める

ことも上げている[7]。▲3六飛と歩越しでは威力に乏しいから早晚動くが、手損を嫌う正統正説的な将棋観では発想しにくく、なによりも見かけないことが嫌われたに違いないとしており、自由なあるいは革新の雰囲気がなければ、当人が数局試しただけで終わってとても多くの追随者は獲得できなかったとしているが、多くの追随者の中で後述の丸田祐三による丸田流によって、先手方のみ二歩持ちの作戦が可能になった。

数々の利点から一時期、将棋に先手必勝法があるとすれば、これではないかと、一部に考えられたほどの革新だった。

プロ棋士の人気戦法第三位になったこともある。[要出典]

主な指し手としては、先手が居飛車で飛車道を開けた後、相掛かりの形から歩を交換し、後手の△3四歩を狙って、2六にいた浮き飛車を3六へ寄る(もちろん後手は取られないようにする)。この後この飛車を左翼へと転換する(これが「ひねり飛車」の由来)。△3四歩を狙った手が損になるような気がするが、△3四歩を守るには△3三とすることになる(後手は悪形にされて固い囲いができなくなるので、2010年代後半からは△8四飛も多用されるようになってきた。これまでは飛車の働きが不自由になるので指されなかった)。つまり、相手の左金を三段目に釣り上げて悪形にするのが▲3六飛の第一の狙いである。またこのときに後手の角道が止まるため、次に先手が▲7六歩としたときに後手は△8六歩と突かないと、▲7七角とされて先手だけ飛車先交換の得になるとされていた、もしくは▲6八銀~7七銀~7五歩~7六銀~7七桂~▲8五銀と後手飛車先の歩をかすめとる順が指されていた。

以降は、△8六歩ならば▲同歩△同飛に▲7五歩と、後手の飛車に交換を迫る、あるいは▲7七桂として、次に▲8五歩の生け捕りを狙う、後手が飛車先交換をしてこない際は先手から▲7五歩~9七角~8六歩で、以下△8六同歩▲同飛とぶつけて飛車交換を狙うのが第二の狙い。このとき後手が飛車先交換をしない作戦は、先手から▲8六歩からの交換のほうが、手損にならないからである。

後手陣は先手陣に比べて飛車の打ち込みに弱いため、通常は飛車交換を避けるが、そこから先手ひねり飛車側の作戦は、飛車を圧迫して急攻の狙いのある▲8六飛型、石田流の形にしてじっくりした形にする▲7六飛型に大別される[8]


  1. ^ Kawasaki, Tomohide (2013). HIDETCHI Japanese-English SHOGI Dictionary. Nekomado. p. 84. ISBN 9784905225089 
  2. ^ 末席幹事 (2018年12月7日). “ひねり飛車の歴史”. 将棋ペンクラブログ. 2019年9月14日閲覧。
  3. ^ 羽生善治『羽生の頭脳』第8巻「最新のヒネリ飛車」など。
  4. ^ 加藤治郎『復刻版 将棋の公式』東京書店、2001。原著は1967年刊行
  5. ^ 例を挙げれば近年の定跡書のスタンダード、羽生善治の『羽生の頭脳』第8巻「最新のヒネリ飛車」では、相掛かり腰掛銀や3七銀戦法と同じ巻で相掛かり戦法の一つとしてひねり飛車を扱っている。
  6. ^ 加藤一二三『一二三の玉手箱』第二章「加藤一二三のエッセイ」攻めと守りP142。光文社知恵の森文庫、2019
  7. ^ 塚田泰明監修、横田稔著『超急戦!殺しのテクニック』第一章相居飛車編P58。高橋書店、1988
  8. ^ 加藤一二三『一二三の玉手箱』第二章「加藤一二三のエッセイ 」攻めと守りP143。光文社知恵の森文庫、2019。加藤によれば古くは飛車交換が主流だったが、相手が応じなくなり▲7五歩石田流型が増えたという。深浦康市『これが最前線だ!』河出書房新社1999では、▲8六飛型もよくあるが▲7五歩はより無難な指し方だとしている。
  9. ^ 加藤一二三『一二三の玉手箱』第二章「加藤一二三のエッセイ」攻めと守りP143。光文社知恵の森文庫、2019。





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