調巻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/14 04:26 UTC 版)
賢愚経は一般に13巻69品の三本(宋版本・元版本・明版本)と13巻62品の高麗版本が知られる。この7品の差は麗本の散佚だが、単純に7品少ないだけでなく、品の配列順序(品次)や巻構成(調巻)にも差が見受けられる。また一方で、かつては15巻本、16巻本、17巻本も存在したらしく、経録等にそういった記載がある。そこで、この大聖武(東大寺本)の調巻品次が問題となる。 東大寺本は「優波毬提品第六十三」までを含む東大寺蔵巻十五が伝存すること、また三井文庫所蔵手鑑「たかまつ」所載断簡が「尼提度縁品第六十八」の品題を有することを合わせて、16巻以上かつ68品以上(おそらく69品)の本であることは間違いない。また東大寺本で品題が現存し品番号が判明するものについて、三本や麗本との異同が大きく、調巻品次の異なる別系統の本であると想定される。 福井利吉郎は「東大寺本賢愚経の研究」においてこの問題を取り上げ、「内容の類同に着眼し、分量の均衡を考へ、また他の異本の例を参照して」16巻本であると推定した。また樋口秀雄は、正倉院文書に見える賢愚経が17巻本または17巻本の破本あるいは不完と見做しうるものであることなどを理由に17巻本であろうという。 興津香織は、東大寺本と七寺・金剛寺・西方寺などの所蔵する平安末期から鎌倉時代に写された賢愚経(17巻本)数本とを比較することで東大寺本の調巻品次を推定するという手法をとった。結果、福井論文が挙げる東大寺本の品名、品次、品番号、調巻がこれら平安鎌倉古写経本によく一致すること、またその本文も三本や麗本よりも近いことが判明、東大寺本はこれら平安鎌倉古写経本と同系統の本、すなわち17巻本である可能性が高まっている。
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