胞子嚢の発射について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/18 07:51 UTC 版)
「ミズタマカビ」の記事における「胞子嚢の発射について」の解説
普通のケカビ類では、胞子嚢はその壁が溶けるか、あるいは裂けることで内部の胞子が外に出るしくみである。しかし、ミズタマカビの場合、胞子嚢壁は溶けも裂けもしない。胞子嚢と胞子のう柄の境目から剥がれて、中に胞子嚢胞子を入れたままで飛び出す。ぶつかった場所に、胞子嚢壁に胞子が入ったままの形で付着しているのが見られる。シャーレで培養すれば、上蓋の裏面に付着するので、これを分離の材料とすることもできる。 胞子嚢がはじき飛ばされるのは、胞子のうの下の膨らみが破裂するためである。これは、胞子嚢が光の方向を向くので、胞子のうの下のふくらみがレンズの作用をして、この部分を加熱させるためであるともいわれる。 胞子のうは、時には2mも飛ぶことがあるという。この性質は、糞の上から胞子を光の方向に飛ばすことで、周囲の草の葉に胞子を付着させるために発達したと考えられている。つまり、草食動物に胞子嚢を食べさせることで、胞子を糞の中に運びこませるための適応である。胞子は放出直後には発芽しやすいが、その後発芽しにくくなる。草食動物の消化管を通って後に発芽するようになると思われる。それの代用として、アルカリ性の溶液で処理すると発芽しやすくなるともいわれる。 この菌は栄養的にも糞での生活に適応しており、糞に含まれる窒素化合物などを必要とする。一般の土壌をアンモニアや糞抽出液で処理することで発生させられるとの実験もある。 なお、胞子を上の方に飛ばす性質は他の糞生菌にも見られ、小型の子のう菌などの胞子も往々にしてシャーレの上蓋裏に付着する。ただし、これほど遠くへ飛ばすものはごく少ない。
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