妊娠中の母親が飲酒すると、アルコール(エタノール)やその代謝産物が胎盤を通過して胎児の血中に移行し、胎児に発育遅滞や器官形成不全などを生じることがあります。自然流産につながることもありますが、出生に至った場合、出生前後の成長遅滞、中枢神経系の障害と、顔面の形成不全の3項目のそろうものが胎児性アルコール症候群(FAS)、それに軽症のものを含めて胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)と呼びます。この胎児への影響は学童期以降にも及び、学習、衝動コントロール、対人関係などの障害となっていきます。FASの発生頻度は、わが国では1990年の全国調査で0.1人以下/1,000人とされましたが、若年女性の飲酒量増加に伴い今後増加する可能性があります。飲酒形態では、FASの診断基準を満たす症例の母親は、多くの場合妊娠中継続して大量に飲酒しています。しかし、欧米でFASの危険はないとされる飲酒量「1日1ドリンク、週に7ドリンク以下」(1ドリンク:純アルコール10g、ビール250ml程度)は、体格の小さい日本人には適応すべきではありません。妊娠と気付く前の飲酒も、その時期の胎児の発育に影響し、それが大量飲酒であれば、FASや流産の危険があります。少量の飲酒でFASが生じる可能性は低いとはいえ、妊娠中の日本人女性における飲酒の安全域は証明されていないため、妊娠中は禁酒すべきです。
たいじせい‐アルコールしょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【胎児性アルコール症候群】
胎児性アルコール症候群
胎児性アルコール症候群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/02 00:50 UTC 版)
胎児性アルコール症候群(たいじせいアルコールしょうこうぐん、英Fetal alcohol syndrome:FAS)とは、妊娠中の母親の習慣的なアルコール摂取によって生じていると考えられている先天性疾患の一つ[1]。神経発達症の一種である。妊婦のアルコール摂取量とその摂取頻度により、生まれてくる子供に軽度から重度に及ぶあらゆる知能障害が顕れることがある[2]。
- ^ a b c d e f g h i j k l m Fetal Alcohol Spectrum Disorders (FASDs) (Report). CDC. 16 April 2015.
- ^ a b c d e Vital Signs -Alcohol and Pregnancy (Report). CDC. 2 February 2016.
- ^ a b c d e B.J.Kaplan; V.A.Sadock『カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開』(3版)メディカルサイエンスインターナショナル、2016年5月31日、Chapt.31.1。ISBN 978-4895928526。
- ^ 妊孕性(妊娠する力)に影響を及ぼす“もの”や“こと”妊娠しやすいカラダづくり
(リンク先で使用されている引用元の参考文献:「Does moderate alcohol consumption affect fertility? Follow-up study among couples planning first pregnancy」 BMJ,vol.317(1998):505-10 、「Natural Solutions to Infertility」Marilyn Glenvillie, Ph.D) - ^ 妊婦のアルコール飲料の摂取による胎児への影響 (PDF) 食品安全委員会
- 1 胎児性アルコール症候群とは
- 2 胎児性アルコール症候群の概要
- 3 予防
- 4 歴史
胎児性アルコール症候群
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「プロテインキナーゼR」の記事における「胎児性アルコール症候群」の解説
PKRは、胎児性アルコール症候群と関連する、エタノール誘導性のタンパク質合成阻害とアポトーシスにも関与している。
※この「胎児性アルコール症候群」の解説は、「プロテインキナーゼR」の解説の一部です。
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