競馬における去勢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/22 19:20 UTC 版)
競馬界においては、気性を穏やかにし、競走において扱いやすくするため、繁殖的価値の認められない馬について育成段階、または競走馬として出走した後に去勢を行う。去勢し、騸馬となると、種牡馬になることができなくなる。そのため種牡馬や繁殖牝馬の選定競走として定められている競馬のクラシック競走などには出走できない取り決めをしている国も多い。牡馬は牝馬と異なり1年間に多頭数との交配が可能なため、種牡馬の需要頭数は競走馬に比べて少なく、種牡馬となる競走馬は全体の1%未満である。これにより、種牡馬選定期間が過ぎた4歳以上の牡馬は多くの国で去勢されるのが一般的である(G1競走勝ち馬や、凱旋門賞3着馬が去勢された例もある)。特に障害競走に出走する競走馬は競走の危険を減らす目的もあり、去勢が行われない馬は極めて稀であるが、日本においては繁殖的価値の有無にかかわらず、障害競走に出走する競走馬も含め、現役競走馬に対して去勢を行うことは少なく、気性難や馬っ気(発情)などでレースや調教などに支障が出るような牡馬への「最終手段」として行われることが多い。 中央競馬のGI競走では、牝馬限定およびクラシック5競走を含む2〜3歳限定の全てに出走できない制限(朝日杯フューチュリティステークスは2004年以降)がある。これは、優秀な種牡馬・繁殖牝馬を選定するための審査という目的もあるためである。しかしながら、クラシックのトライアル競走では騸馬の出走を認めているものも存在する。一方、馬齢・性別の制限がない競走には出走できる。 海外では、競走馬としてデビュー前から去勢を施すことも一般的に行われている。特にアメリカでは実績のある騸馬が多数存在しており、20世紀のアメリカ名馬100選のうち実に11頭が騸馬である。 また、馬産の行われていない香港、シンガポールの牡馬の競走馬はほぼ全てが去勢され騸馬になっている。これらの国では主にオーストラリア、ニュージーランドから競走馬を輸入し、一部はヨーロッパから現役競走馬をトレードで獲得している。そのオーストラリア、ニュージーランドは馬産国でありながら、一部の良血馬以外の大部分の牡馬は去勢されるという、他の国々にはない特色を持っている。 なお、種牡馬を引退し功労馬として余生を過ごすことになった牡馬は、余程のことがない限り去勢される。現役競走馬時代・種牡馬時代共に優秀な成績を収めたサクラユタカオーやタイキシャトルも去勢されている。
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