法感情
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/30 02:46 UTC 版)
「ヘルマン・シュミッツ」の記事における「法感情」の解説
シュミッツにおいて、正(Recht)と不正(Unrecht)は、「法感情(Rechtsgefühl)」に基づく。従来、正不正や法を基礎づけるのは、理性や知性であって、感情ではなかった。それは感情が個人的で不安定で、普遍性に欠け、正不正や法のように社会性と普遍性が求められるものには不向きだと考えられたからである。しかし、シュミッツの感情理論は、そうした難点を克服する。彼によれば、感情は空間的に広がり、集団で共有される客観的なものであり、その安定度も普遍性も、実際には思考や理知に劣るわけではない。しかも感情は、ただ客観的なだけではなく、個々人を捉えることで、主観的事実の源にもなる。そうなることで初めて、正不正は、集団の成員にとってと同時に、個々人にとって切実な問題となる。また法感情論は、私たちの実際の経験にも即している。理性的に正不正を基礎づける場合、自由や平等、幸福などの究極的価値が原理とされ、そこから説明されるが、私たちは通常、そのような回りくどい難解なプロセスを経ることなく、正不正を判断している。正不正や法を感情によって基礎づけるのは、現象学的な正当性をもっているのである。シュミッツによれば、主要な法感情には、不正なことが起きたことを示す「憤怒(Zorn)」と、自分が不正な状態に置かれていることを示す「羞恥(Scham)」がある。そのどちらに比重を置くかによって、社会や時代ごとの道徳意識や法体系の違いが理解できる。シュミッツの法感情論は、たんに正不正のみならず、名誉やその毀損、道徳や倫理、規範一般、復讐、犯罪と刑罰など、きわめて多様な事象を包括しており、彼の身体と感情の現象学の実践的応用として注目に値する。
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