機能獲得
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 09:57 UTC 版)
「シグナル伝達兼転写活性化因子1」の記事における「機能獲得」の解説
機能獲得変異は慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMC)の患者で最初に発見された。この疾病は、カンジダ属細菌、主にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)による皮膚、口腔や性器の粘膜、及び爪における感染症であり、持続感染症の症状を特徴とする。CMCは原発性免疫不全症候群に起因することがよくあり、CMCの患者は、主に黄色ブドウ球菌による細菌感染症及び呼吸器系や皮膚の感染症を併発することがよく見られる。また、主にヘルペスウイルス科ウイルスによる、皮膚に影響を与えるウイルス感染症が見られることもある。また、CMCは、高免疫グロブリンE症候群(hyper-IgE)および自己免疫性多腺性自己免疫症候群I型の患者にもよく見られる症状として報告されている。これらの自己免疫疾患は、 T細胞が欠損している場合に非常に一般的である。CMC患者において、T細胞を産生するインターロイキン-17A(IL-17A)のレベルが低いことが確認されたため、IL-17Aの役割が明らかとなった。T細胞欠陥による他の一般的な症状には、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)又は他の環境細菌によって引き起こされるマイコバクテリア感染症、1型糖尿病、血球減少症、胸腺の退行、全身性エリテマトーデスがある。 多くの遺伝学的手法により、ヘテロ接合性のSTAT1の機能獲得変異はCMCの症例の半分以上において原因であったことが発見された。この変異は、コイルドコイルドメイン、DNA結合ドメイン、N末端ドメインまたはSH2ドメインの欠陥によって引き起こされる。この欠陥は核内での脱リン酸化を不可能なものとし、リン酸化を増加させる。これらのプロセスは、インターフェロンα、β、γまたはインターロイキン-27などのサイトカインに依存する。また上記のように、IL-17Aの低レベル化も観察されており、免疫応答のTh17細胞極性化が損なわれた。 STAT1機能獲得変異を持つCMC患者には、フルコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾールなどのアゾール系抗真菌薬による治療がほとんどあるいはまったく効果がない。この患者は、一般的なウイルス及び細菌感染症に加えて、自己免疫疾患または癌腫さえも発症する。多様な症状や治療抵抗性があるため、治療法を見つける過程は非常に複雑なものとなる。治療法の選択肢として、ルキソリチニブなどのJAK / STAT経路の阻害剤が検討されている。
※この「機能獲得」の解説は、「シグナル伝達兼転写活性化因子1」の解説の一部です。
「機能獲得」を含む「シグナル伝達兼転写活性化因子1」の記事については、「シグナル伝達兼転写活性化因子1」の概要を参照ください。
- 機能獲得のページへのリンク