序列競争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/06 22:40 UTC 版)
元来、バラモンと不可触民の両極端をのぞけば、各ジャーティ間の序列をきめる絶対的な基準があったわけではなく、あくまでも相対的なものである。したがって、序列の近接するジャーティ相互では、その上下をしぶしぶ認め合っているケースも少なくない。そこでは、相手よりも序列の順位をあげようと機会をうかがう姿勢が顕著にみられる。イギリスからの独立運動に際してはヴァルナやジャーティの枠を超えた連帯があり、独立後のインド国勢調査では、指定された不可触民とトライブを除いて人口統計はとられなくなり、ジャーティの位階についても言及されなくなった。序列を社会的に表明する環境にも変化が生じたのであり、ジャーティ間の序列競争がみられるようになってきた。 あるジャーティが序列における順位を向上させるためには、経済力の上昇や政治的地位の向上だけでは不充分であり、序列の頂点を占めると自他ともにみとめるバラモンの生活様式を模倣して、これまでの生活をより浄性の高い方向に変更することが求められる。具体的には、より頻繁に祭式をバラモンに執り行ってもらうこと、肉食をやめて菜食に変えること、禁酒などである。こうしたかたちでの序列上昇をめざす動きは「サンスクリット化」と呼ばれている。これは、一人ひとりや個々の家族がめざしても効果がなく、村の同じジャーティに属する全家族、全構成員が実行できなければ地位の向上にはつながらない。上昇の単位は個人ではなく、あくまでもジャーティなのである。「サンスクリット化」の一方では、近年の経済発展にともなう職業構造の変化によって経済力も生活様式も低落し、最下層への編入が余儀なくされつつあるジャーティもみられる。
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