川辺川ダムとは? わかりやすく解説

川辺川ダム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/20 14:05 UTC 版)

川辺川ダム(かわべがわダム)は、熊本県球磨郡相良村一級河川球磨川水系川辺川に計画されているダムである[1]。計画策定から50年余りを経ても完成に至っていないため、群馬県八ッ場ダム吾妻川2020年4月1日運用開始)と双璧を成す長期化したダム事業の代表格として知られていた。


注記

  1. ^ 河川改修計画において定められる、計画で防御できる限界の洪水流量。概ね過去最悪の洪水を基準に定められる。
  2. ^ 1939年(昭和14年)に発足した戦時体制を維持するため国家による電力管理を行う目的で設立された特殊法人。戦後1948年(昭和23年)に過度経済力集中排除法の指定を受け1951年(昭和26年)の電力事業再編令で九つの電力会社に分割・民営化された。九州電力の前身。
  3. ^ 球磨川の通常における流量は平均で毎秒86.73トンであるので、この豪雨では通常の約85倍という水量が押し寄せたことになる。
  4. ^ 球磨川本流は球磨郡湯前町から河口までの区間が国土交通省直轄管理区間である。川辺川は川辺川ダム湛水予定区域と球磨川合流点付近が直轄管理区間となる。その他は概ね熊本県が管理する指定区間である。
  5. ^ 一ツ瀬ダムには杉安ダム、鶴田ダムには川内川第二ダムという逆調整池がそれぞれ直下流に建設されている。
  6. ^ それ以前は「東の八ッ場、西の大滝」と呼ばれ、奈良県大滝ダム紀の川)が代名詞にされていたが、大滝ダムは2009年(平成21年)の本格運用に向けて現在暫定的な運用を行っており、その代わりに川辺川ダムが選ばれている。
  7. ^ 川辺川ダムの他青森県浅瀬石川ダム(浅瀬石川)、岩手県の御所ダム雫石川)、栃木県川治ダム鬼怒川)、石川県手取川ダム手取川)、奈良県の大滝ダム(紀の川)、熊本県の竜門ダム(迫間川)と茨城県霞ヶ浦。川辺川ダム以外は何れも既に完成(大滝ダムは一部運用)している。
  8. ^ 現在でも五木村上荒地~五箇荘間、及び五箇荘以遠は未整備である。
  9. ^ 委員長の志位和夫が自らダム予定地を視察するなど、特に力を入れている[38]
  10. ^ その大部分は水没する五木村・相良村への移転補償費、代替地造成や付け替え道路の建設費用に充てられている。ダム自体の工費は本体工事が行われていないので少ない。
  11. ^ 河川の原状復帰や洪積平野(日本では大多数の平野がこれにあたる)から住居を撤去させて遊水池化することによる治水対策。これによりテムズ川ドナウ川では1,000年から10,000年に一度の洪水に対応できる治水整備が完成した。
  12. ^ ビアードの発言およびアメリカのダム撤去詳細についてはダム建設の是非#米国のダム事情を参照。
  13. ^ 2008年6月4日に蒲島熊本県知事が「撤去に伴う費用が増大し、費用対効果に疑問がある」として撤去を凍結する方針に転換したが、2010年の水利権失効を契機としてダム撤去方針に再転換し、2018年に撤去が完了した。
  14. ^ この条件に照らし合わせた場合、日本でも200箇所以上が撤去されている。
  15. ^ 規模や水没戸数が川辺川ダムと同等以上で、施工時期が同時期であった石川県の手取川ダムは、川辺川ダムと同時期の1967年(昭和42年)に計画が発表されたが、完成したのは1979年(昭和54年)である。電源開発は初代総裁の高碕達之助以来、補償交渉には特に住民の意思を尊重する対策を採っていた。
  16. ^ 矢上の辞職に伴う相良村長選挙ではダム事業に「保留」の立場を示す徳田正臣前町議が「ダム反対」「ダム推進」の2候補を破って当選している
  17. ^ なお、この「失敗百選」はこうした公共事業の失敗に限らず、日本航空123便墜落事故のような大規模事故や三菱リコール隠しのような企業の不祥事も選ばれている。
  18. ^ 委員会のアドバイザーを務めたオランダのディック・デ・ブラウンは、ダム事業を含めた川辺川の治水計画について、自身のレポート での結論として、川辺川(球磨川水系)の治水対策として「ダムを当初の計画通りに建設」するか「ダムを取りやめ人吉地域で河川の大幅拡幅と河床の掘り下げ」を行うかの二者択一であるとし、ダムによる治水の有用性を指摘している。

出典

  1. ^ 山下真 (2020年7月5日). “球磨川は急峻な山縫う暴れ川 1965年には家屋1281戸が損壊・流失”. 西日本新聞ニュース (西日本新聞社). https://www.nishinippon.co.jp/item/n/623138/ 2020年7月6日閲覧。 
  2. ^ 皆様のご意見をお聞かせください 国土交通省 九州地方整備局 八代河川国道事務所、2022年4月4日
  3. ^ 皆様のご意見をお聞かせください~球磨川水系河川整備計画(原案)の公表~ 九州地方整備局・熊本県、2022年4月4日
  4. ^ 球磨川水系河川整備計画の策定 九州地方整備局・熊本県、2022年8月9日
  5. ^ 球磨川水系河川整備計画(国管理区間) 国土交通省 九州地方整備局、2022年8月
  6. ^ 球磨川水系河川整備計画(国管理区間) 国土交通省 九州地方整備局、p.107、2022年8月
  7. ^ 川辺川ダム砂防事務所ホームページ→CONTENTSの「川辺川ダム」→事業の進捗状況【PDF】平成30年3月末時点
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  10. ^ 調査速報
  11. ^ 多良木観測所の位置
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  13. ^ 京都大学防災研究所 (7 July 2020). 2020年7月球磨川水害速報(市房ダムに着目して)第2報 (pdf) (Report). 2020年7月13日閲覧
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  16. ^ “熊本県知事「ダムのあり方も考える」 球磨川の治水対策巡り発言”. 『西日本新聞』. (2020年7月6日). https://www.nishinippon.co.jp/item/n/623617/ 2020年7月8日閲覧。 
  17. ^ “川辺川ダム議論再燃も 熊本県、球磨川治水で検証対象”. 『熊本日日新聞』. (2020年7月8日). https://this.kiji.is/653475971650962529 2020年7月15日閲覧。 
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  19. ^ 川辺川ダムが建設されていたら災害は防げたか~九州豪雨”. ニッポン放送NEWS ONLINE (2020年7月8日). 2020年7月15日閲覧。
  20. ^ 九州水害で露わになった民主党政権「ダム建設中止」の大きすぎる代償”. 現代デジタル (2020年7月13日). 2020年7月15日閲覧。
  21. ^ 橋下徹「知事を経験したからわかる熊本・蒲島知事の後悔」”. プレジデント・オンライン (2020年7月8日). 2020年7月15日閲覧。
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  23. ^ “ダム計画、11年前に中止 熊本・球磨川水系、県など反対―議論再燃可能性も”. 時事通信. (2020年7月12日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071100391&g=soc 220-07-15閲覧。 
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  26. ^ 京都大学防災研究所 角 哲也教授 (2021年5月). “川辺川ダムに関する考え方(異常洪水時防災操作に対する正しい理解のために)”. 京都大学. http://ecohyd.dpri.kyoto-u.ac.jp/content/files/news/%E6%AF%8E%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E%E8%A8%98%E4%BA%8B%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E8%A3%9C%E8%B6%B3%E8%AA%AC%E6%98%8E.pdf 
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  28. ^ 説明資料(3/3)6.治水対策について(川辺川ダムにより想定される効果)、78ページ、八代河川国道事務所、2020年8月25日
  29. ^ 熊本)川辺川ダムの「効果」めぐり国と反対派が見解『朝日新聞』2020年8月26日
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  35. ^ 川辺川ダム | 水源連”. 水源連(水源開発問題全国連絡会). 2020年7月6日閲覧。
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  37. ^ 清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会 | 資料集|ダムによらない治水を検討する場”. tewatasukai.com. 2020年7月6日閲覧。
  38. ^ 川辺川ダム 知事反対/国、中止迫られる/熊本”. 日本共産党しんぶん赤旗. 2020年7月6日閲覧。
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  45. ^ 川辺川ダム、人吉市長が撤回要求「市民の多く否定的」『読売新聞』2008年9月2日付
  46. ^ 川辺川ダム事業に関する知事の臨時記者会見要旨”. 2008年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月7日閲覧。
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  48. ^ 人吉市長・相良村長の川辺川ダム反対表明、流域自治体に波紋」『読売新聞』2008年9月5日付
  49. ^ 川辺川ダム、国交省が見直し方針…首相も「地元を尊重」 - 読売新聞2008年9月11日付電子版
  50. ^ 川辺川、八ツ場ダムの建設中止=首相、国交相が明言時事通信(2009年9月17日)
  51. ^ 八ッ場・川辺川ダム建設中止、首相が表明」『読売新聞』2009年9月17日付
  52. ^ ダム中止に伴う補償法案見送り 五木村が国交省に抗議」『熊本日日新聞』2011年2月5日付電子版
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  56. ^ 球磨川治水対策協議会パブリックコメントに関する抗議文 (PDF) - 子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会、清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会 2017年1月20日
  57. ^ 一級(大臣管理区間)河川整備計画策定状況(令和2年1月1日現在)”. 国土交通省水管理・国土保全局. 2020年7月9日閲覧。
  58. ^ 「検討する場」で積み上げた対策の進捗状況 (PDF) - 第9回 球磨川治水対策協議会説明資料


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