展開態勢の見直し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/20 09:14 UTC 版)
米軍の展開態勢見直し(Global Posture Review, GPR)は、海外駐留米軍の体制を根本から見直すもので、QDR2001において宣言されたのち、2003年11月より正式に開始された。 この時点で、アメリカ軍の前方展開体制は、基本的には冷戦期のものの延長線上にあり、西欧と北東アジアに集中していた。しかし、この体制は、下記のような問題点を抱えていた。 兵力の偏在 アメリカ軍の前方展開部隊は西欧と北東アジアに集中しており、紛争が多発する不安定の弧地域(アフリカやバルカン半島から中東を通って東南アジア、朝鮮半島に至る帯状地域)には、十分な部隊を展開していなかった。 駐留国との関係 冷戦期には共産主義陣営への対抗として米軍が国内に駐留することに価値を見出した国々も、冷戦終結後にはそういった要素が失われて、駐留への抵抗が大きくなった。 経済的背景 海外部隊の維持費が高いこともGPRの背景にある。海外基地の中には相応の費用負担を受け入れる国もあるが、一般的には維持運用するのに巨額の費用が掛かる。 また逆に、海外の米軍が国内基地に戻ることは米国の地域経済に寄与するために、地元国民とその選出議員達が強く望むことである。 攻撃に対する脆弱性 米軍の海外基地そのものに対する本格的なテロ攻撃はまだ起きていないが、イエメンのアデン港で起きた米艦コール襲撃事件や続発する米大使館へのテロ攻撃から見て、海外基地も防備を固める必要に迫られている。 また、北朝鮮や中国、イランも弾道ミサイルによる攻撃を行なう潜在的な脅威となり、発射国に近ければ短時間で飛来するので迎撃手段が限られるか迎撃手段が無いことや、射程が短く誘導精度が悪くても実用となることなど不利な要素が多くなる。 米軍再編の基本理念のもとで、これらの問題を解決するものとして策定されたのがGPRである。2004年6月のアメリカ合衆国下院公聴会における国防副長官の答弁や、2005年3月に発表された国家防衛戦略(NSS)において、下記の5点がGPRの要点として述べられている。 同盟国との関係強化。協力関係・相互運用性を強化するとともに、駐留米軍部隊が軋轢を生んでいる場合は、これを軽減する。 不測事態に対処しうる柔軟性の獲得。 即応展開能力の獲得。 戦略の対象範囲の拡張(地域ごとから汎地球レベルへ) 兵力ベースから能力ベースへの移行。
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