実質的法治主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 14:24 UTC 版)
形式的な法によって形式的に国家活動を縛るというだけでなく、法の内容や適用においても正義や合理性を要求する場合、これを実質的法治主義と呼ぶことができる。この意味での法治主義は法の支配とほぼ同じ意味を持つ。 大戦後のドイツでは、ナチス時代の反省に基づいて、法の内容が正当であるか否かを憲法に照らして確かめていく違憲審査制が採用されるようになった。ゆえに、戦後ドイツは実質的法治主義をとる国家だと言える。 形式的法治主義の観点からすれば、現代の国家のほとんどは法治国家である。たとえ国王や君主や権力者(独裁者)が統治する国家であっても、その権力が法律によって制限されている場合は、法治国家に当てはまる。また、一部の権力者が自由に法律を制定したり改正できる国家も、形式的に政府や権力者が法律に拘束されているならば、法治国家の定義に当てはまる(極端な例として全権委任法案を議会で通過させ、これによって独裁権力を合法的に得たアドルフ・ヒトラーがいる)。ただし、国王や君主の権力が法律に一切拘束されない近世の絶対君主制や、近現代においても権力者が自国の法律を無視して権力を行使している場合は、この定義には当てはまらない。 一方、実質的法治主義の観点においては、法の形式だけではなく、内容上の正当性が追求されねばならず、法律体系が憲法や人権、慣習や社会道徳などに適っているかどうかが問題となる。実質的に法治国家であるかどうかは、制度の側面および現実の政治や法実践の側面において確かめうる。制度的には、前述の違憲審査制などが基準となる。現実において実質的な法治主義が守られているかどうかは、政治や法のさまざまな実践を丁寧に観察・分析することによってしか確かめられない。
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