在銘の作刀
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 04:01 UTC 版)
正宗の作に銘が入っているものはまれで、大部分は無銘または後世の金象嵌銘が入ったものである(本阿弥家など、後世の鑑定家が無銘の刀剣に金象嵌で刀工名を入れることがある)。現存する有銘作は短刀に数口、長物(太刀、刀)で正真作とみなしうるのは、木下正宗(重要美術品)と号する一振りのみである。製作年を明記した現存の健全作は皆無であるが、前述のとおり『享保名物帳』の「焼失之部」には「江戸長銘正宗」「大坂長銘正宗」という年紀入りの短刀が存在したことが記されている。「江戸長銘正宗」の銘は「相模国鎌倉住人正宗 正和三年十一月日」、「大坂長銘正宗」の銘は「嘉暦三年八月 相州住正宗」で、それぞれ1314年、1328年に当たる。後者は、越前康継によって再刃されたものが徳川美術館に現存する。 重要文化財指定品では短刀の「不動正宗」が在銘であり、他に「京極正宗」(短刀)、「大黒正宗」(短刀)、徳川美術館所蔵の短刀などが在銘作として知られている。銘は「大黒正宗」が「正宗作」3字銘であるほかは「正宗」2字銘である。太刀では前述の「木下正宗」は「正宗」在銘の作であるが、刀身の上半に火を被ったためか、地刃に精彩を多少欠く部分がある。この太刀の銘は朽ち込んで不鮮明であるため、1935年に重要美術品に認定された際の名称は「正宗ト銘アリ」と慎重を期していたが、重美認定の審査にあたった本間順治は、その後精査した結果、この銘は「否定しがたい」と感じたと述べている。なお、正宗在銘の短刀は焼き直しのものを含め、他にも数例が知られている。
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