回転体固定具事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 09:09 UTC 版)
特許庁が拒絶査定不服審判の過程で明細書の補正を認めず、「本願明細書記載の作用効果を奏しないものであって、特許法二九条一項柱書に規定する産業上利用できる発明に該当しない」として請求棄却審決をした事件で、1993年6月、東京高等裁判所は次のように、たとえ明細書記載不備となりうるものであったとしても、未完成発明として拒絶することは不当であると述べた: 発明の作用の記載が不備であれば、発明の技術的思想の正確な理解が妨げられるため、特許法三六条により明細書に記載すべき事項が不備であるとして特許を拒絶されることがありうることは、否定することができない。しかし、発明は、その技術内容が当該の技術分野における通常の知識を有する者(当業者)が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的、客観的なものとして構成されていなければならず、技術内容がその程度にまで構成されていないものは発明として未完成というべきである〔…〕が、逆に発明が、その程度にまで構成されていれば、明細書の記載が不備であるかどうかにかかわらず、未完成ということはできない。したがって、作用を正確に記述できていない場合においても、そのことだけを理由として産業上利用できる発明であることを否定して未完成発明であるとすることは、不当であるといわなければならない。本件補正後の本願明細書に記載不備があると言える余地は十分残されているものの、本願発明を未完成ということは不当であるというべきである。 — 回転体固定具事件東京高等裁判所判決(中略は引用者による)
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