口腔の微生物叢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:33 UTC 版)
口腔にはおよそ700種程の細菌が生息すると推定されている。レンサ球菌属に代表される一部の細菌は口腔の全域に存在するが、特定の部位にのみ生息する細菌もあり、例えばRothia属の細菌は舌や歯の表面にしかいない。歯はヒトの体で唯一生理的に表皮の脱落が生じない部位であり、バイオフィルムの形成が行われるなど、微生物にとって絶好の生息地となる。また、他にも虫歯の治療のための歯冠やインプラントなどの表面も同様にバイオフィルム形成に影響し、口腔微生物叢の構成に変化を与えやすい。 人類の歴史とともに食生活は変化し、それに伴って口腔微生物叢も変化してきたと考えられている。例えば耕作により人類は精製糖を食生活に取り入れたが、Streptococcus mutansは増加した酸化ストレスへの防御機構と自ら産生する酸性の代謝産物への抵抗性を獲得し、他の細菌に優占するようになったとされる。 虫歯や歯周炎に代表される口腔の疾患は特定の細菌が原因となるのではなく、複数の常在細菌の集団が特定の条件で引き起こすと考えられている。また、口腔の疾患に関連した細菌は、数は少ないながらも常在している。そのため、口腔の疾患は病原体が新規に感染するのではなく、口腔微生物叢におけるバランスが破綻することによって引き起こされるという説が現在は受け入れられている。
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