今日の助六
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 23:17 UTC 版)
ある演目に、本来つけられた外題のほかにも、複数の通称がついていることは珍しくない。たとえば、本外題が『寿曽我対面』という演目を、通常われわれは『吉例寿曽我』、『曽我の対面』、あるいは『対面』などといった通称で呼んでいる。しかし本外題のほかにも別外題がいくつもあって、それらが共通の通称で束ねられているという例は、この『助六』をおいて他にはない。 「『助六』を『助六所縁江戸櫻』という外題で上演するのは成田屋だけ」というのはよく知られた歌舞伎の蘊蓄だが、これをもうすこし厳密にいうと、「『助六』を『助六所縁江戸櫻』という外題で上演するのは、市川團十郎または市川海老蔵が助六を務める興行においてのみ」ということになる。 「所縁江戸櫻」というのは、そもそもは河東節による「出端の唄」の曲名で、この河東節を七代目團十郎(五代目海老蔵)が市川宗家の専売特許扱いにしてしまったため、他家が『助六』を上演するときは成田屋に遠慮して、この「出端の唄」を長唄・常磐津・清元などに書き替えたもので行う。そのため曲名に準じて外題も変わるのである。 なお、当初は「ゆかりの」の部分を「所縁」と書いたが、今日ではほとんどの場合「由縁」と書いて『助六由縁江戸桜』にしている。 助六を務めるそれぞれの役者とその演目の本外題、および「出端の唄」の浄瑠璃形式は以下の通り: 通称外題出端の唄助六を務める役者すけろく助六 すけろく ゆかりの えどざくら助六所縁江戸櫻 河東節 成田屋・市川團十郎 及び 市川海老蔵 すけろく くるわの えどざくら助六曲輪江戸櫻 長唄 高麗屋・松本幸四郎 すけろく くるわの ももよぐさ助六曲輪菊 清元節 音羽屋・尾上菊五郎 すけろく くるわの はつざくら助六曲輪初花櫻 長唄 松嶋屋・片岡仁左衛門 すけろく さくらの ふたえおび助六櫻二重帯 常磐津節 大和屋・坂東三津五郎 すけろく くるわの いえざくら助六曲輪澤瀉櫻 長唄 澤瀉屋・市川猿之助
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