にじゅう‐しょうわくせい〔ニヂユウセウワクセイ〕【二重小惑星】
二重小惑星
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/23 02:08 UTC 版)
二重小惑星(Binary asteroid)は、共通重心の周りを公転する2つの小惑星の系である。バイナリ小惑星とも。恒星における連星に相当する。1993年にガリレオがイダをフライバイした際に初めて二重小惑星であることを発見し、それ以降、多くの二重小惑星が発見されている。
大きさが似た2つの小惑星からなる二重小惑星は、"binary companions"[1]や"double asteroids"と呼ばれることがあり、アンティオペ等がその例である。「ムーンレット」と呼ばれる小さな衛星を持つ小惑星は数が多く、カリオペ、ウージェニア、シルヴィア、カミラ、ヘルミオネ、エレクトラ、イダ、エンマ、フエンナ[1]等がある。これらは、"high-size-ratio binary-asteroid systems"とも呼ばれる。
カナダのクリアウォーター湖、ドイツのネルトリンガー・リースのような1対の衝突クレーターは、二重小惑星によって形成された可能性がある。
二重小惑星の形成については、いくつかの理論が提唱されている。近年の研究では、二重小惑星の大部分は、内部がラブルパイル状であることが示唆されている。カリオペ、ウージェニア、シルヴィア等の、衛星を持つ大きなメインベルト小惑星は、斜めからの衝突が起こった後の衝突か分裂による親天体の分裂によって形成されたと考えられている。太陽系外縁天体である二重小惑星は、太陽系の形成の際に、相互捕獲や三体相互作用によって形成されたと考えられている。
太陽系の内側の方の軌道を公転する地球近傍小惑星については、地球型惑星の近くを通過した際に潮汐力によって引き裂かれて形成されたと考えられている。地球軌道の近くや内側で比較的多くの二重小惑星が見つかる理由について、ネイチャー誌(2008年6月10日号)に掲載された論文では、太陽エネルギーによりラブルパイル天体の自転速度が速くなると(YORP効果)、小惑星の赤道から物質が噴出すると説明している。この過程では、小惑星の極域に新鮮な物質が表出することになる[2][3]。
関連項目
出典
- ^ a b “Satellites and Companions of Minor Planets”. IAU / Minor Planet Center (2009年9月17日). 2011年1月8日閲覧。
- ^ Walsh, Kevin J.; Richardson, DC; Michel, P (June 2008). “Rotational breakup as the origin of small binary asteroids.”. Nature 454 (7201): 188-191. Bibcode: 2008Natur.454..188W. doi:10.1038/nature07078. PMID 18615078.
- ^ Study Puts Solar Spin on Asteroids, their Moons & Earth Impacts Newswise, Retrieved 14 July 2008.
二重小惑星
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「アンティオペ (小惑星)」の記事における「二重小惑星」の解説
アンティオペの最大の特徴は、ほとんど同じ大きさ(重量にして2.5%以内の差)の2つの天体が二重小惑星(連小惑星)になっていることである。伴星の存在は、2000年8月10日にマウナケア天文台群のW・M・ケック天文台で補償光学による観測を行っていた天文学者のグループの手で発見され、S/2000 (90) 1という仮符号がつけられた。2つの天体は共に 85 km前後の直径で、中心間の距離はわずか170 km程度である。2つの天体は全体の質量中心の周りを回っている。周期は16.51 時間である。数年に一度、地球から相互掩蔽が観測される。またケプラーの第三法則を使うと、周期と天体の大きさよりそれぞれの質量と密度を計算できる。 軌道の軸は黄道座標を使って (β, λ) = (200°, 38°) と表せ、太陽系に比べて63度傾いていることが分かる。8-10m級の望遠鏡を使った補償光学による観測と数ヶ月間の光度曲線により、形状、表面の様子、おおまかな密度、内部の状態など、様々な物理パラメータが算出される。形はわずかに球形から外れていて、大きさの比は0.95、平均半径は42.9 kmである。2003年に掩蔽が起こった際の光度曲線により、正確な形のロッシュ・ローブからのずれは10%以内であることが分かった。
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