世論と判決
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 04:28 UTC 版)
このスキャンダラスな事件については、軍法会議の内容が連日詳しく報道された。現代とは異なり、亀戸事件・朴烈事件など大震災直後に起こった社会主義者・労働活動家・朝鮮人に対する警察や軍隊による不法拘束や虐殺についてすら世論は2つに割れていたが、甘粕に対しては、弁護士の塚崎のもとには鴨志田や本多等の下士を罰するのみで「甘粕を減刑させたら承知せぬぞ」という社会主義者からの脅迫が届いていた。一方で、「甘粕は国士である」との肯定的な評価から「国賊・大杉を処断した甘粕大尉に減刑を」との署名が数十万名分も集まるなど甘粕大尉を支持する声も強かった。また甘粕も命令を受けて行動したのみで真犯人を庇って責任を1人で被ったのであって、真相は闇の中であるという意見も根強くあった。 しかし軍法会議は事件の背後関係には立ち入らないまま、11月24日に検察求刑、最終弁論があって、12月8日、殺害を実行および命令したとして甘粕大尉を首謀者と断じて懲役10年、森曹長には同3年、命令により殺害して遺体を遺棄した本多・鴨志田の2名は命令に従ったのみとして無罪を、また見張りとして関与した平井伍長は証拠不十分により無罪と、判決を下して終了した。甘粕に懲役10年が告げられると、傍聴人の中からは有罪が不満であるとして草履を投げる者や怒号を上げる者があって一時騒然としたが、本人らは黙して退出。無罪となった3名は安堵の表情で退出した。
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