【ハーグ陸戦条約】(はーぐりくせんじょうやく)
いわゆる戦時国際法の一つで、1899年のハーグ平和会議で制定された多国間条約。
戦争や戦闘のやり方について規定された条約で、第21条において
「病者及び傷者の取扱いに関する交戦者の義務は、ジュネーブ条約に依る」
とされていることから、戦時国際法としてジュネーブ条約とセットで運用されている。
本条約では、「戦闘員・非戦闘員の区別」「使用してはならない戦術・兵器」「宣戦布告・降伏・休戦」など、戦争における義務と権利が具体的に規定されている。
戦闘行為はあくまで「戦争に勝つ為の手段」とされており、戦闘による殺害そのものを目的とするような殺戮行為を禁じ、また、一方的な権利の主張や相手に制限を課すようなことも禁じている。
なお、これら戦時国際法は戦争に参加する場合の身分を明確に規定しており、これらの規定に反し、民間人を装って活動するゲリラやテロリストは捕虜の資格がないため、降伏を拒否されたり、拷問を受けても保護の対象とならない。
とはいえ、捕虜となったゲリラやテロリストを拷問したかどうかなど分かるはずもなく、たとえそのような事実があったとしても「罪のない一般市民を巻き込んだ卑劣な犯罪者」というイメージが定着している以上、糾弾する声は皆無である。
それを分かっていて、あえてそのような手段を使っている可能性も無い訳ではないが。
また、戦時国際法は二国間条約が優先するとされることから、アメリカが
「自国軍の将兵が起こした国際法違反の案件について罪を問わず、国家として責任も負わない」
という二国間条約を各国と強引に推し進めるなどしたため、ジュネーブ条約同様「実効性に乏しい」という問題を抱えている。
関連:赤十字 ジュネーブ条約
ハーグ陸戦条約
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 15:44 UTC 版)
ハーグ陸戦条約(ハーグりくせんじょうやく)は、1899年にオランダ・ハーグで開かれた第1回万国平和会議において採択された「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(英: Convention respecting the Laws and Customs of War on Land, 仏: Convention concernant les lois et coutumes de la guerre sur terre)」並びに同附属書「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」のこと。戦時国際法に関するハーグ条約の一つであり、1907年の第2回万国平和会議やジュネーヴ条約等で改定・拡張され、今日に至る。ハーグ陸戦協定、ハーグ陸戦法規などとも言われる。
注釈
- ^ 被弾した者に著しい苦痛を与えるダムダム弾(弾丸の一種で、命中すると体内で破裂するもの)の使用禁止を明記した条約は、これとは別のダムダム弾の禁止に関するハーグ宣言(1900年発効)であり、軍事用としての使用禁止のみが明記されている。
- ^ 「50口径(12.7 mm)以上の対物ライフルで人を攻撃するのは国際条約違反」と言われる事がままあるが[要出典]、厳密には本条約及びその他の条約においても、対人攻撃兵器の口径の上限を明示した条文は存在しない。50口径での対人狙撃が「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること 」に抵触するとする解釈もあり、対人使用をすべきではないとするガイドラインが存在するということである。
- ^ a b 1903年加盟。
- ^ 1904年加盟。
- ^ a b c 1906年加盟。
- ^ a b 1907年加盟。
- ^ 国内において批准をしていない。
- ^ a b 同附属書第44条を留保。
- ^ 同附属書第3条を留保。
- ^ ソ連建国(1922年)以後、ソヴィエト政府は帝政時代に締結された条約をすべて否認した。
- ^ 1917年加盟。
- ^ 遠方から識別可能な物を身につけることは敵に発見されやすくなるため、現在では各国とも低視認性の徽章が用いられているが「遠方から識別可能」の定義は明確ではなく違法とはされていない。
出典
- ^ a b 陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約 - 国立国会図書館 日本法令索引
- ^ 加藤隆之「国際法と国内法の効力関係 : 国民主権・国家主権との関係を基軸として」『亜細亜法学』第48巻第1号、亜細亜大学法学研究所、2013年、33-82頁、ISSN 03886611、NAID 110009595559。
- ^ 東京地方裁判所平成21年12月14日判決、平成19年(ワ)第5951号損害賠償等請求事件。
- 1 ハーグ陸戦条約とは
- 2 ハーグ陸戦条約の概要
- 3 ハーグ陸戦条約と使用禁止兵器
- 4 注記
固有名詞の分類
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