セルティックスの失墜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/13 03:54 UTC 版)
「1987-1988シーズンのNBA」の記事における「セルティックスの失墜」の解説
80年代に栄華を極めたボストン・セルティックスも高齢化には逆らえなかった。オフにはビル・ウォルトンが引退し、先発5人はダニー・エインジを除いて全員が30歳を越えるようになっていた。エースのラリー・バードも31歳を迎え、幾つかの故障を抱えるようになっていたが、このシーズンにはキャリアハイとなる平均29.9得点を記録し、かつてセルティックスを苦しめた76ersやバックスが凋落するなか、バードの活躍でチームはこのシーズンも57勝という好成績を記録した。しかしプレーオフでは76ersやバックスにかわる新たな強豪チームがセルティックスの前に立ちはだかった。 1回戦はニューヨーク・ニックスを3勝1敗で退けるも、カンファレンス準決勝では急速に力を着けて来たドミニク・ウィルキンス率いるアトランタ・ホークスと対決。接戦となった第7戦ではバードとウィルキンスの両エース対決となり、ウィルキンスは47得点をあげたが、バードは第4Qだけで20得点をあげ、118-116でホークスを降してカンファレンス決勝に進出した。カンファレンス決勝で待っていたのはピストンズだった。 当時のピストンズは非常に激しいディフェンスをすることで有名であり、ファウルも厭わない荒々しいプレイスタイルから"バッドボーイズ"の異名でリーグ全体を震え上がらせていた。華やかなレイカーズや質実剛健なセルティックを始め、過去のどの名チームとも全く違ったタイプの強豪チームに成長したピストンズは、イーストの覇者セルティックスを脅かす存在となっていた。 曲者揃いのチームをまとめるのは司令塔のアイザイア・トーマス。チームでは最も低身長だがコート上では誰よりも存在感を発揮し、非凡な得点能力とパスセンス、そして強靭な精神力と人を食ったような狡猾なプレイでチームを率いた。エイドリアン・ダントリーは優れたスコアラーであり、またバッドボーイズの中で唯一の紳士と言われたジョー・デュマースは攻守両面で活躍した。「公共の敵」と呼ばれ、バッドボーイズの中でも特に恐れられたビル・レインビアはインサイドの核となり、調子に乗ると止まらないことから"電子レンジ"の異名を頂戴したビニー・ジョンソンやディフェンスの名手としてチームに貢献するリック・マホーンやデニス・ロッドマンなど、充実したメンバーが揃い、チャック・デイリーがヘッドコーチとして指揮をとった。 ピストンズはセルティックスと相対する前に、一人の若造を始末する必要があった。シカゴ・ブルズ所属のマイケル・ジョーダンである。1985年のオールスターでジョーダンにパスを回さないという仕打ちをした結果、その首謀者と言われたアイザイアとジョーダンの間では良くない関係が続いていた。レギュラーシーズンは4勝2敗でピストンズが勝ち越していたが、4勝のうちの2試合はオーバータイムにもつれこむ接戦であり、またジョーダンは6試合中4試合で35得点以上、49得点と59得点も記録していた。そこでプレーオフに入るとピストンズはジョーダン対策として、インサイドに切り込んでくるジョーダンを数人掛かりで徹底的に抑える戦術をとった。ブルズの他の選手を完全に無視したジョーダン・ルールと呼ばれるこのディフェンスは、ジョーダン一人に命運を託しているブルズ相手には大いにはまり、カンファレンス準決勝を4勝1敗で勝利し、ピストンズはカンファレンス決勝に進出した。ジョーダンとブルズはこの「ピストンズの壁」の前に、プレーオフでは涙を呑むシーズンが続くこととなる(ちなみにブルズとクリーブランド・キャバリアーズの関係もこのシーズンから始まる。キャバリアーズはこのシーズンを皮切りに7シーズンのうち5シーズンでプレーオフではブルズの前に破れている)。 セルティックスとのカンファレンス決勝での対決は2年連続だった。この舞台でピストンズは前季の雪辱を果たし、4勝2敗でセルティックスを降した。ピストンズにとってはフォートウェイン・ピストンズ時代以来、実に32年ぶりとなるファイナル進出であり、また4年連続ファイナルに進出していたセルティックスによるイースト支配に終止符が打たれた瞬間であった。 80年代、ファイナルはレイカーズ、セルティックス、76ers、そしてヒューストン・ロケッツのいずれかが争い、そして1983年を除いてはレイカーズとセルティックスのいずれかが優勝を果たしていたが、そのレイカーズとセルティックスの2強時代に割って入ったのがピストンズだった。レイカーズはそのピストンズの挑戦を受けると共に、自らは「連覇」という夢に向かって挑戦を開始した。
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