ジャネからサリヴァンへ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/30 07:09 UTC 版)
「解離 (心理学)」の記事における「ジャネからサリヴァンへ」の解説
「解離」という概念の命名はフランスの精神科医ジャネ (Janet,P) であると一般にいわれる。ジャネは1889年の著書『心理自動症』の中で「意識の解離」を論じ、「ある種の心理現象が特殊な一群をなして忘れさられるかのような状態」を「解離による下意識」と呼び、その結果生じる諸症状がヒステリーであるとした。 そして現在の解離性同一性障害と全く同じ意味で「継続的複数存在」を論じ、その心理規制を「心理的解離」(仏: désagrégation psychologique)と呼ぶ。ジャネは dissociation という用語も使っているが、それは「諸機能の解離(分離)」というような一般用語として用いており、心理機制としての désagrégation と区別している。特に「記憶の解離による治療」という言い回しでの「解離」 (dissociation) は「解離性障害」 (Dissociative Disorder) の「解離」ではなく、「記憶から分離させる」つまり「そんなこと忘れさせる」の意味である。英語圏の精神医学用語として dissociation が最初に用いられたのは、1905年にアメリカのモールトン・プリンス (Prince,M.) 『人格の解離』 (The dissociation of a personality) である。これを発展させてサリヴァンは、(同性愛忌避や教会権力などの)文化的圧力から解離させられた人格部分が、「解離されたシステムdissociated system」として幻聴や遁走などの行動を誘導すると考えた。サリヴァンの強い影響のもと、第二次大戦以降の解離研究は、社会心理学やパーソナリティ障害研究を総合する形で、アメリカを中心に発展した。
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