解離性障害とは? わかりやすく解説

かいりせい‐しょうがい〔‐シヤウガイ〕【解離性障害】


解離性障害

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/16 20:34 UTC 版)

解離性障害(かいりせいしょうがい、: dissociative disorders; DD)とは、自分が自分であるという感覚が失われている状態が主となる個々の精神障害のためのカテゴリ(分類)である。『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版 (DSM-5、アメリカ精神医学会、2013年)では、解離症群解離性障害が併記される[1]解離性同一性障害、解離性健忘、離人症性障害(離人感・現実感消失障害)などに分類され、要因としては心的外傷体験、幼少期の主たる養育者との愛着の問題、当人の解離の素質などがある。解離性障害は解離症状を主とする病気で、患者は社会的・職業的に支障を来し、対人関係にも困難を抱える[2]。具体的な治療法については、「解離性障害#治療」を参照。


注釈

  1. ^ 柴山は2007年の著書 (p.34) では、解離性障害のうち、解離性同一性障害は約20%、離人症性障害が約10%、解離性健忘が5%、解離性遁走は1%、残りの約60%が特定不能の解離性障害に分類されるとしていたが、その後5年間の症例の増加により、比率が変わったと思われる。ただし、対象範囲の記載がないため詳細は不明である。
  2. ^ 白川報告(「子供の虐待と解離」『こころのりんしょう』 2009 p.307 )はアリソン (Allison,R.B.) の定義に従い、7歳以前に重度のトラウマを受け、非常に多くの人格群が現れたケースをMPDとして分けているが、表には含まれていない。それを含めると112人になるはずだが、表の編集ミスと思われる。ここではデータのある105人で計算している。「DDNOS」は特定不能な解離性障害。「その他DD」とは「その他解離性障害」であるが、PTSDの中で解離障害症状を持つ患者も含めている。白川の報告は本人の患者の2000年から2006年3月までの集計であり、警察や児童相談所、行政の困難例からのからの紹介が多く、白川自身がいうように他の報告者よりも、虐待症例の集まりやすい状況である。なお白川美也子の報告では「その他解離性障害」にPTSDの中で解離障害症状を持つ患者も含めている。
  3. ^ 性的虐待は家庭内・家庭外とも、解離性障害全体の中で他よりも解離性同一性障害の方が少ないという結果になっているが、標本数の少なさから有意差はないと見るべきである。 柴山雅俊の2012年時点の報告では性的外傷体験を家庭外でも家庭内でも受けた人達はすべてDIDと診断されたという、(柴山雅俊2012 pp.62-63 )
  4. ^ 下記以外にも様々な解離性尺度があり、田辺 肇 (2007) 「解離性の尺度と質問紙による把握」に紹介されている。[54]

出典

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  2. ^ a b 平島奈津子先生に「解離性障害」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会”. archive.md (2017年12月24日). 2022年2月21日閲覧。
  3. ^ ジェフリー・スミス2005 p.310
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  6. ^ 柴山雅俊 「離人症」 『精神科臨床リュミエール』 2009 p.104
  7. ^ a b c d アレン・フランセス 2014, pp. 228–230.
  8. ^ 柴山雅俊2012 p.72
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  14. ^ ICD-10新訂版2005 p.14
  15. ^ ICD-10新訂版2005 p.163
  16. ^ 解離性同一性障害/ICD-10での定義参照
  17. ^ 岡野憲一郎2009 pp.250-252
  18. ^ 『こころのりんしょう』 2009 Q&A集Q5 「解離性障害はどのような原因で起こると考えられていますか?」 (p.215) では(3)と(4)を合わせて虐待とまとめているが、ここでは説明の都合上2つを分ける。
  19. ^ 柴山雅俊2007 p.117。数字は何割との表記を%に改めた。
  20. ^ 柴山雅俊2012 pp.62-63
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  28. ^ 白川美也子 「子供の虐待と解離」『こころのりんしょう』 2009 p.302
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  30. ^ 柴山雅俊 「離人症」 『精神科臨床リュミエール』 2009 p.106
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  42. ^ 柴山雅俊2007 pp.91-92
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  48. ^ 野間俊一 「構造的解離理論」 『精神科臨床リュミエール』 2009 pp.71-81
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  50. ^ ヴァンデアハート2006
  51. ^ ヴァンデアハート2006 pp.3-8
  52. ^ ヴァンデアハート2006 pp.7-12
  53. ^ 岡村毅、杉下和行、柴山雅俊「解離性障害の疫学と虐待の記憶」『こころのりんしょう』 2009 p.341
  54. ^ 「精神科治療学-特集:いま「解離の臨床」を考える II」第22巻第4号、星和書店、2007年。 
  55. ^ 田辺肇 「病的解離性のDES-Taxon簡易判定法」『こころのりんしょう』 2009 p.288
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  64. ^ 野間俊一 「構造的解離理論」 『精神科臨床リュミエール』 2009 pp.77-78
  65. ^ ヴァンデアハート2006 pp.24-26
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  69. ^ 福井義一 (2020). “青年期において被虐待経験と不安定愛着が心身の健康に及ぼす影響の回顧的研究――解離性障害や心身症の予防と効果的介入に向けて――”. Journal of Health Psychology Research 32: 107-116. 
  70. ^ 半田聡、今井逸雄、藤崎美久、宮城島大、篠田直之、清水栄司、伊豫雅臣「2. 解離性障害・転換性障害の入院治療 : 行動制限の視点から(第1061回千葉医学会例会・第20回千葉精神科集談会)」『千葉医学雑誌』第79巻第4号、2003年8月1日、157頁、NAID 110004666385 
  71. ^ 木原和子、中田郁子、松本亜紀、渡邊元雄、米田一志「離人症状を主訴とした解離性障害の1症例」『大阪府済生会中津病院年報』第26巻第2号、2016年3月31日、213-217頁、NAID 120006209461 
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解離性障害

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 09:58 UTC 版)

境界性パーソナリティ障害」の記事における「解離性障害」の解説

BPD患者で解離性障害(DD)の診断基準満たす者は73%といわれており、BPD患者で解離性障害と診断できる患者多く併存可能性は高い。また解離、離人、分割投影投影性同一視)は類似概念であるが、離人症性障害みられることもある。解離性障害とBPDでは、女性罹患者が多い、虐待経験心的外傷体験既往率が高いなど共通点多く、クラリーは、解離性障害はBPD特殊な形態であるとし、ハーマン外傷性精神障害として同じカテゴリー分類するなど、ほぼ同一障害とみなす研究者もいる。 しかし解離性障害の患者パーソナリティ傾向としては、回避性、自虐性、妄想性、スキゾイド、失調型、受動攻撃性、または境界性など、多様な傾向にあり、精神分析的な観点においても、症状発現もたらす規制防衛様式)が解離性障害では抑圧repression)、境界性パーソナリティ障害では分裂splitting)という違いがある。また解離性障害では見捨てられ不安もほぼないとされるBPDでは、解離自傷時やストレス下において出現する一過性の症状であるが、解離性障害では主軸にある症状であり持続的反復的である。 「解離性障害」も参照

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「解離性障害」を含む「境界性パーソナリティ障害」の記事については、「境界性パーソナリティ障害」の概要を参照ください。

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