グルタミン酸仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 18:58 UTC 版)
「統合失調症の原因」の記事における「グルタミン酸仮説」の解説
アメリカで薬物のフェンサイクリジン(PCP)の乱用が流行した際、一時的に統合失調症に似た症状を誘発させ、後にNMDA受容体アンタゴニスト作用によるものと考えられた。薬物誘発性の精神病であり、統合失調症ではない。後にPCPに代わりMK-801を用いた基礎研究が行われている。 麻酔薬として開発され、のちに暴力性の副作用のため使用が断念されたフェンサイクリジンを投与すると、統合失調症様の陽性症状および陰性症状がみられたこと、フェンサイクリジンがグルタミン酸受容体(NMDA受容体)の遮断薬であることがのちに判明し、グルタミン酸受容体(NMDA受容体)の異常が統合失調症の発症に関与しているという仮説がある。実際に欧米を中心に従来の抗精神病薬とグルタミン酸受容体(NMDA受容体)作動薬であるグリシン、D-サイクロセリン、D-セリンを併用投与すると抗精神病薬単独投与より陰性症状や認知機能障害の改善度が高くなることが報告されている。将来的に、グルタミン酸受容体に作用する抗精神病薬の開発が期待されている。 抗NMDA受容体抗体脳炎は2007年に提唱された比較的新しく発見された疾患であるが、グルタミン酸の受容体であるNMDA受容体機能低下による統合失調症と共通病態と考えられ、統合失調症様な症状が生じる。 統合失調症のモデル生物作成にMK-801(ジゾシルピン)やフェンサイクリジンが使用される。一時的な投与は精神病の模倣を、慢性投与は神経病理学的な変化をもたらす。反復投与により、概ね薬効の強さに関連して永続的な神経変性が生じる。MK-801はヒトにおいても長期間に渡って異常思考や健忘などの強い後遺症が残る。いくつかの研究では習慣性が見出されている。 ドーパミン作動性の薬剤が陽性症状のみを誘発させるのに対し、NMDA受容体拮抗剤は陽性症状と陰性症状の両方を誘発させることが分かっている。
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