ウィリアム・スワードの暗殺未遂
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「リンカーン大統領暗殺事件」の記事における「ウィリアム・スワードの暗殺未遂」の解説
ブースはルイス・パウエルに国務長官のウィリアム・スワード殺害を命じていた。このとき、スワードは一週間ほど前に起きた馬車での事故によって床に臥していた。スワード邸はホワイトハウスにほどちかいワシントンのラファイエット・パーク(Lafayette Park)にあった。 パウエルとヘロルドはブースの指示通りスワード邸に赴いた。ブースが、パウエルは度胸と腕力はあるが、ワシントンの地理にうとく、ヘロルドは地理には精通しているが、人を殺す度胸がないと見たため、二人をペアにして行動させたのである。パウエルは武器として南北戦争のころ人気があった大型銃、1858年式のホイットニー回転式拳銃と大きなボウイナイフを所持していた。 ヘロルドが逃走のための馬を用意して、スワード邸外に待機すると、パウエルは10時すぎにスワード邸の扉をたたいた。使用人のウィリアム・ベルが応対した。パウエルはブースの指示通り、ヴェルディ医師の指示で国務長官の薬を持参したという口実を述べた。パウエルは「国務長官に直接口頭で説明するよう指示されているので面会したい」といって譲らなかったため、ついにベルは邸内に招きいれた。パウエルは邸内に入ると三階の寝室をめざした。 階段を上りきったところで、スワードの息子で秘書をしていたフレデリック・ウィリアム・スワードが出てきてパウエルをとどめ、押し問答になった。パウエルはさきほどの口上を繰り返したが、フレデリックはこれに疑いを抱き、父はもう寝てしまったといって追い返そうとした。 このやりとりが聞こえたため、スワードの娘で父の看病をしていたファニー・スワードは面会者かと思ってドアを開け、フレデリックに「お父様は起きていらっしゃるわ」と声をかけて室内に戻った。パウエルはこれによって国務長官がどの部屋にいるかがわかった。パウエルはいったんあきらめて帰るふりをして、突然階段を上がり、同時にリボルバーを引き抜いてフレデリックの頭に突きつけた。パウエルは間髪いれず引き金を引いたが不発に終わったため、銃床で何度もフレデリックの頭を強打した。フレデリックは血まみれになって倒れ、殴った衝撃で銃は壊れてしまう。 娘のファニーはこの乱闘の音を聞いて何事かと思い、再びドアを開けた。そこには昏倒した兄と、部屋に突き進んでくるパウエルの姿が見えた。パウエルは呆気にとられるファニーを尻目に室内へ乱入し、ベッドで寝ていたスワードに向かってナイフを振り下ろした。しかし、ナイフを握る手に力が入り過ぎていたために手元が狂って二度狙いを外すも、三度目にスワードの頬を大きく切り裂いた。再びパウエルがナイフを振り上げたときは、スワードの頚動脈を守るものは首のネックレス以外何もなかった。その時、間一髪部屋に飛び込んできた看護兵のジョージ・ロビンソン軍曹とスワードの息子のオーガスタス・スワードがパウエルに飛びかかり、スワードへの致命傷を食い止めた。オーガスタスは隣の部屋で寝ていたが、ファニーの叫び声を聞いて部屋に飛び込んだ。ファニーは窓から外に向かっても叫んでいたため、これを聞いたヘロルドは長居は危険と察し、パウエルを見捨て、馬に乗り単独でその場を離れた。 へロルドが逃げたため、パウエルはオーガスタス、ロビンソン軍曹、ファニーの三人と組み合う形になっていた。ベッドのスワードの顔からは激しく流血していた為、パウエルはスワードに致命傷を与える事に成功したと思い、階段を下りて逃走した。この時、屋敷の外に走り出たパウエルは「おれはいかれてる、おれはいかれてる」と叫んでいたというが、理由は不明。パウエルはヘロルドの残した馬の手綱をとって逃げていった。
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