アメリカン航空の訓練
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 23:25 UTC 版)
「アメリカン航空587便墜落事故」の記事における「アメリカン航空の訓練」の解説
AAMPは不測の事態に対する訓練であり、座学やビデオ学習、シミュレーター訓練などで構成された。1997年に副操縦士が受講した座学では、異常姿勢からの回復にラダーペダルを使うことを推奨していた。そして、シミュレーター訓練の中にはAA587便の状況と似たシナリオがあった。その訓練では、ボーイング747型機の後を離陸して後方乱気流に注意するよう告げられる。そして上昇中、軽い揺れに続いて機体が10度ロールする。ここまではAA587便と類似しているものの、シミュレーターでは続いて反対側に急激に90度以上ロールする。このシナリオはA300-600型機には非現実的であった。 加えて、このシミュレーター訓練では操縦輪とラダーペダルの働きの一部が抑制されており、揺動が始まってから10秒間またはロールの傾きが50度を超えるまで補助翼と方向舵が利かなくされていた。舵を抑制していることはパイロットに知らされなかった。その上で、教官は異常姿勢に素早く対処するよう指示していた。さらに、アメリカン航空のA300-600型機のシミュレーターではラダーペダルの操作性が実機と異なっていた。ラダーペダルには、踏み込んだ際に反力が返るよう弾性が設定されている。シミュレーターではソフトウェアによってこの弾性を模擬していたが、その特性は実機よりも柔らかく、ペダルをより奥まで踏み込めるようになっていた。 異常姿勢からの回復法を教えるつもりで作成した訓練プログラムであったものの、シミュレーターの設定が非現実的であった。後方乱気流に対する回復操作について誤った認識を与え、実際の飛行には不適切で危険とさえ言えるものだった。 実はアメリカン航空は、FAAや航空機メーカーからAAMPの内容を是正するよう求められていた。これに対して、アメリカン航空が実施した修正は部分的であり、ラダーの過剰な強調が本事故までに完全に解消されることはなかった。
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