「F-19」とプラスチックモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 17:57 UTC 版)
「F-117 (航空機)」の記事における「「F-19」とプラスチックモデル」の解説
実機こそ確認されていなかったが、「アメリカ軍は秘密裏にステルス戦闘機を開発しており、既に実用機も存在している」として、その存在は1980年代半ばには公然の秘密となっていたため、各軍事関係書籍などでは「F-19」と仮定されたステルス機の想像図が数種類発表されていた。共通していたのは、機体の各部が曲線で構成されており垂直尾翼が内側に向いているといった点で、同じロッキード製軍用機であるSR-71を小型化したようなデザインであった。 「F-19」という名が一人歩きを始めた原因の一つが、アメリカ合衆国イリノイ州に本拠をおく模型メーカー、テスター(Testor)社が同社のデザイナーによって創作して模型化した、「F-19」のプラスチック製スケールモデルキットの存在である。このキットは、「アメリカの開発した極秘のステルス機を独自の情報源により再現した」とうたわれていた。また、当時漏れ伝えられていたステルス技術を反映して、「ミサイルなどは機体内に搭載する」、「機体は曲線で構成され、二枚の垂直尾翼は内側に傾斜している」といった形状をしていた。上記のようなステルス戦闘機に対する関心や憶測もあり、このモデルはマスコミなどに持て囃され、発売年のクリスマス商戦の目玉商品となったことから、ベストセラーとなった。 このモデルは実際のF-117とは全く似ていなかったが、これについて記者が国防総省のスポークスマンにコメントを求めたところ、「ある程度の航空機についての知識を有する者ならば、この程度の形状は想像し得るだろう」という、肯定も否定もしない返答であった。この「否定」されない返答が売り上げ増に拍車をかけたとされる。この"F-19"について、F-117の開発を行っていた時期にスカンクワークスの責任者だったベン・リッチは引退後、自著の中で「このインチキ戦闘機と社内の内紛のせいで、ロッキード社の機密保持に問題があるとしたアメリカ議会の公聴会に呼び出されそうになった」(本人の出席は免れたが、当時のロッキード社の社長が出席している)と記載している。 上述のプラモデルはテスター社の他に同社と提携関係にあったイタリアのイタレリ社からも発売され、両者の製品はパッケージ以外は同一のものであったが、イタレリ社の方が世界的に見て販路が広かったため、このF-19のプラモデルは“イタレリの製品”として著名である。この他、宇宙開発技術企業で人工衛星の製造を手掛けるロラール社が広報用イラストに描いたものを基にしたプラスチックモデルキットもモノグラム社から発売されていた。日本ではアリイがテスター/イタレリのモデルのデザインを元に独自のデザインとして商品化したものを発売しており、同社独自の「訓練用複座型」といったバリエーションモデルも発売されていた。 F-117の公表後は実機の資料に基づいたF-117のモデルキットが航空機モデルを扱う各模型メーカーより発売され、上述の「F-19のプラモデル」はいずれも廃版もしくは絶版となり、商品によってはプレミア価格で取引されている。
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