「日本探偵小説の嚆矢」とは? わかりやすく解説

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「日本探偵小説の嚆矢」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/24 20:07 UTC 版)

無惨」の記事における「「日本探偵小説の嚆矢」」の解説

小説館の定期刊行物小説叢』の第一冊として、1889年明治22年9月右田寅彦の『平家姫小松とともに掲載され、翌1890年明治23年2月上田屋より単行本として刊行された。1893年明治26年)には『三筋の髪』と改題されて再刊されている。男の死体状況を基に、勘頼りベテラン理論派の新人2人職業探偵それぞれ推理働かせ犯人に迫る、というあらすじである。 本作は、それまで海外探偵小説翻案行っていた黒岩涙香が、初め執筆した創作探偵小説である。 廼家かほるは、単行本版序文明治22年10月付)で本作を「日本探偵小説嚆矢とは此無惨云うなり」と、「探偵小説」との語句用いてこれを評している。本作起承転結確立された3篇構成となっており、涙香も「余は論理知らず小説も知らざる男」と謙遜しながら、「小説家に論理書と見へ、論理家には小説と思はるる、望外の幸なり」と創作対す意気込み語っている。 涙香はこの『無惨』で本格探偵小説挑戦したが、以後は再び翻訳翻案仕事戻った本作では結びに、荻沢警部卓越した推理をみせる大鞆に対して エミール・ガボリオ創作探偵ルコックなぞらえ、「東洋のレコックになる可し」とのセリフが入る。 本作発表後長らく忘れられていたが、1937年昭和12年)、明治文学研究者柳田泉が、『探偵春秋2月号に掲載された「涙香創作探偵小説無惨』について」で紹介し、「恐らく本格探偵小説らしい探偵小説創作は、此の無惨』をもつて嚆矢とするといつてもよいかも知れない」と位置づけた。柳田は、翌3月掲載の「涙香時代探偵小説」で、『無惨』の1年前に発表され須藤南翠創作探偵小説硝烟剱鋩 殺人犯』(正文堂、1888年6月)を紹介しつつも、「探偵小説としてはまづ未成品で、単に先駆的なものとしてしか見られない」と評している。江戸川乱歩柳田評価受け継ぎ評論集幻影城』(1951年)に収めた涙香創作無惨』について」(初出『新探偵小説』1947年7月号)で、本作を「日本最初本格創作探偵小説」と位置づけた。この柳田乱歩評価によって、日本初創作探偵小説かつ本格探偵小説とする評価定着する柳田泉は、実際に涙香このまま創作探偵小説続けていれば、「大鞆」は江戸川乱歩生んだ明智小五郎匹敵する探偵キャラクターになっていたかもしれないとして、これが実現しなかったことを惜しんでおり、涙香は「これだけでも立派に日本探偵小説史上掻消すことの出来ぬ存在となつてゐる」、「吾等は、翻訳家涙香の外に、創作家涙香の名も記憶値することを知らなくてはならぬ」と述べている。

※この「「日本探偵小説の嚆矢」」の解説は、「無惨」の解説の一部です。
「「日本探偵小説の嚆矢」」を含む「無惨」の記事については、「無惨」の概要を参照ください。

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