σサブユニット
σサブユニット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 22:22 UTC 版)
「RNAポリメラーゼ」の記事における「σサブユニット」の解説
特に転写開始段階で活躍するようである。σ因子があるとRNAポリメラーゼは不特定のDNA部位(緩い結合部位、loose binding site)に弱く結合する。滑って移動し、プロモーターに出会うかそのまま遊離する。これにより、RNAポリメラーゼによる転写を行う遺伝子の発見は加速される。速度定数にして1010 M-1 s-1で、滑らずにDNAへ無差別に結合と解離を繰り返す場合の100倍である。結合した時の安定性でいえば、解離までの半減期は約60分と長い。σ因子がなければ1秒以下である。σサブユニットはまたRNAポリメラーゼとプロモーターを、半減期が数時間になるほど強固に結合させる。ホロ酵素とプロモーターの会合定数はほかの配列と比較して平均約107倍であり、コア酵素の平均1000倍にもなる。プロモーターによって結合定数は106〜1012と幅広く、rRNAのような約1秒に1回からlacI 遺伝子のような約30分に1回という転写頻度の違いを生み出す。それだけではなく、伸長段階への移行に必要なDNAの巻き戻しも担う。 伸長段階に移行するとき、RNAポリメラーゼは構造を変えるが、このときσ因子の結合は極端に弱くなる。トラバーズ (Travers) とバージェス (Burgess) の研究によると、σ因子が伸長を促進することはない。二人の1969年の論文では、離れたσ因子は別のコア酵素と結合し、なおかつそれはDNAの正常な転写を行うことが証明された。このことから、σ因子は再利用されると考えられる。σサイクルという循環の中では当初、伸長前に必ず離れるものと考えられていたが、現在では結合が弱くなるだけという説が有力である。実際、伸長段階に至ったホロ酵素の70%はσ因子を保有したままである。すなわち、σ因子は通常伸長が止まったときに、別のコア酵素に利用されるため離れる。 特別な遺伝子を専任するσ因子もある。あらゆる真正細菌は、成長機能に関する遺伝子(通常の増殖に必要な遺伝子)を転写する主要σ因子 (primary σ factor, σA) を持つ。例えば、大腸菌ではσ70であり、枯草菌 ではσ43である。それぞれ70 kDと43 kDで、右上の番号は分子量に由来する。ほかにも、熱ショック遺伝子や胞子形成遺伝子なども特別なσ因子が担当する。多くの種類があるのは、環境条件によって適切な遺伝子群を発現するためで、この使い分けは特に枯草菌を用いた研究によって明らかとなった。普段はσ43が転写制御に当たっているが、栄養状態が悪くなった場合などには他のσ因子(σHなど)が発現し、胞子形成の準備を始める。その後母細胞ではE、Kと変化し、胞子ではF、Gが使用される。
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