Transistor-transistor logic
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/22 07:50 UTC 版)
パッケージ
1965年から1990年にかけての多くの集積回路と同様にTTLデバイスはスルーホール実装用にパッケージされた14ピンから24ピンのDIPが一般的だった。エポキシ樹脂製 (PDIP) が一般的だが、セラミック製 (CDIP) もある。大規模なハイブリッドIC向けにパッケージされていないビームリードつきのチップダイスも作られている。軍用や航空宇宙用には表面実装パッケージの一種であるフラットパック (en) でパッケージされている。今ではTTL互換デバイスの多くは表面実装型のパッケージであり、様々な種類がある。
TTLは全ての入力が1つのベース領域上に形成されるマルチエミッタ・トランジスタになっているため、構造的に集積回路に向いている。個別部品でTTL回路を構成しようとするとコストが高くつくが、ICで実装すると逆にコストが下がる。
他の汎用ロジックICファミリとの比較
TTLデバイスは一般に等価なCMOSデバイスに比べて消費電力が大きいが、CMOSデバイスがクロック周波数を上げると消費電力が大きくなるのに対して、TTLではそれほど増加しない[20]。ECLに比べると消費電力が少なく設計も容易だが、スイッチング性能は低い。性能と経済性を両立させるためにTTLとECLを混在させてシステムを構築することもあったが、両ファミリの間にレベルを変換するデバイスを必要とした。初期のCMOSデバイスは静電気の放電に対してTTLより弱かった。
TTLデバイスの出力構造により、出力インピーダンスがHI状態とLO状態で異なるため、伝送線の駆動には不向きである。そのため、ケーブルなどで信号を送る際には伝送線駆動のための専用デバイスで出力をバッファリングするのが一般的である。ECLは出力インピーダンスが対称的であり、このような欠点がない。
トーテムポール構造の出力段の場合、上下のトランジスタが同時にONになる瞬間が存在し、電源からの電流がかなりのパルスとなって流れる。このパルスがIC間で影響を及ぼしあい、結果としてノイズマージンが低下し性能も低下する。TTLシステムでは1つか2つのICパッケージ毎にバイパスコンデンサを配置するのが一般的で、それによって電流パルスが他のチップの電源電圧を瞬間的に低下させないようにしている。
いくつかの製造業者は、TTL互換の入出力レベルのCMOSロジックICを販売しており、ピン配置などもTTLと合わせていることが多い。例えば74HCTシリーズはCMOSテクノロジーを使い、バイポーラの74シリーズの部品と置換可能である。
派生品
技術の進歩により、互換性を保ちながらスイッチング速度や消費電力を改良した部品が生まれた。各ベンダーはそれらをショットキーバリアダイオード付きのTTLとして製品化したが、例えばLSファミリなどの回路構成は実際にはDTLに近い[21]。
標準TTLファミリでは、ゲート遅延が10ns、電力消費がゲート当たり10mWで、電力遅延積(PD積)またはスイッチングエネルギーが約100pJである。その派生および後継のファミリとしては次のものがある。
シリーズ | 型名表示 | 特徴 | 消費電力(mW/Gate) | 遅延 tpd(nsec) |
---|---|---|---|---|
標準TTL | 74 | 1966年に商品化された初期の標準品 | 10 | 10 |
ローパワーTTL | 74L | 初期の低消費電力品。但しスピードを犠牲にしている。CMOSに取って代わられた。 | 1 | 33 |
ハイスピードTTL | 74H | スイッチングが速いが、消費電力が大きい。 | 22 | 6 |
ショットキーTTL | 74S | 入力部にショットキーバリアダイオードを使って電荷蓄積を防ぎ、より高速なスイッチングを可能にした。ただし消費電力がやはり大きい。 | 19 | 3 |
ローパワーショットキーTTL | 74LS | 1970年代後半~80年代前半の標準TTL。高い抵抗値で消費電力を低減させ、ショットキーダイオードで高速スイッチングを両立させた。PD積は約20pJ。 | 2 | 9.5 |
FAST | 74F | 1980年代中ごろにフェアチャイルドが発売した高速ショットキーTTL。PD積は約10pJ。 | 4 | 2.5 |
アドバンストショットキーTTL | 74AS | 1980年代中ごろに出たS-TTLの改良品 | 20 | 1.5 |
アドバンストLS-TTL | 74ALS | 1980年代中ごろに出たLS-TTLの改良品。PD積は約4pJと最も小さい。 | 1 | 4 |
多くの製造業者が動作温度範囲が民生用のものとより広範囲な軍事用のものを製品化している。54シリーズはMIL規格、74シリーズは一般用の品質保証規格で製造販売される民生用である。例えば、TIの74シリーズは0℃から75℃までとされているが、54シリーズは-55℃から+125℃までとなっている。軍事用や航空宇宙用に特に品質を高めた高信頼部品もある。放射線耐性を高めたものもある。
TTL入出力電圧 (V)
基準とされる電圧レベル
- Hiレベル入力電圧: 2.0V以上
- Lowレベル入力電圧: 0.8V以下
- Hiレベル出力電圧: 2.4V以上
- Lowレベル出力電圧: 0.4V以下
注釈
出典
- ^ Eren, H., 2003.
- ^ a b Buie, J., 1966.
- ^ a b The Computer History Museum, 2007.
- ^ Bo Lojek, History of semiconductor engineering Springer, 2006 ISBN 3540342575,pages 212-215
- ^ Engineering Staff, 1973.
- ^ L.W. Turner,(ed), Electronics Engineer's Reference Book, 4th ed. Newnes-Butterworth, London 1976 ISBN 0-4-080-0168-2
- ^ Pittler, Powers, and Schnabel 1982, 5
- ^ Texas Instruments, 1985
- ^ Lancaster, 1975, preface.
- ^ Klein, 2008.
- ^ Electronic Principles Physics, Models, and Circuits, first edition 1969, Gray and Searle, page 870
- ^ Transistor–Transistor Logic (TTL). siliconfareast.com. 2005. Retrieved 17 September 2008.
- ^ Millman 1979 pg. 147.
- ^ SN7401 datasheet – Texas Instruments
- ^ Transistor–Transistor Logic (TTL), 2005, p. 1.
- ^ Tala, 2006.
- ^ SN7400 datasheet - Texas Instruments
- ^ TTL standard logic level, n.d.
- ^ TTL-to-CMOS Interfacing Techniques
- ^ Paul Horowitz and Winfield Hill, The Art of Electronics 2nd Ed. Cambridge University Press, Cambridge, 1989 ISBN 0-521-37095-7 page 970 ...CMOS devices consume power proportional to ther switching frequency...At their maximum operating frequency they may use more power than equivalent bipolar TTL devices.
- ^ Ayers, n.d.
- ^ Wobschall, 1987, pp. 209-211.
- Transistor-transistor logicのページへのリンク