POLY LIFE MULTI SOUL 背景と制作

POLY LIFE MULTI SOUL

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/15 06:19 UTC 版)

背景と制作

ceroは、2015年5月に3rdアルバム『Obscure Ride』をリリースし、ジャズヒップホップを始めとする現行のブラックミュージックへ接近した音楽性などが業界各所で高い評価を受け、CDショップ大賞にも入賞した[11]。本作の制作のきっかけは、翌年2016年夏にメンバーの荒内が収録曲「魚の骨 鳥の羽根」のデモテープを作ってきたことだったという[12]。『Obsucure Ride』の完成後、髙城が「割とぼんやりした期間が続いていた」のに対し、荒内は次のアルバムに向けて水面下で動いていた。荒内は「2016年は勉強の年だった」と振り返っており、リズムについての歴史や楽理、またコードについて勉強・研究していたという。荒内は『Obscure Ride』が出た頃、ceroが、ロバート・グラスパーら現行ジャズアーティストの単なるフォロワーとして「ビートものを参考にして打ち込みを生演奏に置き換える」ことをするだけでは「視野が狭いな」と考えていた[注 1][12]。そして、元来自分たちが興味を持っていたブラジル音楽アフリカ音楽への接近も踏まえつつ、未来のことを考えて制作に臨むこととなった。髙城は、「参照先が幾らでもある時代においては、ビュッフェ形式で色々な要素を集めて、自分のプレートをつくるっていうやり方が自然なんじゃないか」と思ったと語っている[12]

「今回は海外のブラック・ミュージックを輸入して、そこに日本語を乗せた文脈の書き換えをおもしろがってもらった『Obscure Ride』とは違って、もっと具体的なリズムやハーモニーを追求する制作でした。」
Mikikiによるインタビューでの荒内佑の発言[13]

「リズム」をテーマとしたアルバムに向けたceroの新たなモードは、前述の通り荒内が先導していた[12]。ceroは2016年末にワンマンツアー「MODERN STEPS TOUR」を開催し、そこではまだタイトルのついていなかった「魚の骨 鳥の羽根」も披露していた。複雑なリズム構造を持つ同曲は「あの、リズムが複雑な曲」として音楽ファンの間で話題になった[12]。荒内は、「僕らは難しいことがやりたいわけではなく、〈ダンス・ミュージックを拡張する〉という意識ですよね。」と語っており、ツアー後は同曲も含め「剥き出しの構造をオブラートに包んで、わかりやすく踊れる曲に落とし込むべく、みんなでアレンジしていった」という[13]。また同ツアーから、厚海義朗、光永渉から成るお馴染みのリズム隊に、新たにキーボードコーラスの小田朋美、パーカッション/コーラスの角銅真実、トランペット/コーラスの古川麦を加えた8人体制へと発展しており、この変化がアルバムの制作を大きく前進させていくことになった[13]


注釈

  1. ^ 荒内曰く、『Obsucure Ride』はそういった意味で「後追い」のアルバムだった。実際に、アルバムのオープニングはディアンジェロ『Voodoo』のそれをコピーしている[12]

出典

  1. ^ a b c cero 『POLY LIFE MULTI SOUL』 洗練を極めたエクスペリメンタル・ポップ。かつてない深淵な世界が現れる”. Mikiki (2018年6月6日). 2021年2月1日閲覧。
  2. ^ a b c d e ceroの傑作『POLY LIFE MULTI SOUL』を、5人のライターが語る 1/2”. cinra.net (2018年5月31日). 2021年2月1日閲覧。
  3. ^ a b c d ceroの傑作『POLY LIFE MULTI SOUL』を、5人のライターが語る 2/2”. cinra.net (2018年5月31日). 2021年2月1日閲覧。
  4. ^ 「クロス・レヴュー」『ミュージック・マガジン』第50巻第8号、ミュージック・マガジン、2018年7月。 
  5. ^ 「アルバム・レヴュー」『ミュージック・マガジン』第50巻第9号、ミュージック・マガジン、2018年8月。 
  6. ^ 「クロス・レヴュー」[4]、「アルバム・レヴュー」[5]において5人の評者がつけた点数の平均値。
  7. ^ a b POLY LIFE MULTI SOUL【初回盤A】cero”. オリコン. 2021年2月1日閲覧。
  8. ^ a b Hot Albums 2018/05/28 付け”. Billboard Japan. 2021年2月1日閲覧。
  9. ^ cero新作アルバムから「Waters」をアナログ化、sauce81のリミックスも”. 音楽ナタリー (2018年4月12日). 2021年2月1日閲覧。
  10. ^ cero「Poly Life Multi Soul」をアナログ化、KEITA SANOのリミックスも”. 音楽ナタリー (2019年5月23日). 2021年2月1日閲覧。
  11. ^ 第8回CDショップ大賞2016 受賞作品”. 全日本CDショップ店員組合. 2019年12月25日閲覧。
  12. ^ a b c d e f Interview Part.01”. POLY LIFE MULTI SOUL 特設サイト. 2021年2月1日閲覧。
  13. ^ a b c cero『POLY LIFE MULTI SOUL』ダンス・ミュージックの自由度を拡張する魅惑のポリリズム”. Mikiki (2021年2月5日). 2021年2月1日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i j k l Album Review cero 『POLY LIFE MULTI SOUL』”. ele-king. 2021年2月1日閲覧。
  15. ^ a b Part.02 INTERVIEWER 磯部涼”. POLY LIFE MULTI SOUL 特設サイト. 2021年2月1日閲覧。
  16. ^ a b c Part.03 INTERVIEWER 磯部涼”. POLY LIFE MULTI SOUL 特設サイト. 2021年2月1日閲覧。
  17. ^ a b Part.04 INTERVIEWER 磯部涼”. POLY LIFE MULTI SOUL 特設サイト. 2021年2月1日閲覧。
  18. ^ CDショップ大賞”. 全日本CDショップ店員組合. 2021年2月1日閲覧。
  19. ^ SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2018”. Space Shower Music. 2021年2月1日閲覧。
  20. ^ a b "特集[決定版]2010年代の邦楽アルバム・ベスト100"、MUSIC MAGAZINE、2021年3月号、株式会社ミュージック・マガジン
  21. ^ Top Albums Sales About Charts [ 2018/05/28 付け ]”. Billboard Japan. 2021年2月1日閲覧。





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