IUPAC命名法 命名の実際

IUPAC命名法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/11 04:09 UTC 版)

命名の実際

有機化学編

IUPAC命名法がどのように適用されるかを理解するために、Penicillin Gの命名を段階を追って説明する。

Step1 母核の決定

チエナム環が中心なので、これを基幹にして命名する。チエナムは、慣用名 (trivial name) でかつIUPAC非推奨なので、組織名 (systematic name) を使用する。azete環とthiazole環との縮合複素環に水素を置換しても組織名にはなるが (2,3,6,6a-tetrahydro-5H-azeto[2,3-b]thiazole)、不必要に長くなるので採用しない。

したがって二環系炭化水素に代置命名法 (Replacement nomenclature) を適用する。母核となる炭化水素は

になる。

Step2 代置命名法の適用

二環系炭化水素にthiaazaを置換したラクタムなので、命名は次のようになる:

位置番号は、代置命名法における優先順位の高いNを起点にしてSに振られる位置番号が小さくなる向きに回すので、上の図のようになる。

Step3 置換基の命名(その1: チエナム環の命名)

Penicillin Gは、チエナム母核のフェニル酢酸誘導体なので、まずチエナム環の命名を完成させる。

3位に二つのメチル基、2位にカルボキシル基そして6位にアミノ基があるので、

である。

この段階で2, 5, 6位の立体配置が決まるが、側鎖の命名が完了していないので立体配置の命名をしてはならない

Step4 置換基の命名(その2: 誘導体の命名)

6位のフェニル酢酸アミド基を命名すると

となる。これで立体配置以外は決定した。

Step5 立体配置の命名(命名の完成)

立体配置を決定するルールの適用を判りやすくする目的で、ルールに関与する原子と結合だけ抜き書きを示す。

まず2位の立体配置から決定する。これまでの図の配置では最小の置換基が手前に来ている。これをいったんひっくり返して図示すると、

2位はS配置であるとわかる。

次に図の5, 6位は最小の置換基が奥を向いている。

このように、5, 6位はいずれもR配置である。

以上をまとめて命名の先頭に立体配置命名を付けると次のようになる。

説明の展開上ラクタムのカルボニルが主基 (principal group) のように扱ったが、置換基間には優先順位があり、この場合はカルボン酸が主基にふさわしい。したがって、7位のカルボニルを接頭語に回し、2位を主基にすると、

(2S,5R,6R)-6-phenylacetylamino-2,2-dimethyl-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo[3.2.0]heptane-2-carboxylic acid

となる。




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